〜 とある宿の外にて 〜

「……彼女、やはり何か怪しいです」


 今私はマスターに連絡をしている。


『……どこら辺が怪しいのかしら?』

「はい、私達が隠した道の付近を約5時間ほど歩き回っていました」

『怪しさ満点じゃない』

「だから連絡をしているのです」

『分かったわ、その子についても、私が調査しておくから引き続き、監視をしていてね』

「かしこまりました」


 そう言って連絡を切る。


 ……あの子、一体何者なんだろう。


 本当は拉致して何をしていたか吐き出させたいのだが何故だろう、拉致が出来ると全く思えない。


 こんな事は初めてだ。


 でも私の勘はよく当たる。


 だからきっと拉致れない。


 うぅ〜悔しぃー!


 いつか私もマスターみたいに強くなって彼女を簡単に拉致ってやるんだからな!


 よし! 今日は酒を飲みまくるぞ!


 そう思いながら行きつけの肉屋に入った。


 ここはキューロのサーロインが本当に美味しい店だ。


「おっ、いつものかい?」

「ええ、お願い」


 私と店員さんの仲は結構深くなっていると思う。


 だからたまーにサービスもしてくれる。


「ほら、サービスだ」


 やった! 今日はサービスのある日だったようだ。


 出てきたのはガンゾロの目玉だった。


 目玉って美味いのか? と思うかもしれないがこれがまた美味い。


 まあ目玉なので見た目は相当精神的に来るが、食べるとトロトロの液体が口の中に広がって美味しい。


 さらにお酒とも合う。


 早速一口食べる。


「んん〜〜!」


 やはりたまらない。


 美味おいしすぎる。


「ほら、キューロのサーロインだ」

「わぁ! ありがとうございます!」


 やっと来たわぁー!


 やはり疲れた後のこれは格別だ。


 一口サイズに切って食べる。


「………………」


 言葉が出ない程に美味しい。


 ただただ美味しい。


 結構な量あったのに七分程で食べてしまった。


「どうもありがとうございました」

「あいよ! また来て下さいよぉ!」


 店を出る。


 いやぁー美味しかったなぁ。


 明日もまた行こう。


 そう思いながらまた監視を続けようとした。


「!?」


 いない!


「一体何処へ!?」


 私の監視方法は【監視者オブザーバー】という魔法で監視をする。


 この魔法は見たいと思った所を見たい角度で見せてくれて、視界範囲内の人の数が分かり、さらに場所も強調表示してくれるのだ。


 なのでベットで寝ているのは人ではないと分かった。


 食事中もちょくちょく見ており、食べ終わる頃には絶対にいた。


 【監視者オブザーバー】で自分のいる真上の位置から見る。


 ……いない。


 先程は監視対象の部屋の角にやっていたので人数は1だったが、今は20だ。


 だが上空20mの位置から見ているためこの数はかなり少ない方だ。


 そして対象がいた宿の半径30m以内には誰もいない。


「くそ……本当にどこいった!」


 監視対象を見逃してしまったらマスターに怒られてしまう!


「絶対に! 絶対に見つけてやるぞ!」


 そう叫びながら対象のいた宿を睨んだ。

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