29 両手持ち用の杖はトラップを回避する

― 残り八時間 ― 


 ……あぁ〜!


痛覚無効ノーペインセンセーション】するの忘れてた!


 私とした事が……。


 さて……来るぞぉ……。


 総員そういん! 構えろぉ!


 …………ぐぁぁぁぁ〜!!


 痛ってぇ! マジ痛ってぇ!


 景色が変わって変わって変わりまくる。


 うん。オロロロロロロロロロロロロロロロ


 やっぱこれ凄ぇ酔うわ。


 そんなこんなで到着した。


 ここは……なんか洞窟っぽい場所だな。


 こんな所が隠れ場所なん?


 魔法でもうちょっとこう……ねぇ?


 出来なかったのかな?


 まあいいや。


 ところで……ラーダさんの姿が見えないんだけど……?


 何処にいんの?


 というか地味ーに暗いな。


ライト】!


 周りがパァっと明るくなる。


 久々の登場だから喜んでるのかいつにも増して明るい……気がする。


「メルア、ここが何処だか分かるか?」


 一応【見る者】で見ているがラーダさんの居場所の手がかりになりそうな物はない。


「困ったな……ここが何処かも分からないから何をしたらいいのかも分からないな」


 いやマジでそう。


 迂闊うかつになんかやると死ぬかもしれないからねー。


 私なんてHP:350の雑魚でっせ?


 隠れ場所だし1000の固定ダメージを受けるトラップとかそういうのがあってもおかしくない。


 そんなトラップ受けたら即私死ぬなぁーハッハッハー。


 ……やだ! 死にたくない!


 マジで細心の注意を払おう。


 まあ私には【見る者】があるからしっかりと発動してれば分かるんだけどね。


 安心安心!


「取り敢えずお前の【ライト】で付近が見えないという事はないから慎重に探索するしかないだろう」

「そうだねぇ〜」


 まあ私には【見る者】が(ry以下略


 勿論だが二手に分かれるなんて事はせず、固まって進む。


 二人しかいないからさほど探索効率が良くなるわけでもないのと、単純に二人いた方が怖くないからだ。


 それでも……


「な、何もないよな?」

「た、多分」


 怖いものはやっぱ怖い。


【見る者】があるけど怖くね!?


 お化け屋敷とかでさ、来るって分かってるのに怖いあれと一緒!


 そう考えたらここもお化け屋敷か。下手したら死ぬタイプの。


「そっ! そそそそそそれは何だ!?」

「ななななななななな何!?」

「あっ、こけだったすまん」

「…………」


 こんな事がありつつも先に進む。


 因みに私が両手持ち用の杖を両手で持って前に突き出しながらへっぺり腰で歩き、マーダはそんな私の肩を掴んで同じくへっぺり腰で歩いている。


 なっ、なんて滑稽こっけいな姿なんだ!


 見るなぁ! 誰も見るなぁ!


 ……そもそも見る人がいなかったわ。


「あっ、あれは何だ!?」

「こんどはな――」


《トラップ名:固定1000ダメージトラップ


 効果:1000の固定ダメージをトラップにかかった者に与える》


「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「うわぁ!? 急に叫ぶな!」


 私が予想したトラップ存在しやがった!


 さ、幸い動いたりはしないやつっぽい。


 良かったー。これで動かれたらたまったもんじゃないよ。


「……お、おい。なんかこっちきてないか?」

「へ?」


 …………来てる来てる来てる来てる来てる来てる!


重力無効サイレントグラビティ】を私とマーダにかけて迫ってきてるヤバいトラップから逃げる。


 待て! 話せば分かる!


『ズガガガガガガガ』


 うん! 話し合いはダメなようだ!


 てか意外と速えぇのなお前!


重力無効サイレントグラビティ】は落下する魔法だから今お前人の落下速度と同じくらいの速度よ!?


