カエルと王子様

あめはしつつじ

淀んだ泉のほとりで、

淀んだ泉のほとりで、

私は醜くないていた。


淀んだ泉は、私の、

醜い姿を写さない。


淀んだ泉は、私の、

醜い涙で濁らない。


曇った空気は、じめじめと、

私の声も、姿もみな、

霧の中に、包んでくれる。


醜い私は、飽くことなく、

乾くことなく、ないていると、


おや、

私の他に、ないているものがいる。


私の足元から、醜いカエルが、

ゲロゲロと、醜く鳴いていた。


毒々しい、爛れた皮膚を、

(両手で包み込み)


私は、

キスをした。


カエルは消え、

太陽が現れた。


美しい王子様は、私を優しい声で慰める。

光が私を乾かしていく。


その光は強く、

カエルをひからびさせる程に。

さよなら、私の太陽、


私、

醜いカエル。

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カエルと王子様 あめはしつつじ @amehashi_224

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