首都へ

 少し待ってみよう、そう言ってアルは彼ら、出て行った二人を待つことにしたのだ。

 すると一週間後、二つ目の街にバスを奪った一人――ドーンが乗りあい馬車でやってきた。


 兵士たちと共に来たので、どうしたのだ、もう一人はと言えば、バスの場所に居ると言う。

 つまり彼らはバスをガス欠で動けなくして放置してきたのだ。

 呆れたと言えば御免と言う。

 兎も角マイクロバスを回収しなくてはならない。

 一度話を聞きながら戻ることにしたのだった。


「ごめん、ただ、僕らは足で纏い何かじゃないと言いたくて、つい無茶した。奪ったつもりなんか無くて、ただそれだけなんだ。許して欲しいとは言えないけど、御免なさい」


「ドーン………」


 一つ年上のドーンにそう謝られてしまえば、アルは許してやりたくなった。

 と言うよりも元からそんなに怒ってない。

 ただ置いて行かれてしまって、バスを奪われてしまっても、ガス欠でどこかで見られるはずだと思っていたからそれはいいのだ。

 それは皆も同じようで、ドーンの肩を全員で叩き、良いんだと言う。


「もう無茶すんなよ!」


「そうだぜ!」


「分かったか?」


「う、うん」


「ったく、にしてももう一人はどうしたんだろうなあ」


 気にしていないと言わんばかりの皆の態度に救われるものがあったのだろう、ドーンは感謝を捧げるのであった。


「有難う………」


 ドーンははにかむように微笑みを浮かべると、もう一人のバスを乗って行ってしまったエナの元に案内するのであった。





 エナはあのまま、自分達の食料で何とか食いつないでいたのではなく、元来た道を引き返している途中だった。

 置いて行かれて半日はそうしていたらしいが、仕方なく歩き出したのだそうだ。


 だからバスが現れた時それはもう驚いていた。

 何だ何だと兵士たちと共に大慌てで道を退く。

 するとバスの窓を開けて、アルが大丈夫?と声を掛けてくるのだ。

 何だか気が緩んでエナは泣きだしてしまったのだった。



 *****



 アルは言う。


「今度から言いたいことがあったら言うこと。分かった?気分悪くてもきちんと言う事。こんな大荷物何だから無理だろ? 皆分かってるんだから。今度こそ預かるからね」


「うん。有難うアル」


「どういたしまして」


 騎士団は全てノールの元に居る。

 ノールを守って全ての騎士は戻る予定だ。

 アルを護衛する騎士たちは、他領に行けないばかりか、他国に行けない。

 何故なら開戦が目的であるかと言われてしまうからだ。


 ノールは全員を連れてバスで戻る予定だが、そこに今度は兵士もくっついていけないかと言って兵士たちが交渉をしているらしい。

 それどころかここで余ってる教師を雇うつもりなのだから、もっと幅を取るだろうと思う。

 何故なら彼らは貴族だからだ。

 貴族ならば傍仕えの数名は連れて行くだろうから、兎も角人が足りぬだろうと言える。


 大型バスの二階建てバスを使えば行けるかなとアルは思った。

 ただし、それで行くとしたら大変な道があるから、ノールだとまだ危険だろう。

 細っこい道なのだ。

 下手をすればハンドルを切っただけで落ちる。

 と言うことで他の騎士にもバスの運転の仕方を学んでもらうのだった。

 こうすればマイクロバスを5台も出せば皆で帰れるだろうと思った。


「ひえ、何ですこれ、凄い遠くまで直ぐに行っちまう」


「こんな怖い乗り物だったのですね」


「人の傍に来たら速度を減速。 うん上手ですよ」


 速度をあげるところは50キロ位を出して、石畳を駆けると、三つめの街までついてしまった。

 人が居る場合は減速をし、馬車が要れば道を譲る。

 それでも何とかここまで来れたと思い、三つめの街に入るのだった。

 そこでここからは馬車で行くか?とノールが言う。

 妙に目を付けられかねないから首都でバスを連ねていくのはよそうと言うのだ。


 成程。


 分かったと伝えて一泊すると乗合馬車に乗っていくことに。

 乗合馬車が足りないため、自分達でも馬車を出していくことにした。

 馬は聖域を経由して連れてきた馬だ。

 馬車もそうなる。

 こうして首都にやってきたアル達は、本日から学び舎に通う間の寮を取ることになった。


「どうせなら一軒家にしましょう」


 そう言うミーンの希望が叶い、一軒家になった。


 洗濯女中を全員連れて来て、それの他にメイドたちも連れて来て、何とか体裁が整った形である。

 聖域経由で何でも届けられるため、人員不足で困る事は無かった。


「アル様さまですな」


 有難いとジルクとミーンが拝むのに合わせて、ドーンたちも拝むようにするのだ。

 それが照れくさくて居心地が悪くて、止めてくれと言うと、皆止めてくれたのだった。

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