第23話 探索再開


 ゴールデンウィーク初日。土曜日。

 私は青木ヶ原樹海ダンジョンへと戻ってきた!


 服装は普通の女子中学生が着ているようなカジュアルなものにした。

 前回同様に動きやすいようにスカートとスパッツを併用している。

 ……ズボンやジャージでも良いと言ったのだけど、クエビコと玲衣奈が反対してきたので、この格好にした。


 武器はステンレス包丁。

 阿頼耶識さんの依頼を受けたときに100円ショップ「ダグソー」で購入した330円のステンレス包丁をそのまま使うことにした。

 青木ヶ原樹海ダンジョンの近くには武器や防具、ダンジョン攻略に役立つアイテムを取り扱っている店はある。

 一度、店の中を覗いてみた事はあるけれど、普通に高かった。

 量産型だと思われる片手剣が10万円を超えていた。

 ワンオフの受注品だと100万からという。

 当然、女子中学生の経済力が購入するのは諦めたのは言うまでもないことだね。


 装備品で変わったのは、スマホを装着する事の出来る籠手を購入した。

 万が一、手に持っていて弾みで地面に落として画面に傷が付くのは避けたかった。

 残念なことにスマホは私ほど頑丈じゃあないんだよね。


 後は顔に被る仮面も交換した。

 前回、シモ・ヘイヘの銃弾によって額の所に穴があけられたからだ。

 前の物は無地の物だったけど、今回からはおしゃれ要素を取り入れて狐面にしてみた。顔の鼻から上を隠すタイプなので、顔バレは防げると思う。


『――で、深層一階入り口の所で、ずっと立ち止まっているつもりですか?』


「ぅぅぅ。なんか、凄い緊張してきた」


『おや。ランが緊張という人間らしい事を言ってくるとは驚きました』


「私をなんだと思ってるのさ!」


 私だって人間である以上は、緊張の1つや2つはする。

 まあ、いつまでも此処で棒立ちしている訳にはいかない、か。

 大きく深呼吸をすると、クエビコへ顔を向けた


「ら、LANでーす。本日は、本日は、リハビリを兼ねて、ひとまず深層探索をしていこうと思います!」


 スマホの画面を確認すると、接続者数が1000人を越えている。

 い、今まで底辺の過疎配信者だったので、なん大人数に見られていると思うと、妙に緊張する。

 芸人がいつもスーパーの屋上で過疎っていて、いきなり大人数のホールでするようになった並の緊張感だと思う。


“リハビリで深層攻略とは?”

“服装がカジュアル過ぎない? 大丈夫?”

“あれ、この前、『ルナティック級』を斃した時の刀は持ってないな”


「服装は問題ないです。攻撃は当たらなかったらどうってことないですから!

気をつけるとしたら、火炎系は避けないと、服が焦げちゃうぐらいです。

後は呂布レベルの敵が出てきたときは、風圧で破れるぐらい」


“どこぞの天パ並のニュータイプですか、貴女は”

“今日はマンダラまで行くんですか?”

“呂布っ。頑張れ。せめて上着ぐらいは切り刻んで下着を見せて”

“↑通報しました”


「あははは。残念ですけど、服の下は水着を着てます。

下手に映り込んで、垢BANされるのだけはコワイ。深層モンスターよりもコワイ

……それに恥ずかしいです」


“英断だな”

“そもそも良い大人が女子中学生の下着をみたいとか、ヘンタイだよなあ”

“Q同性同年代なら構いませんよね”

“A↑自重して下さい”

 

“水着はどんな物を着てますか”

“スク水っ。断然、スク水!”

“ヘンタイがいるぞ。全く時代は競泳水着だと言うのに。幼い少女と競泳水着の魅力が”

“↑こいつもヘンタイです”


「水着のタイプは普通にビキニタイプです。

流石に、スクール水着や競泳水着を着てくるのは、恥ずかしいですよ」


 水着なんだから変わらないと思うかも知れないけど、ビキニタイプは、まあ下着みたいな感じだから恥ずかしさはあまりないけど、スクール水着や競泳水着を私服の下に着るのって変態チックで恥ずかしさがあった。

 と、なんかコメントが明後日の方向に進んでないカナ?

 これだと雑談配信になっている。

 とりあえず話の流れを変えるために、少し前のコメントに対して返答をした。


「こ、こほん。『ルナティック級』を斃した時に使用した刀は、おと……知り合いにあげました。

でも、心配しないで下さい。

あんなクソ生意気なプライド青天井な刀よりも、このステンレス包丁があります!」


“まあ、あの刀の能力的なチートだから生意気になるのは分かる”

“あんなに喜んで啼いてたのに……。反抗期か”

“いや、そもそも、そのステンレス包丁って、俺がよく行く100均で見るのだが”


「はい。これは100均ショップで売ってる330(税込)のステンレス包丁です」


“え。マジのマジ”

“【速報】女子中学生。100均ショップの包丁でダンジョンに挑む”

“新手の自殺志望者かな”

“LANちゃん。きちんと武器は良いのを買った方がいいよ”

“良い奴は100万以上するけどな”

“ダンジョンで採れたミスリル製の武器に至っては1億円越え”

“1ww億wwww”


 オーダーメイドの作品は億を超える事がザラなようだ。

 素材を全て持ち込めばある程度は安くなると聞くけど、それで数千万はすると言う。

 女子中学生からしたら縁の無い話だね。

 一応、視聴者さん達にも安心して貰うために、コレで適当なモンスターを斬って斃せるところを見せないと。




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