刺突
ある道に2人の旅人がゐた。
帽子と肩紐を下ろしたオーバーオールを着た少女キャディは、手で小さな龍の乗った二輪の古代異装をゆっくり押す。
「
と彼女が言うと
「そうですねぇ...。でも地図的にはもう少しです。」
そう返したのは、黒い髪にターコイズブルーノ瞳を持つ、よく少女と間違われる少年...彼の名はルアだ。
そして、確かにその地図の通りに、山の
「しゃあっ! 行くぞ行くぞ行くぞぉ〜!」
掛け声に反応して...驚いただけかもしれないが、バイクのシートで相変わらず寝ていた純白の龍であるファネが飛び出して頭上を旋回。その
「そうですね...行きましょうか!!」
一行はほんのちょっぴりだけ、ペースを上げた。
『こんにちは! ようこそ我が国へ! お二人ですね! 手続き
出された書類を注意深く読んだ後に滞在予定期間を書いてサインを...もちろん偽名で。
『ありがとうございました! それではこちらへ』
待合室で軽くガイドブックを読んでいると、読み終わる迄には呼ばれてしまった...元々有った場所に戻す。
入国。
国の雰囲気としては三階建てのレンガの家がところ狭しと並んで居る、オシャレと言えばオシャレだが、窮屈と思えば窮屈に見えてしまいそうな......。
ガス灯には薄らと火が灯り始め、夜が近づいている事を知らせる。そんな
「到着かなり遅いですし、さっさと宿に見つけますよ。」
「了解だぜっ!」
と言っても...大通り自体にある宿と言えば怪しいバーみたいなモノしか無い為、少し入り組んだ脇道へと足を踏み入れた。もしそこで見つからなかったらあそこに...いや、考えるのはよそう。
「本当にあるんですかぁ? 宿って見えるとこに置くもんじゃ無いんですかぁ?」
「探すしか無いですよ...。」
にしても...、進んだ先に行き止まりがあるとはなんとも嫌な造りだ...その上微妙に暗い。大通りに戻るには鳴り続けるデモパレードの方へ向かうだけなので心配はいらない...多分。
「なんか出てくるやつじゃないっすかぁ」
「出てたまりますかってんですよ。」
ブツブツ言い合いながら右へ左へと進んでいく。ちなみに道自体は別にとんでもなく狭い訳では無い。一方通行にはなると思うが、小さめの車なら気にせず通れるだろう...現時点で知ったことでも無いが。
「ん〜...行き止まりでござんす〜」
「さいですね。」
と、直後に視界が激痛と共に消えた。
「いっつ......。」
「大丈夫ですか!?」
「なんなんです? 急に飛びついて...遂に一線を越えましたか?」
「違うでやんす、あれよ」
キャディが示す先に顔を上げると...ローブに付いたフードを深く被り
その指はビスクドール(
「キミ...!」
はびゅったっ!
そのローブの人物は大地を蹴り上げる...と思えば
ずごっぉ!
その鋭利さから見当も付かない鈍い音を立ててそのダガーはルアの目と鼻の先で止まった。ルアの手には一切れの紙...
「魔法書物第2類...その結界魔法。高いですよ...。これ。」
その紙はゆっくりと紫の火を噴いて消えた。
相手の目は確認出来ないが睨み合う...この時ルアが使用した結界魔法の魔法書は既に在庫切れ、次受け止めるなら自力でやるしかない...。とはいえ、ルアは1m先に防御用の結界を張ったのだ。だが、壁の様に働くはずのその結界は顔の寸前まで真っ直ぐ刺突する
澄ました顔で先の台詞を呟いて見せたが、内心ルアはかなりヒヤヒヤしていた、鉛筆キャップの直径程の幅しか猶予は無かったわけなのだから...。
そして、咄嗟の防御が功を成した安堵が雪崩の如く押し寄せ...遂には緊張に
「えぇ!? 少年くん! うそっ! んな事あるかい...」
「......」
残されたキャディとフードの人物は、勝手にダウンしたその主人公を前に、酷く困惑したのだった。
「ハっ!?」
ルアは勢いよく上体を起こした上で目覚めた...どこで?
「を、少年くーん! 元気そうだっ!」
ぼすっ...と今までどこ行ってたのか分からない白い龍が頭に不時着する。
「ここは...。状況は...。ローブの人は...。」
「ここは宿、路地の奥に無事にあった。少年くんはさっきまで寝ていた...だいたい一日くらい、今は朝! そんでローブの人は...」
パタンっ!
ドアが閉まる音がする...ルアはその音の方を見た。不意だったので首の筋がピリッと微かな悲鳴をあげた。
「んぐ...あ?」
ローブの人物がそのドアを潜り、居間へと入ってきた...
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