薄闇の都市
「はぁ...使えって言われても...」
白い棒を片手に独りごちる....宿の帰り、とぼとぼ歩きながらの事。
怪しい人物と言うと、例の蒼い粒子の女性(多分)が思い浮かぶ。見た目なんかは闇で全く覚えてない。進む方向にカメラのファインダーを覗いた。覗くだけの予定だったが、誤りでシャッターを半押ししてしまい、飛び開こうとするストロボを慌てて抑え込む....レンズ越しに見る宇宙も星は少なかった。
刹那、蒼い光が宇宙を横切る。目撃してしまった少年、ルアはそれの進む方向に思わず駆けていた。
緩やかな山がそびえるが、お構い無しに登って行った。まだ若く細い木々を押して傷がついても前に進んだ。遂に目の前が開ける。芝生の広場に1本の木がある。
その木に手を当て、後から来た息切れを凌ぐ。
「........わぁ....!!」
振り返り見れば
「綺麗....」
「そう...綺麗なんだ。』
「ひゃうっぅ!?」
木の上!いつの間にかに!
「貴様は....またあったか...?』
「たぶんそうです」
「そうか....今ここが、綺麗と言った...だが私は、明日、同時刻を持って』
「....ここを燃やす.....。あっ....。」
........。沈黙
「そう...真っ赤に...ヒトは沢山死ぬ。貴様はこれを聞いてどうする...?』
この時シュネー...師匠なら...。
「僕は...何も...しません.....。」
「ふん....旅人め....だがいい、邪魔者はいないと...。』
「まぁ、話くらいは聞きますよ?旅人の....使命です。」
「聞かれた後には消すかもな...?』
「どうでも...どうぞ...旅人ですから....。」
「旅人ねぇ....ふん、そうか....目的は簡単だ...復讐。私は産まれた....ある程度育ちもした....だがみんな殺した。いつの間にか燃やし尽くした....知らない内に家族も燃えたさ....産まれた村、あぁ、初めて会ったあの村では無いぞ.....その村でたまたまカラダのカタチがおかしくて...、笑われて、バカにされて....燃やしてやったさ.....アイツらには無いチカラで....相手の親には酷い顔させたな、私の親もそんな顔してた...............。あとは覚えてない。ギルドに追っかけ回されて...大人しくしてたさ?最近になって捜索が活発になった。だが私は気にしないが....もし私が今から変われるのなら...変われるなら....私が燃やした家族に会いたい...生きているのなら言いたい事もある....ギルドに頼めば骨の1つ出るか?でもこの私には叶わないだろう...私は周りとは違うから........。』
夜のそよ風が芝生を揺らす
「まぁ....頑張って...ください...ね。」
「ふん.....旅人め。』
「せっかくなんです、名前のひとつ僕に教えても?古い言葉で一期一会...ですかね」
「クシーア...それが私の名だよ...」
「僕は...ルアです...また会えると?」
「会えればな?....これ、やろう...。」
ベリィっ...
彼女が彼女自身の左腕の鱗を剥がすと、それを渡された。
「私の存在だ...。」
「....はい....。袋に入れて御守りにでもします。」
「疫病神が出るかもな?」
「アハハ...そしたら燃やしますよ!」
「そしたら覚悟してろよ? .....ふっ」
........。
さぁぁぁぁ....。
暗い星を蒼白い浅い光が照らす、まだ夜は始まったばかりだ。
「.....では........」
貰った物をカメラバッグにしまい込む。忘れないようにと軽く叩き、もいちどカメラを構える。風に揺れる長い芝生がさらさら音を立てるこれ以上無い静かな世界が一本の木を軸とし、同心円状に広がっている。
さく...さく....
と、物音に反応し顔を向けると
『ありゃ...みっかっちゃった....。』
帰りに会った女性職員だ。
「.....なんでしょう?」
『あぁ....いや....少し、お話をしましょうと...。』
「.....まぁ、いいですよ?」
ルアは涼しく振舞った、それは葉を揺らす緩い風のように...しかし内心ではかなり焦っていた。
『よいしょ...。えっと...一人で旅をしてるの...?』
「まぁ、そう...いや....この子が、ファネって言うんです、実質2人旅です」
『あらら...そうか〜可愛いね〜』
顎のしたをカリカリされて満更でもなさそうだ。
『私にもいるんだこの子みたいな...サイズは全然違うけど....。この子は何食べるの...?』
「そうですね....」
何を食べる?
考えたことなんてなかった。
いや、実際ファネは食べ物を食べない...食べさせれば食べるのだが、食べても排泄などの動きは無い、改めて気付く。
『ふふ...ないんでしょう?食べる事...?』
「えっ....!?」
『大丈夫、そっちの方が君には幸せな事かもね』
というと...
『その子は龍で間違いない。旅人さんとすれ違った時に君からは龍子を感じたの。龍子を介して長く共にした者と意思疎通を図る....。それが私の特性なの。
「大丈夫ですよ。」
いつの間にかに頭の上に乗っていたファネもはねを持ち上げて同意する。
『仲いいね!兄弟みたい...!』
「そ、そんな.....あ、じゃあこちらから...あの、えーと...。」
『オデュでいいわよ』
「オデュさんは...。」
『オデュでいいの!」
「アハハ...すみません、では、オデュはどうしてギルドに?......やっぱさん付けでいいですかね」
『やっぱ恥ずかしいか君?ふっ...まぁいいよ話しづらいなら。えと、ギルドに入った理由か...。まぁもうわかってるかも知れないけど、仇討ち...それと...昔、ギルドに
「いもうとですか...?」
『そう...妹よ、昔ギルドの職員が家に来て妹を連れて行っちゃって...。でも、あっさりしてて......親も探しに出すでもなく...妹の話もしてくれない...。そんな時に私の住んでいた村は急に燃えたの......暮れどきに言った村じゃなくてね?また別の村....今は地図からも消えちゃうくらいには更地になっちゃった...。その時にギルドの人が保護してくれたけど、妹には会えずじまい...ギルドから受け取ったその龍...さっき言った全く違う見た目の子と過ごして...そして自立してから改めてギルドに入ったの...。私の仇は監視級だから、それに一番近い機動監視科に...。」
「へぇ...忙しそうですね...。」
『いーや?むしろ明日、その日の為に...明日...この国は焼け野原になる...かもしれない.....奴が来るから、確信はあるわよ?私がそう感じたのだから...。龍子の感じ...君の子とは違う...。」
「僕も見届けましょうか復讐劇...」
『ふふっ?大丈夫よ?私は負けませんもの...見せ物じゃない... 私個人の世界だからね!」
「アハハ...なんかすみません。」
『いいのいいの!楽しかったからね!終わったら私も旅に出ましょうかしら...なんて」
「大変ですよ?旅。」
『ねぇ〜....もっと気が向いたらにしましょう!その時が来てまた会えたら...えーとファネ君かな?私の子と合わせたいな!絶対気が合うと思うの....!」
「ではその時が来るまで...。」
『じゃあね...」
オデュは立ち上がると芝生をサクサク言わせながら再び山を降りて行った。
星もだいぶ傾いた....残された少年もそのうちいなくなり、木が一本残され再びの静寂が戻った。
EXT
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