ルッチェロ首都

幼年学校10歳~

勧誘

 アルはルッチェロの首都にやってきてから二週間。

 これで10歳になった、二桁だぞと嬉しそうだ。


 ここで最低限の魔法と、最低限のマナーを習うのだ。

 頑張ろう、そう決めたのだった。

 トゥエリにつけられていた一流の魔法使いは、アルに教えるようになってそのままアルが習うことになっていたが、結局トゥエリと比較する為一々うるさくて面倒だった。

 だから必死になって食らいついてやったのだ。

 結果トゥエリの覚えた魔法は全て三か月で履修出来、それ以上は他の魔法使いに習うことになった。

 今後は覚えていない魔法についてここで習えるときたもので、とても楽しみにしている。


 お陰で身体強化が得意となり、更には腕輪で強化?されたため毒無効で暗殺の心配もなしだ。


「身体強化魔法も得意になりましたし、馬より早く走れるようになりましたし、腕力もそこそこになりましたよね」


「貴族学校に行く予定でしたけれど、こちらに来れて良かったですわ」


 毎日王族に礼を尽くすが学業内容に入ってますの、有り得ませんわと不敬も極まれりな一言を申しているフローラ。

 王族に礼を尽くす意味が分かりません事よと言うのだ。

 分かる、気持ちわかるけどまだだろうから堪えてね。


 領地経営も学んだし、その補佐も学んだ。

 後は貴族の事を学ばないといけないのだから早くしなければならない。


「学校に言ってる間のサトウキビ畑とかが心配だけどね」


「そうですわね」


「なんだそれ?さとうきびばたけ?」


「砂糖を作ってるだろう?黒砂糖。あれを領地で作るための作物さ」


「俺、それ育てたい!」


 ジルクが言うので、アルは戻ったら伯爵に言って見ようと言う。

 だがジルクは作物を分けて貰えれば出来ないかと言うのだ。

 だからそれは違うとアルは言うと、付け加えて作物を育てていいかが問題だよと言うのだ。


「問題はあの砂糖だよってこと。 あの高い砂糖だからね、当然作っていいかどうか聞かないといけない」


「あ、そっか。公爵領に暫く居たから分からなくなってたな。あそこは結構値下がりしたけど、異国は高いからなってことか」


 じゃあ無理かもなあと言うジルクに、ミーンが交渉して見ないと分からないよと慰めたのだった。



 アルはサトウキビ畑を伯爵領に作り、砂糖の一大拠点を作り上げたのだ。

 更に公爵領には、聖域スキルの薬草園から取った種子を持ってきて、薬草の一台生産をすることにしたのである。

 因みにビニール温室を作って、胡椒もサトウキビ畑の脇で育てている。

 此方も8割が育つと言う順調ぶりだ。


 サトウキビ畑は総指揮をアルが取っていたため、そのアルが抜けるが大丈夫かと言った所だった。

 農業スキルでサクサク育てていたのだ。

 結論、自由時間など、齢七つの時にはもはやあるわけも無しとなっていた。

 そしてその年には行儀見習いに言っていたのだから相当過密スケジュールだった。


 因みに、サトウキビ畑を邸の敷地内に作り、そこで少量作り、それが黒砂糖になったのを受けて、一大事業にすべしとなった。

 それがアルの四歳の頃の話だ。

 七つになる前には伯爵から畑を与えられ、農民と共にサトウキビ畑を作ることになったのだ。

 と言ってもサトウキビ畑は改良種であるため、そうそう手がかかるわけもない。

 だから毎日水をくれてやればいい、それくらいの注意点だった。

 よくよく思えば四歳の頃の事をトゥエリが知っていれば今のような関係になっていなかったように思う。

 まあ、今更だろうが。


 兎に角公爵家に婿入りし、二つの領地を治めろと言われている。

 そして二つの領地の勉強をしている最中だったが、今後は貴族のマナーと魔法を学びに来たのだから、頭を切り替えないといけないと思う。


 しっかりしなければと頬を叩くと、アルは自室に決まった建物の一室に足を踏み入れた。



 *****



 入学金を支払い、事前に何日から通い出せばいいかを聞いてみると、事務受付の職員は、四週間後になると言う。

 ちょうどその時教師が通りかかったので、教科書を事前に欲しいと言った所、高いぞと眉を顰められる。


 そうか、全部この世界だと教科書は教師が持っていてそれを音読するのを板書するような世界何だと思った。

 だが引き下がらずアルは一冊ずつ教科書を金にものを言わせてふんだくってきたのだった。


 寮とする拠点に戻って来たら、そこでアルとノールは勉強する子供達に教科書を広げて講師となってやった。

 大体頭に入れられたところで、先ほどの教師と午後会うことになっているため、また学校に向かうことに。

 魔法学校は巨大だった。

 留学生まで受けるのだからその巨大さも分かるが、元からルッチェロの貴族が一同に会すことも出来るようになっているらしいと来ればその大きさも分かると言う物だった。


「それで?教師と話しがあるとは?」


「話があるのは私になります」


 そう言って通された一室で、席に座った教師の前に座るノール。

 伯爵家の人間であると唱えて、公国の件について話を切りだした。


「今度我が伯爵領は隣の公爵領と共に独立を果たします。それは一週間後に迫っていまして。その迫った一週間後の公国独立式に、参加することはできませんが、その代わり、その公国の新たに新設する魔法学校に此方の教師陣を迎えられないかと思い、お話をさせていただいております。申し訳ないのですが、余った魔法学校の教師の方などは居りませんでしょうか?来年から再来年までに連れて行きたいのですが」


「きゅ、急にそんな話しをされましても……」


 でも魅力はあると思う。


「給金は今こちらではどれほどを?」


「三か月で金貨一枚を」


「ならば給金を二か月で金貨一枚にしますと申しておいてくださいませんか?」


 こんなのは実際横やりだろう。

 だが、実際に魔法学校の教師が足りないのは事実だ。

 だから良いと言うわけでもないが、教師に給金を払うから来てくれと粉を駆けているだけに過ぎない。

 なのだからいいだろうと言う事だった。


「まあ、法律すれすれかもしれないけど」


 他国に連れ帰ってはならないとは来ていないだろうが、こっちの魔法学校の教師500人余りを本当は引き取って欲しいはずなのだ、この学校は。

 何故ならそんなに教師は必要ないからだ。


 だからどうですか?とそのことを告げて伝えてみた所、考えると話を持ち帰ってくれることになったのだった。


「父様、どうでしょう?付いてきてくれると良いですね」


「ああ、そうだ、ある。廃油を入れておいてくれないか、そろそろ我々はバスで帰るから」


「分かりました」


「一年間で幼年学校が終わります。なので付いてきたい方は此方でそれ相応のポストを用意しますと伝えておいてくれ」


「分かりました、父様」


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