第5話 自由都市
里長の屋敷を出て幻についていくザクロ。
屋敷の前にはメインストリートが広がり、活気が溢れている。
「ここが道具屋で、その隣が武器屋、向かい側に防具屋があって…」
幻が店を一つ一つ紹介しながら進んでゆく。
(まあ後でマップでも見ればよいかの)
と思いつつ説明を聞きながらついて行くザクロ。
やがて二人はメインストリートを抜け、住宅街に入ってゆく。
「着きました。ここが貴女に与えられる家です。この魔鍵で所有者登録しちゃってください」
ザクロが手渡された鍵を扉にかざすと一瞬光った後、通知音がなった。
‘家を手に入れました’
‘ハウジングが解禁されました’
「これでこの家は吾のものか…」
「はい!この家は拠点として好きに使って構わない、と鏡様から言伝がありましたので」
「うむ、ありがとうな幻」
「いえいえ〜。では、私は戻りますね」
「ああ、またの」
幻の背が見えなくなるまで待った後で振り返る。
「さて、何をするかのう!」
その顔はまだ見ぬ世界への期待が全面に広がっていた______
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「え〜っと、あの、梓無子さん?」
「なに」
「降りてくれません?動けないんですけど」
「いや」
「ええ…」
鬼の里の探索を粗方終え、ログアウトした桃香の膝には不満げな顔をした梓無子が乗っていた。
「ゲーム内で会えるって言ってたのに」
「それはごめんって。さっきも言ったけどレア種族引いてテンション上がっちゃって」
「言い訳は聞きたくない」
「むう。じゃあ何したら許してくれる?」
「明日。自由都市で買い物」
「わかった。約束しよ」
「ん、約束。次破ったら許さないからね」
そう言って桃香から降りる梓無子。
「じゃ、また明日ゲーム内でね。おやすみ」
「おやすみ〜」
翌朝。起きた桃香は朝の支度もそこそこにAUにログインする。
向かうは交流用自由都市アヒュージノ。
最高神が召喚者のために神域に創造した都市で、この中ではDPの増減が緩やかになる。
鬼族の里に降り立った時足元にあった魔法陣を通じてファストトラベルできる場所で、このゲームではここ以外にも登録さえすれば魔法陣を通じて移動することができる。
「広い…そして人が多いのう…」
初めてこの街を訪れた桃香はあまりの広さと人の多さに圧倒されていた。さながら渋谷のスクランブル交差点のような人混みの中、桃香は待ち合わせ場所へ向かう。
「待ち合わせ場所は…中央広場じゃったか?」
「あっ、お〜いザクロ〜!こっちこっちぃ」
声のする方を見ると、腰まで伸びた赤い髪をなびかせている
「イチジク…ここはDPの増減が緩やかとはいえ、もう少し気にしても良いのではないか?」
「はっ!コホン よくぞ来てくれたな!友よ。とても嬉しいぞ」
「そこまで堅苦しくしろとは言ってないが?」
「確かに!じゃあ早速色々見て回ろう?」
RPが行ったり来たりするイチジクにザクロは苦笑を浮かべながら言う。
「ああ、約束じゃからな」
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自由都市はプレイヤー同士の交流に重きをおいていることもあり、立ち並ぶのは主にレストランか服飾系の店だ。
二人は服やアクセサリーを何軒か見て回ったあと、酒場風のレストランに来ていた。
「ん〜!この香草焼き美味しい〜!」
「つ…つかれたのじゃ。約束とはいえ
元気に香草焼きを頬張るイチジクと、ぐったりしながらサラダを口に運ぶザクロ。
「ザクロはagiが低い脳筋だもんね〜?」
「お主が早いだけであろう!?一体どんなステータスをしておるのじゃ!?」
「ん。見る?」
そう言ってウインドウを差し出してくるイチジク。
「どれどれ…」
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Name:イチジク 種族:吸血鬼
職業:槍使い Lv:2 HP:40 MP:50
str:20 dex:20 agi:25 int:20
vit:15 pow:25 luc:20 防御値:7(+2)
❲加護❳
【
❲スキル❳
<槍捌きlv1>
<血魔法lv1>
<姿勢制御lv1>
❲武器❳
初心者の槍
❲装備❳
頭:無し
胴体:アンティークワンピース
腰:アンティークワンピース
足:ハイヒール
アクセサリー:血の雫飾り
❲持ち物❳
冒険者の指輪
<槍捌きlv1> パッシブ
槍をふる動作がスムーズになる。
<姿勢制御lv1> パッシブ
姿勢をわずかにコントロールできる。
<血魔法lv1> アクティブ
MPとHP(血)を消費する吸血鬼専用の魔法。
MPの消費が少ない分出血を強いる。
・ブラッドボール 消費:MP1 HP1
血の塊を飛ばす。
“初心者の槍”
駆け出しの槍使いが振る槍。
装備条件 str20以上
攻撃力 5
“アンティークワンピース”
アンティークな雰囲気のワンピース。 防御値 +1
“ハイヒール”
普通のハイヒール。 防御値 +1
“血の雫飾り”
吸血鬼の一員であることを示す飾り。
血魔法を使う際のHP消費-1
____________________
「どうだ?妾強いか?」
「いやツッコミどころが多すぎて何から聞いたら良いかわからんのだが…」
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