9 両手持ち用の杖は謎の女冒険者と戦いかける

「あら、偶然ね」


 絶対偶然じゃないだろ!


 そう、朝に宿で出会った女性がそこにいた。


「な、何しに来たんですか?」

「あら、別にそんなに警戒しなくてもいいじゃない。ねえ? 〝精強のメルア〟ちゃん」

「あっ、すみませ――」


 その時ハッとした。


「あの、なんで私の名前と二つ名を知っているんですか?」


 ギルドとかで聞いたのかも知れないが、そこまで噂になる程有名ではないだろう。


 ツリーウルフの大群を倒したりとかランクFから一気にS行った位だ。


 ……あれもしかして結構噂になることやっちゃってる?


「別に、ギルドに入ったら貴方の噂で持ちきりだったからよ」


 めっちゃ噂になってたぁー。


 えー、嘘やーん。


 しかも絶対知られちゃいけない人に知られてんじゃーん。


 私今度こそオワタ。


「それでねメルアちゃん、さっき私貴方がこのコークローチャスを倒してるのを見ちゃったのよ」


 そいつの名前そんなんだったんか。


「それでね、私ってほら、冒険者ランクSSだから二つ名とかで“戦闘狂”なんて呼ばれてるじゃない?」


 え? んなもん知らん知らん、初耳だわ。

 てか、冒険者ランクSSなの!? ハワァー、すご。


「……あら? 知らなかったの? …………以外ねぇー」


 彼女はかなり驚いた顔をしていた。


「てっきり、知ってたから驚いて逃げたのかと思ったわ」


 まてまてまてまて、取り敢えずめちゃくちゃ凄い人なのは分かった。


 でも同時にめちゃくちゃヤバい人なのも分かった。


 戦闘狂って呼ばれるってなんじゃいそれ。


 怖いし、【見る者】で彼女を見ておくとしよう。


《名前︰ルーファ・レベッカ


 HP︰3400/3387


 MP︰1200/1100


 AP︰6588


 DP︰4755


 SP︰8964


 スキル・魔法︰【超回復スーパーヒール】【超防御スーパーウォール】【超上昇スーパーライス】【超修復スーパーリペア】【超速度スーパースピード】【速き者】【残像アフターイメージ】【超瞑想スーパーマダテーション】【ほろ酔いティップシー】【迫害パーセキュション】【瞬間移動テレポート】【白鯨ホワイトホエール】【痛覚無効ノーペインセンセーション】【狂人マッドマン】【心眼マインドアイ】【未来予知フューチャープロテクション】【薔薇の微笑みスマイルオブザローズ


 称号︰『素早い殺人』 『止まらぬ者』 『【スーパー】を極めし者』 『酒好き』 『動く雲の観測者』 『地獄の痛みを耐える者』 『怒れる者』 『予知者』 『鞭の覇者』》



 ちょい待ちウェーイト!!


 化け物すぎませんかね!?


 AP:6588て!


 マジでなんだこれ。


 それにDPもSPも 全部化け物レベルやし。


 私なんてAPは1250だしSPも650


 DPに関してはたったの150だぞ!?


 え何? この世界では普通はステータス2000くらいあるものなの?


 まあ取り敢えず分かった事がある。


 それは、

 戦ったら死ぬという事!


 間違いなく死ぬ!


 だけどここで逃げるなんてできる訳ないしどうしたものか。


「あ……あはははは……」


 取り敢えず笑う事しか出来ない。


 だってなんかこういう展開ってラノベとかだと戦う感じじゃん!?


 嫌よ私! 彼女と戦うの!


 スキル&魔法のところに【未来予知フューチャープロテクション】とか【心眼マインドアイ】とかあるし!


「そういえば私一つ貴方に聞きたい事があるのよ」

「なっ、なんですか?」


 なんて質問されるんだ!?

 めっちゃ怖い!


「まよいねk」


 …………………………え?


「痛たっ、ごめんなさいね、舌を噛んじゃったわ。ねえ、まよいねk」


 ……………………。


「まよいねk まよいねk まよいねk!!」


 もしかして…………


「……あの……もう一度貴方がやろうとしてるギルドミッションを教えてもらっても良いかしら?」

「えと……迷い猫探しです」

「まよいねk」


 もしかして、めっちゃ滑舌悪い?


「あーもう! なんで言えないのよ! 貴方! 私になんか魔法でもかけた!?」


 いやな訳ないだろ!


 てか仮にかけたとしても『迷い猫』という単語を言えなくするとかいうドマイナーな魔法使う訳ないだろ!


「そんな訳ないじゃないですか!」


 やばい! 死ぬかもしれない!


「じゃあ何でまよいねk ……って言えないのよ!」

「知りませんよ! 純粋に滑舌悪いからじゃないですか!?」


 言ってしまった……。


「…………」


 あれ? どうしたんだ?


「……なぁんか貴方とはちょーっと戦う気が失せちゃったわ」


 え!? ありがたいけど何で!?


「私はー、宿に帰って寝たりでもしてるわ」


 彼女はそう言って……消えた。


 …………めっちゃ怖かったぁぁぁぁぁ!!


 死を目の当たりにするとこんなに怖いものなのか!


 流石異世界……恐るべし……。


 そんな事を考えながら【重力無効サイレントグラビティ】を発動して街に帰るのだった。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


 いやー、まさか報酬が15000ベイルジとは。


 報酬のところ見てなかったから帰る途中めっちゃ怖かったけど良い報酬で良かった。


 ……そういや私の部屋の隣がルーファさんなんだよな……


 こう言うのもなんだけど嫌だぁぁー!


 夜寝てる時に殺されるかもしれない!


 まあ流石にそれはないか、だって戦う気無くなったって言ってたし。


 それも嘘かもしれないけどね。


 取り敢えず暗くなってきてるし、帰るとしよう。


 ついでにルーファさんが入ってきたら分かるようにしておこう。


 そう思いながら【重力無効サイレントグラビティ】で宿に向かって飛んだ。


 


 布団でぬくぬくしながら【重力無効サイレントグラビティ】を使い、罠を作っていく。


 という事でご覧下さい! 匠によって作られた罠だらけの一室を!


 まずドアを開けた瞬間に【重力無効サイレントグラビティ】が発動し相手を拘束。


 そしてすかさず【ライト】で目眩し。


 さらにそこに【完全土パーフェクトソイル】で体をガッチガチに固めてフィニッシュ!


 ……やりすぎか?


 いやでも殺されるよりは絶対にマシ!


 って事でこれでヨシ!


 まあでもこれ自動で発動するとかないからずっと起きてなきゃいけないんだけどね。


 ハハハ……今日は徹夜だぁー!


 しかし結局寝てしまうのだった。


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