17 両手持ち用の杖は釣りをする

 …………いつにも増して寝覚めが悪い。


 まあ当然だよな、野宿だもん。


 土の上で寝てるもん。


 穴から差し込む光が眩しい。


 今何時くらいだ?


 まあ朝なのは分かる。


 太陽が真上にないからね。


 ま、【重力無効サイレントグラビティ】で飛んでいきゃあすぐ着くでしょ。


 そう思い【完全土パーフェクトソイル】を発動し周りの壁をどける。


「うっわ」


 周りを見てその一言しかなかった。


 何故なら……


「死体だらけじゃん」


 そう、モンスターの死体が大量にあった。


 え? 私が寝てる間に何があった?


 私寝てる間にやっちった?


 いやありえないな、MPあんま無かったし。


 つまりここら辺を通りかかった人がやったってこと?


 めちゃつよじゃんその人。


 でももうここら付近にはいないよなぁー……多分。


 なんか腐り始めてるし、絶対倒された時間帯は私が寝たすぐ後とかだってぇー。


 いっやー気付かなかったなぁー。


 まあこの魔物達は素材を売り飛ばしてお金にするとして、一体どんな人が倒したんだろう?


 マジで結構な量の魔物がやられている。


 ま、さっさとミンジャー町へ行きますか。


重力無効サイレントグラビティ】を発動し、ミンジャー町がある方向に向かって飛ぶ。


 いやぁー飛べるってほんと最高ぉー!


マジで【重力無効サイレントグラビティ様様さまさまだ。


 さて、ここで一つ問題が起きた。


 ……お腹すいた。


 マジ腹減った。


 というか昨日の夜から何も食ってない。


 ケルベロスで忙しくてそのあとはMP回復で忙しくて……


 はぁ〜、次から次へと災難が降りかかる……。


 よし、なんかご飯になるの探そう。


 魚とか果物とかがいい。


 陸の動物は……殺す時すんごい罪悪感が残るだろうから嫌だ。


 魚の方がまだ罪の意識が薄れる。


 ということで近くの川に向う。


 幸い貰った地図にはミンジャー町周辺と、道中にあるものが描かれていたので行くのは簡単だった。


 という訳で川にやってきたのだが……


 釣竿ぇや。


 ま、そりゃそうだけどさ。


 どーするかなぁー。


 両手持ち用の杖になんか良いのないかな?


『無限収納袋』の中を【見る者】を発動しながら漁る。


「あった」


 それもピッタリのやつがあった。


《名前:釣り杖


 効果:この杖だけで釣りが出来る。

    しかし餌は付いてない》


 ドンピシャにも程があるだろ!


 でも餌が付いてくるわけじゃないのかぁー。


 よし、餌を探そう。


 そこら辺の土をイジイジすること数十分……


 餌はそこら辺を掘って出てきたミミズ……のようなナニカに決まった。


 因みに針を刺した時に


「うぐぁ!? あぁ! ぐあぁぁ! っはぁ! っはぁ! っはぁ!」


 とリアルな悲鳴を上げたのでもうコイツを餌には使わない。


 SAN値が凄い下がる。


 数十分待つと、杖がクイッと引っ張られた。


「かかった!」


 ぐいっと力を込めて上に杖を振り上げた瞬間、ボキッという音ともに魚が綺麗にターンを描きながら顔面に向かって飛んできた。


 ……そういや私、APが1250もあったわ。


 そりゃ思いっきり引っ張ったら壊れるわ。


 後で【完全修復パーフェクトリペア】で直そう。


 ま、魚釣れたし結果オーライ!


 どんな魚か見てみると


 めちゃくちゃ濃いめの虹色の魚だった。


 ……食えるの? こいつ。


 明らかに

「俺! 俺毒あるよ! 食うなよ! 絶対ぜぇーったいに食うなよ! 良いね!?」


 と言っているような色だ。


 毒……いやまあ毒あっても【完全回復パーフェクトヒール】で治るんだけどね。


 ということで『生成杖』でナイフを作り、さばいていく。


 うぅ……やっぱり内臓の見た目が気持ち悪い……。


 というかなんか内臓までもが虹色なんだけど……。


 何がどうしてこうなったんだよ。


 流石に身は虹色じゃな…………くないわ。


 バリッバリの虹色だ。


 肌よりは色が薄いがが虹色だ。


 ……食欲失せまくるなぁ。


 でも、三代欲求の食欲には勝てない!


 内臓をなんとか取り出し、【完全炎パーフェクトファイアー】を放って集めておいた木の枝に火を灯す。


 そして【完全水パーフェクトウォーター】に浸してあった木の枝を取り出し、【完全風パーフェクトウィン】で乾かす。


 そんで最後に【完全水パーフェクトウォーター】一瞬木の枝を入れて虹色の魚の口からエラに向かって刺して火のすぐそばに突き刺す。


 木の枝を水に浸したりしていた理由はまあ、衛生面的なやつである。


 因みに【完全風パーフェクトウィン】は威力がバカ強いので、虹色魚から離れた位置でやった。


 いやぁーでも疲れた疲れた。


 たまにはこうゆっくりするのも良いねぇ。


 ……はっ!? もしかしなくても今私異世界来てようやく休めてる日なんじゃね!?


 やぁーたやったぁー!


 やぁーっと世界が優しくなったぁー!


 釣りして釣った魚を食う!


 これを休みと言わずして何と言おうか!


 ありがとう『生成杖』と『釣り杖』!


『釣り杖』を【完全修復パーフェクトリペア】で直した頃には魚がそろそろ焼けていた。


 握る部分に少量の水をかけて冷やして握る。


 そして……


「はぐっ!」


 食った。


 ……………………………………美味い。


 イケる、結構イケるぞこれ。


 脂が乗っていて、身が引き締まっているしでめちゃくちゃ美味い。


 やべぇ、マジ美味うめえ。


 骨をぺっぺと吐きながら喰らう。


 あっという間に食べ終わり【完全回復パーフェクトヒール】をしたあと、寝っ転がった。


 ……マジ美味かったな。


 でも腹はいっぱいなのでこれ以上は食えない。


 あー、またこんな時があったら食おう。


 そう思いながら【重力無効サイレントグラビティ】で浮き、ミンジャー町へと飛んだ。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


「よ、ようやく……ついた……」


 目の前にはでかい門と門番が二人。


 そしてそこの門を出入りする人々。


 ここが……


「ここがミンジャー町かぁー」


 結構良さそうな所だ。


 さて、町に入ってラーダさんの所に向かうとしますか。


 そして入ろうとした時


「待て」

 

 と門番に呼び止められる。


「な、なんですか?」


 近くで見ると意外と背が高いので、威圧感がある。


「身分証をお持ちですか?」

「あっ、はい!」


 ギルドカードを門番さんに見せる。


「………………」


「おい、どうした?」


 もう一人の門番さんが心配して見にくる。


「んー? …………!?」


 え!? なになにそのあからさまに驚いてる反応は


「魔法使いで……冒険者ランクSゥ……!?」


「メルア……様……?」


 様!? 今私の事様って言った!? 


「メルア様、大変失礼致しました。どうぞお通りください」


 なんか……怖い。


 そう思いつつ門をの下を通る。


 まあ別に入ったらジロジロ見られるとかは無かったし、誰かが来て「メルア様、こちらへ」とか言われるとかも無かった。


 そしてミンジャー町は普通に綺麗な町だ。


 前にいた街とはまた違った綺麗さだけど。


 この町は何というか、一般家庭が沢山集まったから町になったって感じがする。


 取り敢えず、治安が悪いとかそういうのがなくて良かった。


 さてと、地図通りに来た訳だが……


「無いなぁー」


 見つからない。


 何故だかこの周りをぐるぐるしてしまう。


「そもそもこんな道ないしなぁー」


 とその問題の道を指さす。


 そう、この道が無いから迷っているのだ。


「何かお困りですか?」


 と小綺麗な女性が話しかけてきた。


「はい、この道が見つからなくて……」

 

 その道を指差すと女性な顔が一瞬変わった。


 な……なんだ……? 私なんかやっちゃいました……?


「あぁその道はね、随分前に工事で塞がれてしまったの。それでここに新しく道が出来たからそっちを使うのよ」


 そう言って地図の何も無いところを指さしてそのあと行くべき方向を指さした。


「ありがとうございます!」


 いやぁー助かった。


 さぁてと、さっさと行っちゃおう。


「…………マスター、例の道を嗅ぎ回っている者が一人」


 と彼女が言っていたのは気が付かなかった。

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