第2話
「なんて運命を感じるような出会いって素敵じゃないですか?!」
「お望みの出会い方ができなくてすいませんね。」
「もう、そんなに拗ねないでくださいよ。こうして今一緒に旅してくれていること、とても感謝していますよ!」
巷で流行りの恋愛冒険小説を手に俺に話しかけてくるこの人間の名は、ヒロコ・オカザキ。
彼女はまだ見ぬ文房具に出会うべく旅をしているのだという。特に好きな文房具はガラスペンなんだとか。ガラスゆえの透明感やキラキラしていているところや、インクの種類の豊富さ。ガラスペン特有の毛細管現象でインクを吸い上げるところは、永遠と見ていられる…などなど、よく熱く語られる。
…わからなくもない。
この世界において一般的に用いられるペンは羽ペン。
…知っての通り、羽ペンは俺達鳥類の羽が使われている。あれを使っている人間とは、当然だが相いれない。
そんな世界でガラスペンに興味を持つ彼女との出会いについて少し語ろうか―――
俺と彼女が出会ったのは少し前。森の中にある小さなカフェでのことだ。ここに外部の人間はめったに訪れないため、代わりに俺のように少し変わった者たちが多く集う。そこに迷い込んできた彼女の話を居合わせた者たちで聞いていた。
「それならブッコローちゃん連れて行きなさいよ。この子物知りだから、何か役に立つかもしれないよ!」
話を聞いていた此処のカフェの常連客、マサヨ・オオヒラが
「また、突拍子もないことを…。俺は誰にも邪魔されずに、お馬さんと戯れながら静かに暮らしたいの!」
「あんた、そんなこと言って―。馬と戯れるってどうせ競馬のことでしょ?お金を擦って奥さんに怒られるのがオチなんだから、ちょっくら冒険してきて、稼いだお金で奥さんと娘ちゃんにいいもんでも食わせてやりなさいな!」
「ぐぬぬ…。」
オオヒラさんはみんなの姉御的な存在。なんだか弱みを握られているようでなかなか強く出ることができない。痛いところをついてくるなぁ…。
「そんな、気を使ってもらわなくても…。一人旅も案外楽しいんですよ?」
「気なんか使ってないわよー。旅は道連れ世は情けなんて言葉もあるじゃない。この子だってこんなところでくすぶってるくらいなら、旅の一つや二つして人の役に立ったって罰はあたりゃしないわよ!」
「えーっと…?」
…こうなったオオヒラさんは、もう、だれにも止められない。
「さー!そうと決まったらさっさと行った行った!善は急げ!ブッコローちゃんが旅に行くことは、私が奥さんに伝えておくから。んで、新たな旅の出発を祝ってヒロコちゃんのお代も私が持つわ!」
「え、俺の分は?」
「あんたは自分で払いなさいよ!むしろBIGになって帰ってきてから、土産に旅の話聞かせてもらって、稼いできたお金で奢ってちょうだいよ。」
「…ふふっ」
俺とオオヒラさんの言い合いを見ていたオカザキさんが静かに笑い始めた。
「こうやってにぎやかな雰囲気で旅をするのも、なんだか悪くないなって思えてきました。ブッコローさん、でしたっけ?よければ一緒に旅、しませんか?」
「…宜しくお願いします。」
これが俺たちの出会いで、一緒に旅をすることになった経緯なんだが…
――――――充分にロマンチックじゃないか?
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