蒼い海

 一人の旅人が国を去った。


 夜が来た。


「....天上天下、唯我独尊.....。私の為にあるのだろう...か.....』

 曇天の夜空に這いつく様に蒼が広がる。

 最も高い建造物の上、そしてそれの中で最も高い位置にある細長な飾りの柱の上....異形の少女が国を見下ろす.....。


 いや、見下す。


『来たぞ15番だ!』『ビンゴ!』

『全力を尽くして悪鬼を討て!』

対象ターゲット上空にて静止、同時に龍子量依然上昇中!このペースならSS-15は後7分で臨界域に到達します!』

『爆発的なスピードだ...できる限り到達を邪魔しろ!迎撃作戦開始!』


 ヒト々が避難し、がらんとした...はずの都市だが....高層建築物には光が灯ったまま。暗いが明るいその足元を、レプリカの古代異装が走り始める。

 割と高機動な装甲車達が、上には90口径35mmの対空機関砲が載せられ、さらに後ろにクルクル回る四角い板....それらは建築物の上にいる目標に向かって随時発砲を始めた。

 がんがんがんがん....!

 当たった!しかし爆煙から覗いたのはこちらに手をかざした異形。

『た、退避!』

 蒼い光...間一髪だったが、二射目の光によりそのレプリカのアルマジロ達は動かなくなった.....。

 地理的にも正確性も監視級識別ID{SS-15}....15番、と呼ばれた...いや、悪鬼ことクシーアに軍杯が上がる。

 そもそも上を見れば蒼い龍子の海が瞬き目が痛くなる。訓練通りで進めば良いが...実際はそうはいかない

『相手はまだまだ余裕だ...!』

『対空砲では火力が足りないのでしょうか...?』

『そこら辺の魔力シールドとは雲泥の差だな!』

『大人しくしてる間に攻撃だ!』

『推定4分半、15秒の増加』

『相手の集中を削げ!次は遠距離からだ!』

 おとりの任を持たせられた四輪の小型装甲車が弾をばら撒きながら走り回る...

 そのはるか後方、山の上から狙う2両。6m越えの其れはじっと目標を見据える....そして射撃!

 125mmの滑空砲から飛び出るHEF破砕榴弾

 づがぁぁッ!!

 ビルの頭を爆風で吹き飛ばす、即座に撤退...目標ターゲットからの迎撃光線は山を斬る。撤退と同時にまた別の山から別の戦車が目を光らせる。

 どがぁあーッっ!!

 熱い爆音が響く....同じように、撃つと同時に回避行動。


 大口径のちょっかいが応えたのか、残りの時間も37秒増加.....続けて再び一方的な砲撃を行う.....しかし、盾となる山も次第に削れて行く....臨界域到達までは言うならアキレスと亀...にも見えるが保ってられるのも今の内だけだろう。


『後方狙撃は効いていますが...』『なんだ?』『ジリ貧です...!』『どうして!』『撃ち続けないと急速にペースが戻っていきます!奴は無限供給。こっちは撃つための盾も弾もいつ無くなるかです。』『前線方面の補給は?』『まだです!龍子に阻害されて魔力波が乱れて...後方の砲撃隊はなんとかなりそうですが...』

『ちィッ!うち続けろ!臨界にまで猶予を稼げ!』

『それでもあの体勢を辞めないということは、アイツに相当舐められてるってことですよね...?」

『貴殿は...オデュだったか...』

『はい...!私なら出れます。」

『自信があるんだな...だが予定より大分早いぞ...』

『いや、動かしますよ?臨界させるまでもなく私に見とれさせますよ....。」

『........。手筈通りにな?』

『了解.....オデュ、参ります!


 ........。いくよ


 EXT

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