第3章 ゴールデンウィーク

第22話 予定


「お前達は大丈夫と思うが、これからゴールデンウィークとなる。皇華学園の生徒として自覚を持って行動をするようにな

間違っても問題を起こして、担任を呼ばれるような事は起こすなよー。

教師の貴重な休みが一日減る。学生のお前等と違って、教師の休みは値千金だからな。頼んだぞ!」


 私立皇華学園中等部の教室で、担任の鬼灯(ほおずき)明樂(あきら)先生は何時ものように気怠そうに言って教室を出て行った。


「~~~~~♪」


 ゴールデンウィーク!

 ああ、待ちに待ったゴールデンウィークがついに来た!

 ついに2週間のダンジョン立ち入り禁止が明日で解除される。


「蘭。なんだか嬉しそうだね」


「それは、もう! だって明日からゴールデンウィークだよ。しかも休みが重なって9日間の長期休暇っ。最高だね!!」


 永久が話しかけてきたので、素直に答えた。

 ――永久には、私がダンジョン探索者&配信者をしている事は話した。

 阿頼耶識さんには、ダンジョン探索・配信を優先させてもらう事を、正式採用された時に話したので、阿頼耶識さんから永久へ話が漏れるのが、遅いか早いかの違いと思ったからだ。


「2週間振りだから気持ちが逸るのは仕方ないけど――。無茶だけはしないでね」


「うん。分かってる」


「そうだ。輝夜ちゃんから時間があれば顔を出して欲しいってさ」


「了解。とりあえずゴールデンウィーク前半4日は、ダンジョンに遠征してるから、残りの日で時間があれば行くって伝えておいてよ」


 まずは2週間振りだから深層でリハビリしてから、マンダラをゆっくり探索するつもりだ。

 前回は呂布と白起という強キャラと遭遇と、時間という制限もあって中途半端におわったけど、今度は時間もあるので、もし呂布と遭遇することがあれば、今度は決着をつける。

 まあマンダラのかなり広いと言うのがクエビコ情報。

 もしかしたら会う事がないかも知れないけど、その場合は他の強者と出遭いたいものである。


「ああ、良かった。蘭さま。まだいらしたのですね」


「玲衣奈?」


 永久と雑談をしていると、昼休みに急遽用事が出来たという事で帰って行った玲衣奈が戻ってきた。

 後ろには冥月さんが付き添っている。

 この学校は富豪名家の子女子息が多く通っている関係で、メイドや執事を付き従えている子もいるので、メイドさんが後ろに居ても不自然では無かった。


「永久さん。こちらをどうぞ」


「これは?」


「私の財閥の1つの会社が造った最新式フルダイブ型VRゴーグルです。

蘭さまの式神であるクエビコのスペックを最大限に生かす事で、クエビコが見ている光景をまるでその場でいるように体感できるようになりましたの

これで、蘭さまが深層やマンダラでの活躍を、身近で! まるでそこに居るかのように体験が出来るようになります」


「……これって高くない?」


「市販予定価格は、約8万円です」


「高いよ! そんな高価な物は貰えない」


「では、レンタルと言う事でどうでしょう。一般の方の使用感を是非聞いてみたいのです」


「……分かった。じゃあ、しばらく借りるね

蘭。これって明日の探索から、対応するの?」


「え。どうなんだろ」


「――なんで蘭が知らないの?」


 永久に疑問で返されたけど、興味がなかったからです。

 クエビコは、玲衣奈となんか色々と話していて協力すると言って、私から数日離れている。

 何をしているのか少しは気にしていたけど、それがまさかVRゴーグルを制作するためだったとはね。


 どうやら玲衣奈は、以前からフルダイブ型VR技術に目を付けてていて、プロジェクター画面ではなく、実際に私のダンジョン探索をその場にいるような体験をしてみたかったらしい。

 元々VR技術があった財閥の関連会社に持ちかけて開発をしていたらしいけど、問題は私の方にあった。

 それなりにリアルな画像を撮るには、相応の機材が必要となる。フルダイブ型VRとなるなら尚更のこと。

 頓挫していた所に、お父さんがクエビコを式神契約した事で、クエビコが地上へ現れる事が出来たので、再び計画が動き出したらしい。

 クエビコはボールほどの大きさだけど、その処理速度はスパコン数台分に匹敵して、なんと映像は8K対応しているとか。無駄に高性能だった。

 人材と資金を大幅に投与して、この一週間で集中的に開発を進め、私がゴールデンウィークにダンジョンに潜るまでに間に合わせたとか。

 ――な、なんだか、技術屋さんに申し訳ない。


「この一台は、蘭さまのお義母(かあ)様に差し上げます。

是非、持って帰ってください」


「分かったけど。なんかお母さんのなんか呼び方に、妙な感じが……」


「気にせいです」


「そ、そう」


 妙な圧を感じたので、私はそれ以上は踏み込まなかった。

 なんかやぶ蛇になる気がしたからね。


「でも、ここまでして貰ったら、なんかお返ししないとね」


「蘭さま。私が好きでしていることです。気になさらないで下さい」


「そうは、言っても――。

なら、なにか玲衣奈は私にして欲しいことはある?

私に出来る事なら、なんでも言ってよ。出来る限りはするからさ」


「――なんでも、ですか?」


「う、うん。ま、まあ、出来る範囲でだよ」


「でしたら! 私と一緒に一晩しっぽ」


「玲衣奈お嬢様。ここは学校という公共の場です。自重して下さいませ」


 玲衣奈が何か言いかけた所で、冥月さんが止めに入る。

 キッと睨み返すと、澄ました顔でそれを受け止めた。

 しばらくそうしていたが、先に玲衣奈が折れたようだ。


「でしたら、蘭さま。ゴールデンウィーク後半の土曜日に、四天院家が開くパーティーに同伴してもらっても良いでしょうか。

勿論、蘭さまがご満足いただけるように、質も量も用意してあります」


「行く!」


 私は即答した。

 四天院家お抱えのシェフが作る料理は、凄く美味しいから私は大好きだ。

 それが量も用意されていると言われると、行くしか選択肢はないよね?

 だと言うのに、冥月さんはそんな私を見てこう言った。


「……檻の中に食べ物が置かれているトラップに、ホイホイと掛かる獣を幻視しました」


「私も見た」


 冥月さんの言葉に、永久は溜息を吐いて頷くのであった。

 なんかディスられている気がするのは、気のせいだろうか?


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