新しい本を売買する

 勧誘が済んだら、ノールは、三か月後にまた来ると言って、帰っていった。

 アル達を残して帰っていった彼に、教師陣はソワソワとしていた。

 給金が上がるのはもちろん、自分の授業がない教師もおおいらしい。

 そのため教師になるために向こうに行きたいと言っているモノは、存外多いのだった。


「そうだ、医師でもいいですよって言ってました。医療魔術を行使する医療系に進んでくれてもいいと。どうですか?給金は今よりも余程いいですよ」


「それは嬉しいのだが、こちらの仕事も有るのでね、直ぐには行けない。だが三か月後には付いていくものも有ろう」


「それは嬉しいですね」


 学校の校長先生に伝えた所そう言われたので、アルは大手を振って帰っていったのだった。

 もうここまで来たら堂々と行こう、そうだ、どうせ独立なのだから堂々と!

 アルは嬉しくて物資を出すのに全力になるのだった。


 だけれど、こんな風に表だって出来るには、色々と理由があった。

 まず、閉鎖されていない国がルッチェロだったと言う事だ。

 異国で仕事をして、税を自国に払う事もせずにいいのだそうだ。

 もしも異国に出たとしても、今の国――ルザーリアにそれがばれた場合。

 税を支払うべしとなっているので、二重に税を支払わないといけない。

 そのためルザーリアから国外に出ていくものは居ないと言ってもいい。

 だから皆亡命すると言って出て来ているのだ。

 しかも他国ではないのだから今見つかろうと問題はないと来たものも、フライング亡命を決意するに足る根拠でも合ったのだろう。

 だから公爵と伯爵は、彼ら亡命者たちをかくまっているのだ。

 そして公爵と伯爵が独立をするときに、同時に独立するのが他の魔獣の森を領地に持つ者達だ。

 彼らはそこで独立し、最終的に公国にくっつく予定だ。

 そして一つの国家となる予定なのである。

 今の独立する予定の貴族は、皆侯爵に上がる予定である。

 とても楽しみな出来事だった。



 *****



 戻ってくると、皆教科書を写して楽しそうにしていた。

 教科書をまさか買ってくると思ってもみなかった様子。

 実際に大金貨が動いたわけで。

 5教科全て大金貨を支払えると思ってもいなかったらしいので、アル太っ腹と皆が有難いと嬉しそうに褒めてくれたのだった。


 教科書を写して、そして楽しく授業のための予習である。

 自宅で家庭教師を付けられている家ばかりなので、上手くすればテストから受けられて即座に終りになるかもしれない。

 そしたら自由時間だらけになる。

 一番遅い者が皆に奢りと言うことで、皆換金してきた銀貨を山のように抱え、絶対にこれを持ち帰ると豪語していた。


 因みにアルは換金をしていない。

 どうせまた、あらゆるところでこの金貨を使うのだからと言った所だし、それに考えてみればアルの場合はもしもルザーリアが無くなったとしても、ルザーリアの金貨をチャージに使えばいいだけだ。

 問題は全くないのである。


 アルはフローラと一緒に二人で自室に籠ると、そこで聖域に飛んだ。

 聖域では皆が楽し気にしていたため忘れていたが、村の住人にあることを頼んで頼みっぱなしになっていたのだ。

 うっかりしていたと話を聞きに言ったのだった。


 ガリ版印刷をここで頼んでいたのだ。

 教科書を今度は持っていくので、手蹟が美しい公爵夫人に頼んでこれから書いて貰おうとしている。

 教科書さえあれば、あちらでも問題なく勉強ができるのだから買っておいて損はない。

 さて、ガリ版印刷所はどうだろうと見に行くと、本が平たく山積みになっていた。


 作らせていたのは、物語と言うことで教科書になる物語だ。

 ピーターパン、シンデレラ、美女と野獣など、あらゆる童話を使っている。

 その童話をこちらでは教科書として流すのだ。

 そして地図などの教科書を今回買ってきたのだから、後はこれを使って新しい教科書を作ればいいだけだ。


「素敵ですわね。こうして物語が簡単に読めるようになるだなんて、本当に素敵ですわ」


「ええ、そうですよね。印刷が普通にできるようになって良かったです」


 五冊位の書籍を手に取り、書店に持ち込むことにしてみた。

 多くの人に教科書として使って貰いたいと希望しているからだ。

 今は毎月3種類の本しか出来ていないが、教科書を含め、今後は一気に数を増やしていくことだろう。


 最終的には

 童話だけではなく、絵本とかも入れられたらいいなと思う。

 絵を入れて、沢山の人に読んでもらうのである。

 と言うことで5冊ずつを回収してきて、アルはルッチェロの雑貨屋に持ち込むのだった。


 雑貨屋は本の買取していますを掲げていたため持ち込んだ。

 表紙を革の表紙をつけて、突貫作業で仕上げた書籍だ。

 どうだろうか?

 幾らで売れるかによって、今後異国に売りつけるか決めるつもりだ。

 どうだろう?

 安くても値が付けばいいのだが。


「これは、全く同じ本があるね、手蹟の乱れも本当にごく微量だ。いいだろう買おう。一つ金貨10枚だ」


「新品を持ってきたのにですか?」


「成程、手あかがついていないと言いたいのだね?では金貨15枚。これ以上は上げられない」


 小さな本で数ページしかない本と言うことで、そう言った値がついた。

 だけれど、フルカラーで印刷をしており、カラフルなイラストまで入っているから、高値だと言うのだ。

 成程、どうせここから値上がりするのだろうが、面白いからこのままでいいだろう。

 どうせ今回、輸送費はかかっていないのだからいい。

 ではそれで、アルは一冊につき、金貨15枚程稼いだのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る