第3話セクハラ

「はよー、実乃李」

「おは〜なぎなぎぃー、ご機嫌斜めでどした〜?」

 教室に足を踏み入れ、教卓付近で談笑する数人の女子グループに挨拶をしながら歩み寄る。

 鼓原実乃李つづみばらみのりが普段の軽い調子で挨拶を返してきた。

 残りの二人も挨拶を返す。

「変質者に絡まれて……立場、弁えないにね」

「えっ、そうなん!?よくなぎなぎだけで撃退おいかえせたねー。その場にいたら私が一発お見舞いしたね〜」

「ぷふっ……あ、いや、思い出し笑い的な」

 鼓原が変質者を好狭野先生だと想定してないのだと解っているが、好狭野先生かのじょに鼓原が拳を腹にめり込ませている光景が脳内に浮かんで吹き出してしまった。

「そお〜?心配して言ったのに笑われたから……ね。それならそれで良いんだよ。でさ、話題変わるんだけど——」

 彼女が怪訝に首を傾げる。そして納得したように頷き、会話に割り込まなかった二人にも視線を合わせ、談笑が再開された。


「おはよーッ!皆ぁ〜今日も一日楽しんでこ〜ッ!」

 威勢の良い挨拶が近付いてきたと同時に背中に柔らかく弾力のあるものが押し付けられ、ブラウスの上から胸を盛大に揉まれる。

「んんっ……あ、あっんんっ、んっやぁめろぉぅ……んんっ、あっあっ、んんっ——!」

 こいつが登校していないから警戒はしていたが、相変わらず手を出すスピードは早く防げなかった。

 懸命に荻野恵の胸を揉みしだく手付きに抗おうとするが喘ぎ声は耐えきれず、漏れる。

 鼓原や残りの二人にアレな表情を見られ、クラスメイトには喘ぎ声を聞かれる辱めを受けた。


 さ、最悪だぁああぁぁああああ!!


 友人のセクハラに、殺意を覚えた私だった。

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