第30話
必要な私物などを詰め込んだキャリーバッグを持ってきた雨流。
一応家の中に残っている食料も、俺が所持しているリュックに詰め込み、この家から離れる準備は整った。
その前に、ちょうど良いタイミングだからと、俺たちは互いのスキルについて教え合うことにしたのである。
まず二人のステータスはこれだ。
称号:獣を宿す者 レベル:Ⅰ KP:4/100
体力:17/17(34)
攻撃:11(28)
防御:15(33)
敏捷:16(34)
耐性:17(35)
幸運:77
属性:黄
スキル:
称号:サイキッカー レベル:Ⅰ KP:0/100
体力:13/13(26)
攻撃:16(32)
防御:16(32)
敏捷:12(24)
耐性:15(30)
幸運:40
属性:青
スキル:サイコキネシスⅠ
「……雨流の方は一目でどんな能力か分かるし、使いこなせれば結構強そうだが……お前のはよく分からんぞ、井ノ海」
「えぇー、何でですかぁ」
いやだって……《獣化》と言われてもいまいちピンとこない。
雨流のはいわゆる超能力的なやつだろうから理解できるけれど。
「そうね。一度アレを見せてあげたらどうかしら?」
「分かりました。ではセンパイ、ちゃ~んとわたしを見ていてくださいね!」
あざとくウィンクをしたあと、井ノ海が「――《獣化》」と口にすると、彼女の全身が光り輝き、その光が徐々に小さくなっていく。
光が収束し終えると、そこには驚くことに――。
「――狐?」
間違いなく、俺も知っているような狐がそこにいた。
「コンコーン! どうですぅ? 可愛いでしょう?」
そう言いながらソファに座る俺の膝の上に乗っかってきた。
「お、おう……てか、お前なんだな、井ノ海?」
「もちろんですよぉ。これでわたしの能力は分かりましたかぁ?」
「……それで狐になれる以外に何ができるんだ?」
「ふぇ?」
「いやいや、ふぇ? じゃなくて」
「狐になれるだけですよ?」
「え?」
「え?」
………………え?
「ま、待て、マジでそれだけなのか?」
「それだけって! 狐になれたから、モンスターの群れを突破したりできたんですよぉ! この姿になれば結構早く走れますしぃ!」
なるほど、このマンションの前で、モンスターを引きつけるくらいならできると言っていたが、あれはこの姿になってってことだったのか。
それにしても狐になれるだけってのは、さすがに物足りなさ過ぎる。
「マジでそれだけなのか? 何か特殊な能力とかは?」
「あとは五感が鋭くなりましたね。それに今は無理みたいですけど、レベルが上がれば攻撃系のスキルも使えるみたいですし」
つまり今後の成長に期待というわけか。こんなスキルもあるんだな。
しかしよく考えれば、動物に変化できるのは考えようによっては使えるかもしれない。
狭い場所にも逃げ込むことができるし、五感が鋭くなっているということは、それだけ生存率も上がるということだ。またその身形を生かしての潜入調査などもできるだろう。
「次に雨流のスキルだが、どこまでのことができるんだ?」
「ん……そうね。例えば――《サイコキネシス》」
雨流が右手を軽く上げると、テーブルの上に置かれていたカップがフワリと宙に浮いた。その際に、カップの周りに僅かな青白い発光が見られる。
続けて彼女は、カップの他に本、椅子などを浮かせた。
「浮かせられるだけか?」
「いいえ、その気になれば浮かせたものを放射することも可能よ」
「どのくらいの速度でだ?」
「一度窓から外に向けて試してみたけれど、時速で4、50キロといったところかしら」
「ふむ……」
「恐らくは私の攻撃パラメーターに比例しているのだと思うわ。だからレベルを上げていけば、自ずと放射速度も増すはずよ」
「なるほど。重さは? 椅子くらいが限界か?」
「そうね……無理をすればあなたが座っているソファくらい……むぅ」
そうして俺が腰を下ろしているソファに意識を集中させる雨流だが……。
「…………ふぅ。どうやら無理みたいね」
重さに関しても、やはり攻撃パラメーターに比例しているようだ。
「まあ、別に弱いモンスター相手なら問題ないだろ。ナイフや包丁とか、小石とかでもいいし、それで攻撃できれば十分に戦える」
「ええ。まだ試したことはないけれど、私だって生きるためにこの力を使うことを拒否したりはしないわ」
たとえそれが人殺しになっても、という意味が言外に含まれているような気がした。
コイツは意志が強い。やるといったら必ずやるだろう。生き抜くために。
「それで問題はセンパイですよぉ! その《スペルカード》……でしたっけ? いまいち理解できないんですけどぉ」
一応ざっくばらんにどういう能力かは教えたが、やはり説明不足だったようだ。
俺は噛み砕いて説明するために、《フォルダー》を目の前に出した。
そしてクリアファイルの説明や、カードについてなど様々な情報を伝えてやる。
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