ワールドポートにて

柊 大介

ACT,1

1960年代のアメリカ、、、、それは主な長距離の移動が船から飛行機に移り変わった時代だ。そんな時代、ここパンアメリカン航空が誇るワールドポートには世界中から数々の飛行機が押し寄せてくる。そして飛行機だけでなくさまざまな物語もやってくる。この男と女の物語もそのうちの一つだろう。それはある日のこと、、、、



私ことエリックハイネマンの乗る飛行機は今NYに向けて着陸体制に入っていた、数年前に飛び始めたばかりのジェット機707は乗り心地が良くとても満足だ。

さて、人が満足を感じると次の出来事にも期待を寄せるものだ。私は数千マイル彼方の彼女と恋愛をしている。変な話だろうがそんな彼女とNYで会う予定を立てているのだ。彼女、ヘレンフレミングはアメリカ人で知り合って4年、今では22歳だ。彼女とはここNYで知り合った、なので会う時にはずっとNYで会うことにしている。

そしてそんな出会いを楽しみにしている内飛行機は丸い円盤のようなワールドポートについた、とても近未来的な構造でいつも驚かされる。私の祖国西ドイツでは考えられないような建物だった。私は飛行機から降りるとターミナルに直接つながった橋を見てこれまた驚きを隠せないままターミナルに向かった。飛行機を出てすぐのターミナルの中で待っていてと彼女は言っていたのでターミナルで待つことにした、NYの地に降り立つと私は昔のことを思い出す、、、、



あれはそう、私が彼女と出会ったあの日の夜の話だ。出会った時彼女は両親を亡くし、男にも振られて、それでいて貧乏で、、、そんな生活が苦しかったのだろう。

彼女はイースト川に入水自殺しようとしていた。飛び込む寸前、通りかかった私が必死に彼女をこの世に引き留めた。彼女は私に今までの辛いことを全て話してくれた、しかし自殺する意図が未だにある彼女に私はこんな話をした。

「名はヘレンというんだね、いいかいヘレン。君はもう輝きは失ったと言ってたね。だが僕はそう思わない、あれを見ろ、あそこには自由の女神がある。しかし遠くにある上ガバナーズ島に挟まれて僅かしか見えない、だが彼女は輝きを失ってはいない。君はあそこに微かに見える自由の女神のようにどんな障害があっても輝き続けるんだ」そう私が説得すると彼女は自殺を思いとどまってくれた。

これは単に自殺をやめたということではなく、今までの自分の思いよりも私の言葉を信じてくれたということなのだ。私はそれが嬉しい、そして自分を後押しする言葉をもらった彼女はもっと嬉しそうだった。


それから彼女とは1年に一度にNYで会いながら手紙でやり取りするようになった。彼女は手紙で近日あった些細なことを手紙に書くことはあっても、何の職業をしているかなどは手紙には書かなかった。なので今日聞いてみようと思う、などと彼女のことを考えてくると一機の707がワールドポートに入ってきた。

そして707がワールドポートに到着すると客がゾロゾロと降りてくる。最後にパイロットとスチュワーデスが出てくる、その中のスチュワーデスの一人がこちらに近づいてきた。私はそのスチュワーデスを見てあっ!とびっくりして声を上げた。

そうスチュワーデスの格好をしていたヘレンであった。彼女はスチュワーデスになっていたのだ。そしてそんな彼女が出会ってすぐにこんな事を言う。

「どう?びっくりした?私はスチュワーデスになったの、あれから努力したのよ。私はあなたの言葉に何度も救われたわ、私は今あの日の夜の自由の女神のように輝いているかしら?」そう言われた時私はすぐに「あの日の自由の女神よりも遥かに綺麗に輝いている」そう思った、、、、


これはある日、ワールドポートで起こった再会の話、、、、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ワールドポートにて 柊 大介 @820327

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る