第6話 PvPではなく戯れ
「イチジクもレア引いてたなら言ってよ」
イチジクのステータスを見たザクロが不満げに言う。驚きのあまり、RPも忘れかけたようだ。
「驚かせたくってさ。どうどう?びっくりした?」
そんなザクロをからかうように言うイチジクの声にハッとなってRPを再開しつつ答える。
「これ以上ない程に驚いたわ!まあすでにレア種引いてる吾が言えたことではないがの」
「確かにね。で、ご飯食べたあとはどうする?」
「う〜む。何をしようかのう」
二人して悩んでいると、後ろから声がかかった。
「そこの二人、今暇なの?なら俺とお茶でもしない?」
呆れるほど軽薄な声だったのでザクロは無視を決め込んだ。イチジクは肩を大きく震わせ顔を青くして一言も喋らない。
男は様々なアプローチを仕掛けるも、二人は何も反応しない。次第に男はイライラしてきたのか、吐く言葉が罵倒に変わり始める。
ザクロも流石に苛ついて来たのでそろそろブロックなりGMコールなりをしようかと思ったところで
「このクソ陰険女が!所詮
と男が吐き捨てる。
それを聞いたザクロの中で、何かが切れた。
目のハイライトが消える。
あの日が想起される。
像が男に重なる。
ザクロは無意識に口を開いていた。
「やっと見つけた…死ね、外道」
ザクロは男に決闘申請を送る。
男はそれを鼻で笑い言う。
「その舐めた態度を正してやるよクソ雌」
決闘申請が受理される。
途端、二人は光に消えた。
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そんな中、異彩を放つ対戦カードがあった。
一人は
出会い厨の男をよく知る観客はいつものことかとスルーしていたが、周りで戦っているのが装備も整えた大人ばかりであることを鑑みると、それは十分異常と言って良いものだろう。
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男は内心歓喜していた。男は出会い厨をすることに喜びを覚える外道である。今日は上物が掛かったと大喜びしていた。
「ふへへ」
見るものが見ればなぜBANされないのか不思議な顔を浮かべるだろう。
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ザクロは内心歓喜していた。あの日逃した像が目の前に戻って来ていた。ザクロは自分も気づかぬ間に昏く笑っていた。
「ふふっ」
見るものが見ればなぜ笑っているのかと不思議な顔を浮かべるだろう。
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アナウンスが流れる。
〈〈ザクロ vs 卍ひろ卍 fight!!!!〉〉
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控室と舞台を分かつ幕が上がり互いの姿が見える。
二人は互いに走りよりそれぞれの獲物を振るった。
男は両手剣、ザクロは刀。
鍔迫り合いのまま男はザクロに言う。
「楽しいPvPにしようぜ」
だがザクロは嗤って言い返す。
「PvP?これはPvPではなく…」
刹那、男の視界からザクロが消えた。
そして次の瞬間首に刀が刺さる。
「
ザクロはただしゃがみ相手のバランスを崩すと同時に視界から消え、その一瞬で首に刀を当てに行っただけである。
が、男は慌てて距離を取った。
今の一撃でHPの四分の一が消し飛んだからだ。
男は会話による油断を狙い話しかける。
「あんた、何者だ?何をした?」
「吾の名はザクロ。怨敵を討つ復讐者じゃ」
「怨敵ぃ?初対面だろ、俺等」
「とぼけるなよ。あの日を忘れたとは言わせないのじゃ」
男は何も見に覚えがない。ザクロが何か得体のしれないものに感じた。
「だから…今度こそ逃げずに、大人しく死ね」
そう言うとザクロは男との距離を詰め、体の軸をずらし足の付け根を狙って横薙ぎに切りつけた。
更に男のHPが減り、半分になる。
<重心移動>により華麗に体捌きをするザクロの姿を男は捉えられず、わからん殺し状態である。
「舐めるなよ糞が!」
男はそう叫ぶと距離を取り剣を下段に構える。
相手が初心者装備である以上、一撃を食らわせればオチる筈だとカウンターを狙っているのだ。
だがザクロはそれを鼻で笑うと男の間合いに入る寸前で刀を投げ、横に回り拳で殴りつける。
相手の獲物を捉えることに集中していた男はしかし直前で横から迫る拳に気付き僅かながら体を捻り直撃は免れる。が、オーガ系…ひいては鬼族のstrの高さが半端な避けを許さないダメージを出す。
結果として男のHPは全体の三割まで削れた。
男はヤバいと思いつつ、チャンスだと感じていた。
(奴は今刀を手放している!近づいている今剣を当てれば俺の勝ちだ!)
そう思い男は剣をザクロに突き刺す。
「殺った!!」
男は確信した。
だが…
「誰を殺ったというのじゃ?」
果たして、ザクロは立っていた。
しかもHPは1割ほどしか減っていない。
男は絶望した。
膝をついてその場から動かない。
ザクロは刀を回収し男に近づく。
「あの日受けた屈辱をお前に返してやる」
「まず四肢を切り落として皮を剥ぐ。お前がそうしたようにな」
男はそんなことはしたことがない。
「ひ、ひぃ…ちがっ、人違いだ!」
「なら私の目の前にいるお前は誰だ?」
「私の目に映る忌々しいその顔は誰だ?」
「逃げて現れなお言い逃れをするのか?」
「答えろ人殺し!」
ザクロが刀を振り下ろした。
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