行商はじめ
行商の基本は転売である。
安く買って高くうる。当たり前のことをするのだ。
「収納が使えるし、すぐ儲けられるだろう。」
「そうですね、戦える荷運び人は少ないですし、需要は多いですね。」
「何を、商売の種をしたらいいと思う?」
「お酒じゃないですか?基本絶対売れますし。」
「そうだな、じゃあ、酒の産地に行こうか。ここからは遠いのか?」
「そうですね、全力で走って、1日ほどでしょうか?」
「結構遠いな。」
今の仁たちが全力で走って1日と言うことは、大体、200km
ぐらいあると言うことだ。
「途中の街でも、めぼしいものがあったら、買おうか?」
「そうですね。名産品を買いましょう。」
「そうだな。じゃあ出発だ。」
1年ぐらいいた町を後にした二人は、酒の産地に向かって走り出した。
ーーーーー走って1時間ほど、道中でーーーーー
「馬車が壊れている。それに強い血の匂いがする。」
「馬車に、貴族の紋章が入っています。どうしましょう?」
「とりあえず、中を確かめるか。」
馬車の中には、三人の死体があった。執事と思われる男性一人。侍女と思われるメイド服を着た女性2人だ。
「おかしいな。貴族がいないのは攫われたとして、なぜ騎士がいないんだ?」
「確かに、そうですね。騎士が裏切ったのでしょうか?」
「とりあえず、三人の埋葬をするか。」
「そうですね。」
そう言って、アリーが死体に触って驚く。
「待ってください仁さん!!三人ともまだ生きています!!。」
確かに、大量の血を失っていて、死んだと思っていたが、三人ともまだ息はある。
「回復魔法をかけます。仁さんは止血をお願いします。」
「分かった。」
アリーが急いで回復魔法をかけて、仁も急いで止血する。
収納から取り出した布で傷口を縛り上げる。
「エリアヒール、エリアヒール、エリアヒール」
アリーの三連発の回復魔法で傷口は塞いだ。
後は、三人次第だろう。
30分後、執事らしき男が目を覚ました。
「あれ?何が?」
「やっと目が覚めたか、いきなりで悪いが、お前達に何があったか説明してくれないか?」
「え?あなたは?それに体が妙に重い、、、あっ!!!お嬢様!?お嬢様は!?」
「さあな、侍女二人ならいたが。」
「その、侍女の顔を見せてください!!」
「えっ?ああ。」
仁は、執事に二人の侍女の顔絵を見せる。
「おお、、、お嬢様ご無事で何よりです。」
「え?どっちがお嬢様?」
「髪が黒色の方です。」
「変装ってやつか?それとも擬態か?」
要は、別のお嬢様になりすましていたやつが、攫われたのだろう。
この執事は、俺が聞きたいことを察して、
「いえ。お嬢様の影武者ができる魔道具です。魔力供給が無くなれば動かなくなります。」
「なるほど。それで、騎士は裏切ったのか?」
「いえ。我が家の騎士は最後まで勇敢に戦って死にました。」
とすると、騎士の死体を収納したのだろう。
不自然なほどの血の量と匂いもそれで説明がつく。
馬は襲った奴らが盗んで、そのまま使ったのか?
「分かった。とりあえず今からお前らを、お前らの家まで超特急で送り届ける。お嬢様が偽物だとバレる前に。おぶって運ぶから案内してくれ。」
「分かりました。案内します。」
執事をおぶって、侍女1人は俺がお姫様抱っこして走る。
お嬢様はアリーに任せる。貴族のお嬢様だし。
「ところで、どんな奴から襲われたんだ?」
「全員、黒尽くめで数は5人、全員とてつもなくお強かったです。」
「逆恨みされませんように。でも、よくそんな強いやつら、魔道具で騙せたな。」
「基本、貴族以外に会うときは、影武者を使っておりましたから。」
「すごい備え方だな。このお嬢様は偉いのか?」
「アダムス公爵様の一人娘ですから。」
「アリー。アダムス公爵ってどれくらい偉い人なんだ?」
「そうですね。この王国で5本の指に入るほど偉い方ですよ。」
「へぇ〜。やばいな。色々やばいな。関わり合って大丈夫なのかな?」
「大丈夫じゃないでしょう。お嬢様の本当の顔を知ってしまいましたから。」
アリーの言ってることは正しい。とてつもなく正しい。
正直、助けたことを後悔している。
完全に巻き込まれた。
「ところで、執事さん。なんであんたらが死んだことを確認せずに襲ってきた奴らはいなくなったんだ?」
「分かりません。生贄がどうとおっしゃていましたが。」
もっと、めんどくさくなってきた。
「アリー。今回のことは俺たちの手に完全にあまる。お嬢様を届けて、別れよう。執事さん、助けたのが俺たちと言うことは、黙っといてくれませんか。」
「分かりました。命の恩人のいうことですから。」
「物分かりが良くて有難いな。」
最も今の状況ゆえの、ただの空約束かもしれんが。
「とりあえず、安全なところまで運ぶってことでいいか?」
「はい。お願いします。」
10分ほど移動して、草原にたどり着く。
「本当にここに置いて行っていいのか?あんたら、動けないだろう。」
「大丈夫です。もしものための魔道具がございますから。それと、せめてものお礼にこの短剣を。」
そう言って、執事は公爵家の紋章の入った短剣を渡してきた。
「その短剣があれば、もしもの時はアダムス公爵の名を使うことができます。」
「ありがとな。それじゃあ。」
「はい、ありがとうございました。」
「それじゃあ、アリー行こうか。」
「そうですね。先を急ぎましょうか。」
そう言って出発して1分後ぐらいして、大きな笛の音が聞こえた。
おそらく、あの執事の救難信号か何かだろう。
そうして執事達と別れて1時間後。雷を纏った大きな虎に出会った。
「異世界は暴力が溢れてるな」
仁は無駄に独りごちる。
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