第5話

「「「いらっしゃいませー!!」」」


 ここは大衆料理屋『ユニコーン』。オープンして間もないお店にもかかわらず、店内は若者を中心にほぼ満員の状態である。

「すごいにぎわってますね、お料理食べるのがとても楽しみです!」

 俺たちは席についてメニュー表を眺めていた。

「…何にすっかなぁ。」

 初めて入る店で、何を食べるかなかなか決めることができないのは、きっと俺だけじゃないはず。

「いらっしゃいませ!こちらお通しになります。あれ、お客さんここに来るの初めてですよね?」

 美味しそうなお通しを持って現れたのは、長く艶めきが止まることを知らない髪をなびかせた少女。

「初めまして!私、此処『ユニコーン』の店長をしてるヒナタ・ヨコタと申します。どうぞご贔屓に!」

 そう言ってヒナタちゃんはにこっと微笑んだ。

「…天使か?」

「やだ、フクロウさんに口説かれちゃいました?」

「あ、彼はフクロウではなくミミズk…」

「フクロウです(キリッ)」

 俺、今から頭の上に生えてる羽角抜いてフクロウにジョブチェンジするわ。

「そんなフクロウさんに提案なんですけど、オープンしてすぐこんなに繁盛すると思わなくて従業員不足なんです。よかったら家で働きませんか?」

「ぜh―」

「ブッコロー!私と一緒に旅してくれるんじゃないんですか?!」

「…はい。」

「あらあら笑」

「ヨコタさん、おすすめの料理をお願いします。」

「承知しました!しばらくお待ちください。」

 そう言ってヒナタちゃんは厨房に戻っていった。

「もー、何をそんなにムキになってるんですか、オカザキさん。」

「だってブッコローがかわいい子に鼻の下伸ばしてるから…」

「おやおや、嫉妬ですかー?(ニヤニヤ)」

「からかわないでください!」

 そんなやり取りをしていると、料理が運ばれてきた。

「お待たせしました!当店一押しのモツ煮と肉じゃがになります!」

「「おぉー!いただきます!!」」

運ばれてきた料理をさっそく口にする。

「…美味しい。」

食べなれたはずのモツ煮だが、こんなにも美味しいモツ煮を食べたのは初めてだった。

「お料理はお口に合いましたか?」

「…どちら様で?」

「これは失礼しました。私、キッチンを担当しているマイ・ハセベと申します。ヒナタちゃんから変わったお客様がいらっしゃってると聞いて、見に来ちゃいました!」

「おぉう…。」


 …俺、モテ期が来たんかな?


「とても美味しかったです。どこか懐かしさもあって、落ち着きます。」

「それはよかったです!それじゃ、ゆっくりしていってくださいね。」

 そう言ってハセベさんは厨房に戻っていった。


 ある程度食べ物をお腹に入れ落ち着いたところで、ふと店内を見回すと、しゃれた店内BGMが」生演奏だと気が付いた。不思議な形の楽器を弾く若い男性と、少し古風な言い回しの歌を歌う女性。

(なんか、絵になるなぁ…)


「ごちそうさまでした。とても美味しかったですね!」

「そうですね。これから街に帰ってきたときはここに食べに来よう。」

 

 お酒も程よく回ってきていた俺たちは、お店を後にしてギルド拠点に戻り、床に就いたのだった。

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