第16話 美和への質問(姫子)

「それでは、これから皆さんにお話をお伺いさせていただきます。



 まず美和さんにお伺いします。

 今朝起きてから朝食の準備をしたそうですね。


 美和さんが最初にキッチンに入った時、流しに洗い物が何か残っていた、もしくは洗い終わった食器がまだ置いてありましたか?」


 


「流しに食器が・・・ですか?

 いいえ、何も残っていませんでした。


 私は、昨夜のうちに夕食の片付けを全部終えていましたから。」


美和は、なぜ食器の後片付けをした確認をするのかと、少し不思議そうな顔をしながら答えていた。



「そうですか、どうもありがとうございました。


 では、次にお伺いします。

 朝食の準備をしている間に家族のどなたかが起きて来て、会ったりしましたでしょうか?」




「いいえ、誰にも会いませんでした。


 そもそも私は、朝食の準備をする為に早起きをしていました。


 自然に囲まれた別荘ですし、とても静かな朝でしたよ。

 そんな環境にいたのですから、家族全員まだ寝ていたと思いますよ。」


 


「そうですね。

 ここはとても静かで自然の美しい場所ですから、ご家族の皆さんは、ゆっくり眠っていたのでしょうね。


 それでは、もう少し時間を遡ってお伺いします。

 美和さんは、昨夜の夕食が終わってダイニングを出てから、ご家族のどなたかに会いましたか?」




「ええ、もちろん。

 昨夜のうちに会っていますよ。


 私は、夕食の片付けの後にお風呂に入りました。


 その後に薫さんの部屋に行き、次に入らないかと声を掛けましたから、その時彼女に会っていますよ。」

美和が少し薫の方に笑顔を向けながら答えていた。



「そうですか、薫さんと会ったのですね。


 ちなみに夕食の後片付けを最初にされたのでしたよね。

 ではお風呂は、既にどなたかが入った後だったのでしょうか?」


 姫子が続けて確認した。




「いいえ、私が最初です。


 私が自分でお風呂のお湯を張りましたから、間違い無いと思います。

 給湯器のお湯張り完了のお知らせを待って、すぐに入りましたよ。」




「良くわかりました。どうもありがとうございました。」


 姫子が美和の話に頷きながら、礼を言った。






「昨夜は、巌さんとは夕食後に会わなかったのですか。」


 姫子が、遠慮がちに確認していた。




「…そうですね、会いませんでした。



 と言うより、正確な言い方をするのならば、会えませんでした・・・


 昨夜、悠馬さんとの仕事の話が終わったら、一緒に部屋でお酒でも飲もうと夕食の時に二人で話していました。


 でも、食事の準備とかで疲れていたせいでしょうか。お風呂から部屋に戻って来て待っている間に、ベッドで少しだけ休むつもりだったのですが、そのまま朝まで眠ってしまっていました。




 もし巌が私の部屋に来てくれたならば、私が眠っていたら声を掛けて起こしてくれたと思います。


 ですが朝まで寝てしまっていたという事は、どうやら彼は訪ねては来なかったみたいですね…。」


 やはり巌の話で彼を思い出してしまったのだろう。美和はうつむき加減で悲しそうな顔をしながら話していた。




「美和さん、巌さんの事を思い出させてしまってすみませんでした。

 美和さんへの質問は以上です。どうもありがとうございました。」


 姫子が申し訳なさそうに答え、美和への質問を終えた。


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