閑話24新造の街とトゥエリの行く末
閑話24
聖域内部、新造の街にて。
アルが沢山の家屋を新造し、戸建てを建てていくと、そこに皆で住んで貰えることになった。
木々で出来る家は、彼らにはなじみがあったらしい。
その為木の家の豪勢なものだと喜ばれたのである。
「ケント、有難うな。本当に」
「ケントとクロアが頑張ってくれたからだって聞いてるぞ。兄として誇らしいよ」
言われたケントとクロアは、領主一族を前に照れくさそうだ。
まだまだ彼らも成人してから数年しか経ってないと言うことで、子供なのだろう。
生き残った祖父母や父母、そして兄弟とその子に褒められて、嬉しそうだ。
だがアースだけは浮かない顔をしていた。
「どうしたんですか?」
「や、その………レスーチェも来れたら良かったのになと思った」
「そう、ですね」
矜持が無ければ来たのかもしれないが、彼らは彼らの矜持があり飢饉をも乗り越えていけると言う自負があった。
だから連れてこれなかったのだ。
「ちょくちょく行きましょう。食料を持って」
「そうだな」
それよりも1500人強の移民があっただけに、彼らは聖域でしばらく暮らして貰うことになった。
もう少し少なければ即座に暮らして貰えるだけの土地が与えられる予定だったそうだ。
だがそう言うわけにもいかないと言う。
彼らは昼間の間、開墾を手伝い、そして夕方になると聖域に戻ってくるを繰り返している。
王都となる予定の公国新市街地の傍に領地を貰えるとあって、彼らは頑張って働いてくれた。
けれどそんな彼らだが、矢張り大領地が来ていないと言うのは酷く不安にさせたようだった。
「本当に来てよかったのか?」
「だが、来なければ死んでいただろう………仕方ないとはいえ……」
彼らはしばらく問答していたが、途中で思考を放棄したようだった。
考えてもらちが明かないから。
ただ、これなかった者達があった、それだけ忘れないでおこうと言う事になったとのこと。
自然と彼らはそのことについて忘れて行くのだった。
*****
≪トゥエリ視点≫
何でどこもあたしを入れてくれないの?
お陰でボロボロになっていく。
男爵家の子なのに、何で、何で、何で。
いえ!
あたしは伯爵家のトゥエリ!
だからあたしに良くしておけば、かなりの厚遇をしてあげるって言ってるのにどうして誰もあたしの言葉を聞くことがないの!?
薄汚れていたってあたしは、あの伯爵家の子なのに!
どうして誰もあたしを見ようともしないで避けていくの!!
身体強化で手当たり次第ぶち壊して歩いていく。
街をまたも追い出されたのだ。
ただでさえ貧しくなっていくのに街の中を壊して回る厄介者めと言われる。
スキル所持か魔法不法所持だろう、手枷をと言われ、無理矢理大勢の大人の男たちがあたしを羽交い絞めしていく。
「いだあああ!あ゛にずんだああ」
「黙れ!危険人物め!」
手枷は自分では取れなかった。
自慢の身体強化で何もできない。
むかつく、むかつく、むかつく!!!
あたしは、トゥエリなのに!
選ばれた子なのに!
「あだじのなにがい゛げないってい゛う゛のぉお゛」
喉が嗄れて声が出ない。
ちくしょう、ちくしょう、あの時アルに呪印が付けられなかったのが悪かった。
恐らくあの日からあたしの世界が狂いだしたんだ。
アルが悪い、アルの所為、アルがいけないんだぁあああああああああ!
「こどじでやぐぅうう、ごどじでやぐううううう、げはっげぶっげふっ」
殺したい、絶対に許せないと近くの木々を蹴っ飛ばすけれど、いつもみたいにぶっ壊れない。
それがまた腹立たしくて苛立たしくて。
「あんだだぢなにじだっ」
「魔封じは成功したようだな。もう悪さを出来まい。地下牢にぶち込んでおけ。取り調べだ」
「ははっ!!」
そうしてあたしは地下牢に連れて行かれたのだった。
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