ナビゲーション

 全自動近道ナビゲーション...目前に立つ彼女キャディの能力だ。確実に穴がある。仮定で攻めるしか今は...。


 少年ルアは内心焦ってはいたが、その焦りを考える事で誤魔化していた。

 キャディの能力の詳細の仮定として2つ、先ずはシンプルに指示に従えば勝手に物事が良くなる...若干運命的な概念に干渉できる能力。この場合、相手が意図的に指定から逸れない限りこちらに勝ち目は無いだろう。そうしてもう1つはゴールを指定しなければならない場合だ。この場合達成された瞬間に再設定の必要がある。だが自分、ルアに勝つことが目的なのなら采配ミスをした。それならピシーを差し向けたのだが...やはりあの男に勝てる気はしない。だが、手はあるのだ。実は最悪の道筋であった可能性など今更考えたところで意味はない、今はただ自分に都合の良い世界への道だと決めつけて進むしかない。

 後者に懸ける!!


 残り弾数は想定内。


「いいですか? キャディさん...まだ意識があるのなら聞いてください、僕はあなたを...君を殺します。僕は旅を続けなければなりません。ですから...どうか。」

 大きく声を張り上げる。

『随分と身勝手じゃあないのか?』

 スポイラー4はそう返す。

「黙っていてください。僕はキャディさんに聞いています。」

『キャディは死んでるよ...当の昔に。というと大袈裟すぎる、ついさっき死んだよ』

「それでもです。僕が殺さなければなりません。まだ...。」

 ぱすっぱすっ!

『無駄だよ、私には未来が見えるんだ...あたらないよそんなのはね!』

 余裕の一言。

「嘘つかないでください。あなたは何も見えてませんし聞こえてません。適当言わないでくださいよ。僕は今、石を投げてるんですから。」

『何をいってるんだ、あんたこそ虚言はいけないね』

「信じないんですか? 小細工で予想外な怪我は避けられないんですよね? ナビから外れればあなたはただのメカオタクですから!!」

 一瞬の沈黙。


『何をするつもりだ...?』

 キャディもといスポイラー4は思う。

 どこから撃っても能力ナビに従うだけで相手には無駄弾を撃たせられる。

 四角などないただ答えに従うのみ...しかし、気になってしまう。看破する方法を思いついたというのなら...。無駄な雑念がよぎってしまう。


「あなたのナビにはどう出ていますか? バックか前進か...はたまた。」

 そうしてルアは銃を向ける。

 叫びも載せて、

「うわぁああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!」

 ぱすっぱすっぱすっぱすっぱすっ!!!!

 どっどっ...

 その弾丸を撃ち付けたのはようやく止血の効果が表れ始めたその右上腕!

 骨は砕かれ、遂には宙ぶらりん...。

 それを

「あああああああああああああああああああああああああああ──────!!!!!」

 眼球の表面を煩わしい潤いが包むが構わない。銃を口で挟むと。もはや言葉にならない、半分悲鳴な唸りを叫びながら引きちぎった。


 それがスポイラー4には見えた。

 理解しがたい行動に意識をコンマ2秒ほど持ってかれていく...脳に刻み込まれたプログラムに従い直ぐにその意識を取り戻す。

 だが遅かった。

 道を外れた事によるルートの再計算が終わる前にそれは飛んできた...。

 そう、目標ルアの右上腕が。

『ッ!』

 顔面に直撃、緩いとはいえ遂にダメージが入る。


 GUILDに捕まった後、洗脳と身体能力の強化を行われたキャディは、脳に異変をきたし第二の人格を生み出してしまった。

 その上で元の能力はナビに従えば運命に干渉し願いに近づける...というモノだったが、強化の結果その人格は到達するまで常にナビに追従しなければ、願いに近づけず、最も活用したかった因果を歪めるその効果も消えてしまうといった、別の能力に入れ替わる異変をきたし、そして強化したとはいえ全力追従も限界も存在してしまう。よって普段の生活はキャディとしていつもの古代異装メカオタクの人格を...いざ動くというときには生み出された人格が極めて短時間で目標を世から消す予定だった。


 然しずれてしまった。どれだけ完璧に支持に追従できるといっても所詮は人間。その上好奇心的なものは、どれだけ書き換えたところで染み付いて残ってしまったようだ。

 そして決定的な敗北につながった。


 ぱすっ!

 なさけない音が響き、メガネだった少女は息絶えた。


 EXT

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