学校の準備をしましょう

 じゃあ行くねと言ったのは誰だったか。

 戻ってきたアル達は、魔法学園に入学するべく動き出した。

 ただし、自国の魔法学園を作っている最中だ。

 その初めての生徒になるために、1年程幼年学校を他国にて受講してくるように言われているのだ。

 その為荷を準備している最中と言うわけだった。

 ジルクやミーンもこちら側になったため、一緒に荷物を用意している。

 全てアル持ちの費用となっているが、後で白金貨で戻ってくるのだ、悪い話しじゃなかった。


 一緒に行く人数は7人。

 他に亡命予定の者とも途中で合流する予定となっている。


「ルッチェロかー、確か演劇がとても多いんだっけ?」


「それはマーダリ、その隣だな。でもその隣のマーダリには行かないから、行くのはルッチェロだから遊びに行くわけじゃないってのが良く分かるところだって言ってたよ」


「へえ。そうなんだ」


 マーダリに行くと遊びに来たと思われてあまり待遇は良くならないと言うから、ルッチェロだと言われた。

 それは分かるが皆興行を見に行きたいらしい。

 本当に分かってるのかな?とアルは思った。


 二月程かけてルッチェロまで行くわけだけれど、皆の入学金は必要ないらしいが、留学の際に1年分の費用を既に払い済みだったりする。

 一人10金貨だ。

 1000万相当の金額がかかるって相当だぞと思う。

 因みに大金貨は数千万からかかると考えると、控えめに言って10金貨だと1000万クラスの物が動いていると言うことになるわけで――相当な金額にアルはめまいがしてくるほどだった。


 全員分をアルが補てんして、新しい白金貨を大量にもらい受けるを繰り返した結果、現時点で新しい公国の白金貨が既に50枚を超えている。

 50億円である。

 とても嬉しい。


「じゃあ荷物は積んだから、後は食料物資を運び入れるために全員出して。私が持っていくから」


 そう言ってアルが全てを運ぶことになった。

 食料で持ち込まれたのは乾物が多い。

 当然だが全て沸かした湯で戻して食べるように塩に漬けて乾燥させたものばかりだ。

 これを全てアルが野菜、肉、パンと分けて保管することになった。

 アルはついでだからとコンソメやブイヨンを買っておいた。

 後はシチューのルウにカレーのルウ。

 シチューはブラウンとホワイトを用意した。

 楽しい遠足(2か月間)となるようにアルも頑張っているのである。


 さて、ここまで出来たら後は皆に替えの衣類を用意することを頼むだけだ。

 せめて2週間着回し出来るような物を用意してほしいと伝えると、弱小貴族にそんな金あるかとミーンとジルクが言うのだ。


「そんなお金あったら使うよ。食料とかに。2週間分何て服そんな持ってない」


「まあいいか。じゃあこっちで私が出しておくから、後で出世払いしてほしいかな」


「いい、ならいい、高いの欲しくねえよ」


「小銀貨2枚で服買えるよ?」


「うっそだろお前!?ほんとか!?」


「やっすい!じゃ、じゃあ小遣いで銀貨10枚何とか貰えたんだけど、これで安い着替えを2枚程見繕える?」


「勿論いいよ。これなんかどう?」


 アルと色違いのお揃いを用意して、身体に当ててみると、ミーンは殊の外喜んだ。


「いいよこれ良い!幾ら?」


「これは今回プレゼントするよ。こっちの公爵領から留学のために一人につき金貨1枚予備費で出てるんだ。だから大丈夫」


「うそ、マジ?有難いけどいいのかな?」


 ちょうど良かったと言ってアルは新造した金貨を配る。

 一人一枚配ると、皆自分達に一人一枚だなんて嘘みたいと嬉しそうだ。


「あっちで飲み食いするのにかかるからってことだけど、それは私の財布から出るからいいよ」


 私たちが旅立って直ぐに独立するらしいから、直ぐにこの硬貨が使えるようになるはずさと言うアル。

 そうだよねと新しい金貨を大事そうに皆胸に当てている。


 そこにフローラがやってきた。

 フローラも幼年学校に一緒に通うのだ。

 1年間同じ学び舎で学びましょうと嬉しそうにアルに言うフローラ。

 他の人を見ていないのかと思ってしまう程に、それはアルだけをひたすら見つめている。

 流石に照れて他にも人がいるからと言うと、あら私ったらと恥ずかしそうなフローラ。


 アルは基本的にフローラの荷物は全て預かっていた。

 他の人達も大きな1週間分のアタッシュケースを3つ程用意して、それにタグをつけてものを入れて貰うことにした。

 それを全てアルが預かるのだ。

 ただし、拒否された場合は自分で持ってもらうことになるが。


 ヨハネスの他に洗濯女中も一人連れて行くことにしたアル。

 フローラもそうだ。

 全て聖域内に衣類を干して毎日洗い替えした服を着こみさっぱりしたいという表れである。

 それを話したところ、ジルクとミーンも洗濯女中を連れて行くからお願いすると言うので、洗濯女中をどちらも新市街地で雇い入れ、使うことになったのだった。


 やっぱり汚い恰好のまま、ルッチェロに行きたいと思わないよねと思う。

 ただし、7名居るうちの参加者2名は、そうしたことは自分でやると言ってきかなかった。

 本当に大丈夫かな?

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