消し炭の救世主

「ふぁあ.....おはようございます。」

「お、朝!おはようっ!」

 二人の旅人がとある国のとある宿で目を覚ました...

 一人はメガネをかけた深いインディゴブルーの瞳の少女、名前はキャディだ。

 もう一人は黒く短い髪を持つ、大きなベッドの2/5を無駄にする程に華奢な少女....

「むっ。」「あえ?」「なんでも。」

 彼、少年ルアはグゥっとのびをした。

「朝ごはん食べますか。」

「おっす!」

 昨日昨日に購入し保存していたテーブルロールと、同じく買っていた葉物野菜とハムその他諸々を用意、もやーしライスしか作れないのでキャディは軽い手伝いで終了なんて事も無く、簡単に出来上がったのサンドウィッチ。

「いただきます」。」

 切れ目を入れたパンに全部挟み詰めただけだが....しっかり美味しい

「いいねぇ!」

「素材が美味しい国ですね...ここは。」

 そして

「ご馳走様」。」

 食事後は荷物を全て持って観光に行く....

「忘れ物はないですね?」

「オールおっけぇよっ!」

「じゃあ行きますか...!」

 ちなみに.....OKは「オールコレクト」つまりAll Correctの略語なのだが、何処かの記者がスペルミスでOKとした....という諸説まみれの由来がある。これが正しいとしてオールは分かるがコレクトはやっぱりCじゃないかと...そう思ったが、どうでもいいですね、ハイ。

 さて、宿を出る。

 キャディのバイクは一人乗りなので、やはり押して行っている...シートには相変わらず白い龍のファネが朝っぱらから寝ている。

 この国の街並みとは半分木造、半分石造り...のような建築スタイルの為、グレイや、赤い石に木の骨組みが成されている。聞いた話によると、しなやかさと力強さを持ったベストアンサーなのだと言う...しなやかさが必要な理由としては、偶に地震が起こる地域故で、揺れに耐え、破談しにくい素材が木材...それを守る強固な盾として石が....だそうだ。

 とある事件があった...


 それは夜のこと....


 カーンカーンカーンカーン!!

『火事だァっ!』

 がやがや...と野次馬が集まる...無論その中には

「火事....。」

「燃えてるよ!」

 と二人の旅人がいた...。

 その時、

『おばあちゃんがッ!』

 少年が1人飛び込んで行った...

「ッ!!」「ッ!!」

 炎の海に潜り込む勇気の背中....だが、珍しく....身体が動いた者がいた

「持っててください...僕も行ってきますッ!!」

「えぇ!?ちょちょちょ....!!あら....」

 ルアは放って置けないと....自身の非力さも忘れて追いかけた。


「どこですかっ!?返事を!!」

 返事は無い...兎に角に暑い...それでも声を出して....

「どこですッ!!!」

『こ、ここだッ!』

 奥の部屋から...幸い2階では無かったようだ......迅速に向かうと

「いたっ。」

『た...助けかい?』

『そうだよばあちゃん!』

「い、行きましょう....外にッ!!」

『待て、ばあちゃんは足腰が弱いんだ!』

「なら....ふうっ!!」

 おぶろうとする...が

「だめだぁ....。」

『2人なら行けるかもだ!そっちを!頭の方を持って!』

「はい!!」

 どちらが後に来たのか分からなくなりそうな会話だが....確かに持ち上げることに成功すると

「行きますっ!」

 轟々と燃える地獄を息を合わせて駆け出した....肺に舞い込む小さな大気はゴトゴトに煮込んだスープの様に熱く胸を焼く。外は目前!

 しかし...

『うわっ!』

「るぐっ!!」

 足を持っていた少年が崩れた瓦礫に躓き、前を行っていたルアに老婆の全体重がかかる...。

 ルアと老婆はそのまま外へ弾き出された。

「う...まずいっ!!」

 老婆を優しく座らせると...思い切り走り再突入する


「大丈夫か!!」

『もうダメだ....』

「そんな事.....!!」

 ルアは引き摺ってその少年を引っ張り出した...まさに火事場の馬鹿力...と、自信でも意外な無意識の力で出口を飛び抜ける...。


 外に出て直ぐ...賞賛の拍手がルアを包んだ....。

「大丈夫?」

『.........余計なことを.......』

「......!」


 煤だらけの少年はそのまま老婆の元へと歩いていった.....。

 しばらく思考が止まったが、紙を持った記者がこちらの事を獲物の様に覗いているのが見えたので、ルアはキャディを引っ張って逃げた。

「少年くん?」

「なんでも.....。何も......。はははは......」

「............」

「出ましょう....夜ですが、下手に目立ちたく無いので....。」

「....りょーかい」


 その炎が潰えた....灼熱の煉獄を乗り越えた小さな黒髪の救世主ヒーローは...その国から人知れず姿を消した。

 今頃地平線の向こうだろうか........

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