 あっ、あのまま走ってたら死んでた……。


 マジ【重力無効サイレントグラビティ】感謝。


 あっ、因みこのトラップは壁に固定されててなんか赤いレーザーみたいなのを出してる感じだから【重力無効サイレントグラビティ】とかで移動させるのは無理そう。


 ……詰んでるくね?(名推理)


 それ以外の魔法ここで使えるようなの無くね?


 ……はっ! 『自爆杖』!


 試しに放ってみる。


『ジジジッ!』


 ……赤いレーザーが消し炭にしやがった。


 なあトラップさんや。これ以上出せるもんないんですわ。


「ラーダ!」

「なっ、何だ!?」

「あれ何とか出来ない!?」

「出来たらもうやってる!」


 間違いない!


 ……ここで私達死ぬんじゃね?


 やっぱやだ! まだ私死にとうない!


 ただなぁー……さっきも言ったけどここで使える魔法がもうないんだよな。


 なんか壊す魔法とかは……持ってないな。


 なんかぶつける……はさっきやってダメだったし……。


 …………あ。


 あれレーザー出したりしてるって事は機械だよな?


 つまりあれに水かけたらぶっ壊れるんじゃね?


 やるっきゃねぇ! てかそれ以外思いつかねぇ!


 ミスると怖いので【完全水パーフェクトウォーター】ではなく【水龍の遊戯ウォータードラゴンゲーム】にしとく。


 【完全水パーフェクトウォーター】より強そうだし。


「【水龍の遊戯ウォータードラゴンゲーム】!」


 そう唱えると魔法陣が空中に複数出現し、水がドバーっと流れてくる。


 でもねぇ……ただの水じゃないんですわこれが。


 めっちゃうず


 渦巻いてる訳じゃなくてもう渦の状態で出てきちゃってる。


 これ当たるだけでもヤバいと思う。


 そしてその水はしっかりと『固定1000ダメージトラップ』に当たった。


『ビビビビビビビビビ』


 あっ、なんか壊れる音してる。


 成功……か?


 トラップはその場で動かなくなった。


 もちろんレーザーは出ていない。


「「た……助かったぁ〜」」


 同じタイミングでマーダもそう言う。


「マジ危なかった」

「またこういうのが来るかもしれないから気を付けて進もう」


 そう言ってまたさっきと同じようにへっぺり腰で歩き始めた。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


 一応その後もトラップはあった。


 シンプルに串刺しトラップ。


 炎が出てくるタイプのトラップ。


 毒矢が飛んでくるトラップ。


 触手。


 だぁがしかし! 全部魔法で返り討ちにしてやった。


 串刺しはふつーに『自爆杖』でボン。


 炎は【完全風パーフェクトウィン】でそもそも炎がこっちまで届かないようにした。


 毒矢は【完全防御パーフェクトウォール】で刺さらないようにした。


 触手は…………怒りの意を込めて【地獄の業火ヘルファイアー】で燃やし尽くしてやった。


 てかなんであんなのがあるんですかねぇ!?


 触手て!


 まあそんなこんなで【ライト】の光を頼りに進んだ。


「……あぁ!?」

「こっ、今度はなんだ!?」

「扉だ……」

「…………そうだねぇ……」


 木で出来たシンプルなドアが目の前にあった。


 うーん……これどうなんだろ?


【見る者】で見ても《扉》としか出ないから罠かどうかの判別がつかない。


 もうお手上げ!


 こればっかりは運だわ!


『自爆杖』を100本くらい構えながらそーっと扉を開ける。


 もちろん【考える者】で頭の回転の速さを上げるのも忘れない。


『ギィィィィ』


 とホラー映画あるあるの扉が開く時の音がなる。


 怖えぇ〜。


 そして少し開けたその隙間からこっそり中を見てみる。


 うわぁ〜、本棚があるのは分かるんだけどもう少し開けないとダメだ。


 というか『自爆杖』100本もあるんだし全部開けても大丈夫じゃね?


 そう思って一気に開けた。


 そこには……


「あら、もう来たのね」


 優雅ゆうがに紅茶を飲むラーダさんがいた。

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