ルッチェロへ向けてバスで進む


「さてと、バスを二台で全員行けますよね?」


「ああ、ノール父様が乗せて行ってやるからな。帰りは一台バスを持ち帰るが、いいだろう?」


「ええ、お願いします」


 使い捨てた油の使い道がバスへの給油となっている。

 その為綺麗な油以外は基本濾して使っているのである。

 排気ガスもほとんど出ないし、廃油様様である。


 ただし一度使ったキックスクーターなどに廃油を入れるのはしないで置いてある。

 途中から油を変えるのは良くないと思ったのだ。

 何となくだが当たっていそうだからそのままにしてある。

 だからキックスクーターだけはガソリンである。

 車も廃油だ。


 一週間程ほとんど野宿で過ごしたが、とはいえバス内に扉を設置して、聖域内で仮眠を取る為、疲れていることもない。

 洗濯も洗濯女中を頼んであるし、とても快適な旅だと言える。


 二週間目になると、進み方が異様に早いと皆気が付いた。

 狭い道路を通行するときは、全てマイクロバスに乗り換えて少し窮屈になって進むが、特に問題は無かった。

 アルとノールで進む道を、皆楽し気に歌いながら進む。


「所でアルは、家庭教師にどれだけ習ったんだ?あんまり習ってる暇無かったんじゃないか?」


「結構普通に習いましたよ。それこそ7歳から休みのたびに自領に戻れてましたし。そこで………」


「あ、それは羨ましいかも。俺等は戻れなかったから9歳になってから戻ってそこでだったからなあ」


「確かにそう言う感じだったなあ」


 ミーンもジルクも家庭教師に習う時間はそこまで多くなかったそうだ。

 ではあちらにたどり着いたら勉強を全員でしようと思う。

 ほとんど習った事の復習だから、勉強ではなくテスト漬けだと聞いている。

 だから良い家庭教師に習わないと勉強時間が出て来るのだとか。

 兎に角幼年学校を卒業したら戻らねばならないのだから、頑張るしかないと、アルは皆に言うのだった。


「たった一年で金貨10枚かあ、相当授業料高いよな」


「ですが、自国で受けたかったですか?授業」


「止してよ。魔法学校に通う為の訓練をするところで所あそこは。幼年学校を5年かけてやるような物だから、通う意味がないのよ。分かる?」


 言われていることを聞いて理解すると、途端にアルは不機嫌になる。

 何だそれは、それじゃあ――


「一年間にどれだけ支払っていくのですか?」


「確か金貨5枚。だからどっちかと言うとルッチェロの方が安いよ。一年だけどね」


 と言う。

 時は金成りだ、高い金額を支払って無駄に5年過ごさずすんだ事を祝おうと思った。



 *****



 本日の野営はせずに、ルッチェロの一番端の街についた。

 国境で少し揉めたけれど、ノールが居たから楽に進むことが出来た。

 矢張り貴族がきちんと後見人として付いてくれて出入りをするのは意味があるんだなと思う。


 こうして最初の街についたので、そこで一泊することになった。


 宿を取るのではなく、街の中にバスを入れてそこに半数が宿泊することになった。

 宿が足りなかったのである。

 その為どうしてもベッドで寝たいと言うノール達にベッドを譲り、アル達はマイクロバスを置いて、その中から聖域に旅立った。

 そこで洗濯女中に洗濯をお願いして、眠りについたのだった。


「聖域内に学校作った方が余程いいよな。危険人物は入れないし」


「そうだよね、神様が見ててくれるし」


 絶対いいよと言う子供達。

 それにアルは苦笑するだけにとどめた。

 それはアルが死んだあとを考えると困るのでやらないが、確かにいい方法だとは思う。


 結局アルに荷物を預けた子達は全員聖域で寝ることを――従者と共に――選んだが、荷物を預ける事をしなかった二人は、宿に泊まった。

 ノールも宿泊したが、それに対して何だか嫌な雰囲気だったと言うのだ。

 どういう事だろうか?


 ノール曰く。


「なんだか品定めされてる気がしたよ」


 と言う。

 だから言ったのだ。


「父様、品定め大いに結構じゃないですか。だって品定めしてくれなかったら、後からこちらについた不利益を被ったなどと言われてしまうかもしれません。何が彼らに取って不利益か分からないのですから。きちんと知った上で改めてこちらについてくれるなら分かります。それに、学業を無料にしたくて来たかっただけの可能性もありますから。それだとしたらまあ悲しいですけど、仕方のない事だと思いますよ」


「そうかなあ」


 そうかなあそうかなあと何度もノールは言っているが、言っていることは分かったため声は小さい。

 あの二人俺乗せる気ないぞと言って、ノールが拒否したため、アルが彼らの運転を買って出ることになったのだった。



 アルは兎に角皆を連れて無事に辿りつくことしか考えていなかったため、気が付けば二月の道程を、たったの四週間で辿りついていたのだった。

 流石にこれは皆凄いと言っていた。


 そしてこちらに好意的ではない二人も、やるじゃんと言っていたのだった。





 *****

 廃油は濾してリサイクル程度の知識しかないですが、良いなと思って出しました。

 90%程排気ガスの温室効果ガスの排出を削減するそうです。

 凄いなあー。

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