第12話
だからこれ以上踏み込むわけにはいかないのだ。たとえ……たとえ、見た目が天使のように可愛くてもである。
「え、えと……もういいか?」
「あ、ごめんね。うん、離れるよ。……あ! ひまるちゃんも無事だったんだね! 良かったぁ!」
「ミーちゃん、こんにちはー」
「はい、こんにちはー」
二人は以前にも面識はある。何度か阿川が家に遊びに来たこともあったからだ。
女子のように可愛い阿川とひまるが一緒にいると、それはもう姉妹にしか見えない。この光景なら永遠に見ていられる。
「にしても阿川、よくここに来ようと思ったな」
「あ、うん。その、実はね僕……一度ツキオの家にも行ったんだ」
「え? そうなのか?」
「うん……それで留守って分かって。もしかしたらツキオだったらここに来るかもって思って。ここなら立てこもるにはもってこいだって思ったし」
「なるほど、考えることは同じだったか。けどお前、家族は良かったのか?」
「…………お父さんとお母さんは…………ダメだったよ」
「っ!? ……もしかしてモンスターになっちまったのか?」
力なくコクリと頷いた。
聞けばちょうど世界変革が起きた時、阿川は両親と一緒に食事に出かけていたらしい。
そこで両親や他の客たちがモンスター化し、命からがら自分の家まで逃げてきたのだという。
それから朝になって、一人が怖くなり俺を尋ねてやってきたのだ。
「そっか、ご両親が……大変だったな」
「……何でこんなことになったのかな。本当に……悲しいよ」
「……でも何でわざわざそこで俺を尋ねてきたんだ? お前は俺と違って友達も多いのに」
「た、確かに友達は多いけど……その、親友だって思ってるのは…………ツキオだけだもん」
ああ、もうこのままゴールインしてもいいよね?
またも心の声がそう囁いてくる。
ああくそっ、だからそんな赤らめた顔で告白まがいなことはしてこないでくれ!
「ん、んんっ! そ、そっか、まあ……俺もお前が無事で本当に良かった」
阿川は俺の数少ない信用できる人物だから。
そしてこの部活のメンバーでもある。
高校からの知り合いだったが、高一に同じクラスになったことで、教室でいつも本を読んでいる俺に阿川から話しかけてくれたのだ。
同じ読書好きらしく、俺の入っている部活を聞いて、是非自分もということで紹介したのである。
それからはよく一緒にいるようになり、仲もそれなりに深まっていったというわけだ。
「とりあえずここには俺たちしかいないから安心してくれ」
そう言いながら《フォルダー》にカードを戻すと、開いていた扉を閉めロックする。
《フォルダー》を消すと、それを見た阿川は驚いてはいたが。
「ねえねえ、ミーちゃんもアイスたべよ?」
「わぁ、とっても美味しそうだね、ひまるちゃん! 僕ももらっていいの?」
「うん!」
とはいっても元々は部員のものだから、阿川のものでもあるんだけどな。
俺たちはソファに座り、一応聞いておくべきことを尋ねる。それに言っておくこともあるし。
「なあ、阿川はその……どっち、なんだ?」
「どっち? ああ……『新人種』だよ。だから安心して」
「……なら言っておくが、ひまるは――餌だぞ」
「!? ……そう、なんだ。ツキオは?」
「さっき俺が《フォルダー》を消したところを見たろ? 俺はお前と同じだよ。けど……ひまるはそうじゃない。だから……危険だぞ?」
俺の言わんとしていることは伝わっているはずだ。
餌はモンスターを引き寄せる。つまりこことて安全な場所ではないのだ。
「……関係ないよ」
「阿川?」
「僕はツキオと一緒にいたいから探してたんだ。たとえツキオが餌だったとしても離れたりしないよ」
「何でそこまで……」
「もう! だから僕がツキオのことを親友だって思ってるからだよ!」
「お、おう……あ、ありがとな」
「それに、ね。ひまるちゃんのことも大好きだし。僕はもう……一人ぼっちになっちゃったから……」
「阿川……」
「だからもし良かったら、僕を受け入れてほしいな。……ダメ、かな?」
真剣な眼差しだ。自分にかかるリスクを負ってもなお俺たちに傍にいたいと言ってくれている。
それはこの壊れた世界では、とても大切なものじゃないかと思った。
だから俺は――。
「ああ! こっちこそよろしくな、阿川!」
「うん! そうと決まったらさっそく僕のスキルのこと教えとくね!」
称号:翼を持つ者 レベル:Ⅰ KP:0/100
体力:15/15(30)
攻撃:12(30)
防御:13(31)
敏捷:17(35)
耐性:18(36)
幸運:80
属性:白
スキル:ホワイトウィングⅠ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます