2人きり

「.........。』

 遠くになにかいる...あれは...鳥?


『ここでお前を果たす!」

 がひゅおぉ!!

 オデュが乗る鳥型の生物、勿論ただの鳥類ではない....


 龍だ....龍子を自由自在に操り、永遠の魂を持つ不滅の超生物。

『龍モドキに私のエフが負けるものですかッ!」

 エフと言う名を授けられた鳥類型龍、其れの唯一の契約者....それがオデュ。


 一定の高度を保って浮遊している異形へと一気に迫る。

 キィーン....!!!!

 音の壁すれすれの速度を全力で維持し続ける。


『あのままじゃ正面衝突だ...!』『いや、度胸試しか....!』


 ギリギリになって遂に相手はその場を動く。彼女は、その異形は、クシーアは、紛れもなく、人間だったからだ。


 ごうぅっ!

 準マッハでの急旋回、魔力固定具でくっついているが、それでも振り落ちそうだ。しかしこれからはこの機動を半永久的に続ける。相手とのスタミナデスマッチだ...!


 クシーアが手を振り払うと手の軌跡に沿って火の玉が放たれる。髑髏ドクロのカタチを取ると、全自動追尾で追い回しにかかった。


 轟速で追尾する燃え盛る髑髏から逃げながらオデュは、予め格納魔法で隠し持っていた木の枝を細かく砕いた物を、直ぐ後方に広がる様にばら撒く。

 するとそれに接触、反応し、髑髏は誘爆する。

『私だって!あるんだから!」

 手をかざすと、そこに魔力を練る。

『当たりなさいよ!!」

 生み出すのは火の玉、そして肉の無い五芒星の形をとる、こちらのは綺麗な...力強い紫。

 蒼と紫が交錯する...二つの大きい軌跡から無数の小さい軌跡が産まれ、絶え間無く激しく交錯する。


 ここからはこの2人の脊椎反射の世界、もう誰の手も入る隙も無い程に...

 この青と紫、色の違いはそう龍子か魔力か、神秘が勝つか生きようとする命が勝つか......ちょうど36億年前の悲しい競り合いを表すかの様に...命とは...消費と引き換えに爆発的な力を持つ。

 故に、

『魔力が足りないの...!?」

 リチャージ用に持ってきた魔光果実をカバンから取り出す。果実は生物だ、格納するとぐしゃぐしゃに解け、生命のスープへと回帰する...故にカバンに入れてきたが....取り出して食べようとしたが、背後より迫り来る蒼き炎を避ける為にその手から滑り落ちてしまった。

「分解して直接取り込めば良かったか...!ぐっ!!」

 暇も隙も無いのだ、ここで無理なら魔力の回復はもう望めないだろう...ゼロイチ式"ともし石"を格納から展開、最速で合図を送る。それは旧世界でも利用されたであろう暗号.....三つの単純なフレーズのみで構成された暗号......。

『-. --- .-. . ... ..- .--. .--. .-.. -.--」


『補給無し!?弾幕が止まったと思えば!』

『やむを得ませんね...』

『あぁ、Phase,βに移行するように伝えろ、ちゃんと従えよ?とも伝えろ』


 返事を確認したオデュは苦い顔をすると、急降下を始めた.....クシーアもそれに追従する。

 無限の蒼の弾幕を龍子を読む能力をフル稼働させ無駄の無いよう最小限に避けるピンポイントで砕いた木を当て、できる限り、消費も無いように.....。


 石造りのビル群を縫うように進み、急に開けると目の前には...。

 ランドマークの大型図書館...

 いや、今は図書館では無く超高強度のシェルターとしてある....。

 そこに突っ込む!

 ピンポイントでバリアを解除、上手く入り込もうとクシーアは自身の放つ髑髏よりも速度を上げるが.....すんでのところで結界に阻まれ、身体をそれに叩き付ける。爪を立て、ズルズルと雫のように垂れ落ち、遂に地上に足をつける。

 見えない壁越しに降り立ったのは、自身が優先的に排除しようとした敵。その顔を見て悪魔の様な笑顔を見せ、

「ここに生きてるんだね』

 と一言。


 その声は目の前の龍使いには聞こえず...


『さようなら。仇さん」


 結界がさらに発動する、そもそもこの図書館の結界の強度は1枚で成り立っている訳では無い....合計3枚が密度差ゼロで定着する事で指折りモノの超結界として完成するのである.....。


 つまり....。


「.............ッ!? がァっう.........?』


 外側に展開したもう1枚の結界が、真空になったパックの様にゆっくりと、ぴっちりと密着を始め....


「ぐアかぁ.......ぁ.............。』


 その見えないはずだった壁は、プレパラートに挟まれた水滴の様に薄く引き伸ばされた、若干のベタつきと細かい欠片等の雑味を持った紅に染まる。


 オデュは最期を見て立ち尽くすばかりだった。


 初の監視級撃破に成功した。ここから先ギルドは、監視級への強行処理においてその動きを強めて行くこととなる。


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