第6話 〜デックローしか知らない世界 Final〜

「いやーお疲れ様です、ザキっち!」


「そちらこそ、ブッコローさんの為に本当にお疲れ様です。」


ザキっちの部屋はとても小綺麗で周りにはありとあらゆる文具が飾っている。

ただし部屋にしては少し大きすぎる気がした。


「ザキっちはブッコローっちが亡くなってからもまだ有隣堂で出ているの?」


「はい、おかげさまでまだちょくちょくと。」


俺っちは椅子から立ち上がると文具を見始めた。


「ふーん。」


くるりとザキっちの方へ向くと俺っちは喋り始めた。


「ザキっち、実は俺っち犯人を見つけたと思うんだ。」


「ええ!そうなんですか!で、真犯人は誰なの?」


「説明しましょうか。まず第一にブッコローっちの挙動だ。何人も指摘していたが何かがおかしかったらしい、そうでしょザキっち。しかも良い方に挙動がおかしかったと。でもこれだけじゃ何も解決しない。ここで出てくるのが又吉っちだ。

彼の指紋は確かにドアノブから摘出されていて、ブッコローっちとの一対一の時間が最も長いのが又吉っち。これだけを聞いたら犯人は確かに又吉っちに聞こえる。でもここで俺っちは一つの仮説を立てた。もしも、又吉っちがドアノブを触った時、まだブッコローが隣にいたとしたら?

しかし、ここで大きな矛盾が発生する。警察はドアノブの鍵が開けられた形跡は全くないと言っている事から、ブッコローが「二人」いる事になるんだ!少し戻ってくるがブッコローっちの挙動に帰ってこよう。彼はこれから起こる”何か”に向けて興奮していた。しかも彼しか知らない事に。そこで俺っちはこう考えた、ブッコローっちはドッキリを仕掛けていたのだと。

その日は四月一日。可能性は十分にある。こう考えたら全ての辻褄が合ってくる。本物のブッコローっちは収録の後から出てくる予定で待機していた。その間に偽ブッコローっちが収録には出る。そしてたまたま偽ブッコローっちが交代する時に又吉っちが一緒に来てしまった。もちろん自分が偽である事がバレてはいけないから偽ブッコローっちは又吉っちが戻るまで待機する。しかし本物のブッコローっちは交代する前にもう殺されていた。

こうすると、偽ブッコローっちが画面にいる間に出ていった人は一人だけ。かなり犯人が絞られたでしょ、ザキっち。」


そこで俺っちは一呼吸を置いた。ザキっちは数秒間静かにしていたが下を向いたまま言った。


「。。。でもそれはあくまで、デックローさんの推測の域にありますよね。」


俺っちは彼女の顔を見ながら答えた。


「そうだ、けれどもまだ一つブッコローっちが命を張って残してくれたヒントがある。ブッコローっちは昔から語呂合わせが好きだった。

そして165を語呂合わせにすると、ひ、ろ、こ、になるんだよ。」


彼女はもう何も言い返さなかった。


「最後まで使われた凶器だけ俺っちは分からなかったが、もう関係ない。俺っちが警察に通報したら後はそっちでやってくれる。」


俺っちは電話に向かっていき、警察を呼ぼうとした時、肉を鋭いものが通り抜けた。


「うっ!」


それ以上言えるかどうかの間にまた数回刺された。意識が混濁する中血に塗れたザキっちの顔が見えた。

そして彼女の手の中に光る物を見て、最後の力で俺っちは呟いた。




「ガラス、ペ。。ン。か」

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ブッコロー殺鳥事件 〜デックローしか知らない世界〜 U.N Owen @1921310

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