図書館の国

「浄化魔法...格納魔法を応用して行う、仕組みとしては1度魔力に分解してから必要な物だけ出す....ようなものであり、余分なモノは純魔力としてさらに分解する。純魔力に分解した場合、基本、そのまま発散してしまうが、自身の空魔力量に余裕があるなら吸収し、そのまま補給ができる。発動の為の手順は実践編に記載、使用に応じての注意点は13章、治癒への応用に関しては第17章にて。..............ふう。」

 一人少年が持っていた本を閉じる。

「治癒の為だけにプロセスがかなりだな...格納魔法が使えれば…もう少し楽だったのかな....。」

 その少年、ルアは魔法の類のセンスが余りにも酷い。簡単な方である火起こしも安定して出せない。なので買うなり拾うなりした2類書物にそこらへんの魔法技術は全て預けている。

 さて、この国の王立図書館は、今までの国に比べ魔法関連の類がかなり多く並んだ図書館であり、基本中の基本から、極めに極めたヒト用のモノまで、全て読み切った頃には背中は茹で海老のようになっているだろう....。

 そもそも、この国自体はギルド管轄の国である。しかし、魔法関連の研究を行っているのは魔法協会の方であり、この2機関は例にもよって、かなーり仲が悪い。前に追っかけられたのはこれのせいでもあるのだろう。故に、こういう図書館がギルド管轄で存在するのはかなりのレアケースだ。

 聞いた話によれば昔に技術提供やらなんやらの友好条約的な感じで贈られ、未だに燃やすとかせずにしっかり守っている....。ギルドからすれば唯一無二の魔法書物の宝庫な上、燃やしたら何されるか分からない様な代物ばかりでもある為だが.......。

 ちなみにこの図書館、有事には全領域干渉ヴァリアブルアクティブ型の結界(これを略してバリア型などと呼ぶが....関係ない話だ)が張り巡り、ギルドの中では5本の指に入るレベルの迎撃防衛システムを備える。

「今日はこのぐらいにしようかな...」

 持ち出し不可の書物を元の棚に頑張って戻し、図書館を後にした。改めて見るとやはり巨大な図書館だ。高層石造の建物が立ち並んだこの国の中でもかなり目立つ。

 何処かで見たコロシアムとは目立ち方は違うが、その背の高い建物達の中でも近づけばやはり雰囲気が違う。

『....あの...!旅人さんっ!....お、お時間よろしいでしょうか!』

「うぉおっ!!」

 めっちゃ変な声が出た

『あぁぁ!お、驚かせてしまいましたぁ...!すみません....。』

「あはは...大丈夫ですよ」

『はい...あの...も一度言います...。お時間よろしいでしょうか...?』

「いいですよ。」

 ルアより身長の高い....

 いや、ルアが小さいだけだが...

「むっ!!」

『えぇッ!?』

「あ、なんでもないです。」

『では...質問ですが....えーと....ズバリ....!この国に来るまでに...近くの....煤で真っ黒な村に入りましたか?』

 .........。

 何故バレたのか....確かに入国時は真っ黒に染まったヤバい奴だったが....図書館に入る前に衣服はクリーニングサービスで綺麗にしてもらったばかりだ。

 クリーニングサービスとは、浄化魔法を使ったサービスで、衣服のみならず店主の知識次第でレプリカの古代異装(レプリカでないと魔法をほどいてしまう為)までも綺麗にしてくれる割と歴史あるビジネスだ。

『そしてそこに行ったのなら...怪しいヒトを見ませんでしたか?』

 .........答えは当然YESである。

 最初っから後ろを着いて来ていたのか....?それはそれで怖い....が....気になるのは身なり....防汚加工された白衣に首掛け式のタグ....GUILDギルド関係で間違いないのだろう...それならこの尾行も納得か....。いや、納得できるか!!

 だ~がしかし、答えたらなにか不味い事が起きる予感を頭の中の演算機が弾き出す。表情は固めて...

「......僕は....行ってないと思います!」

『あぁっそうでしたか....あ、えーと....もしもですよ!?この世界のどこかで...いや、"この国の"どこかで...蒼い粒子を見たなら...私に....あっ、名前はオデュです!こんな見た目ですからもうお気づきかもしれませんが.....ギルド職員です!...で、この...オデュに教えて欲しいです。ギルドの発煙筒です...これ....。その時に焚いてください....!』

「あぁ、はい。」

 渡されたのは白い色の丸棒。

『使い方は....頭の部分を外して...それを中身に擦り付けるだけです!煙が見えたらどこでも...一瞬で駆けつける....自信は無いですけど...頑張って行きますので!では!』

 元気なヒトだった。

 その女性、オデュは交信魔晶を通して、その石の先にいる誰かと話しながらその場を去っていった。


「この国で....か.....。どう思う....?ファネ?」

 頭の上に居た小さな龍は首を傾げると、歯をカシカシ鳴らして、頭から飛び上がった。

「....そうだね。今考えても仕方ないよね。」

 手配されていた宿へと歩き出した。


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