行き倒れ
エッフェモンテス領とルンダリア領は小領地と言って差し支えない。
先ほどのレスーチェ領は大領地だ。
だからこそ、抱えた民の数分無茶をしたのだろう。
食料を大量に買い込んで残ることを決めたのもそこにあるようだった。
扉はバスに固定してあるため、バスを移動していればあちらに行ける。
レスーチェ領はやはり大きなお世話だと言われてしまい、扉を閉じることになったのだ。
そのような聖域に等頼らずともやっていけると言われてしまい、アースも最後は納得していた。
彼らの道はもう、交わることが無いのだと知れたのだった。
「ここは酷いな……」
「ええ、ひどいです。ノール父様、右側少し寄った方がいいです。左に何か詰んであります」
「分かったよ。 なんだろうな、あれ?」
「ええ、あれ、何でしょうね?」
通り過ぎていくときに見ればいいかとスピードを少し落とすと、それがなんであるか見えてきた。
人、だった。
人が折り重なって死んでいるのだ。
恐らく盗賊にでも殺されたのだろう。
だが、だとしたらこの場で止まるのは危険だ。
盗賊出没地域と言うことになる。
バスのスピードを上げてその場を後にしたのだった。
「治安悪すぎ、どうしましょう。これじゃあ食料を渡してどうにかならなければ全ておいて行けと言われますよ」
最悪人質に取られたりするかも知れないから扉に入る準備だけはしておきましょうと言う。
皆その意見には賛成だったが、それでもルーレック島出身者達は交渉はさせてくれと言ってきた。
それはしておきたいとアルも考えているため、それも分かるから頷いた。
ノールが運転しているバス、皆バスの中で休むことに。
と言っても聖域内に新しい家を建てて休むことになるのだが。
これが矢鱈と快適で、もう通常の遠征は考えられないと皆に言われてしまうのだった。
今後も付いてきてくれと言われたが、その場合はアルが行く先についていくのが当然の帰結となるわけで――大変そうだなあとアルは言う。
だが、皆の生存率がこれで上がるのであればやぶさかではないのだった。
バスには鍵を全面にかけたし、防御の魔法を何重にもかけたから良いだろうと言うことで、アル達は農道まで言った所で一度休むことにした。
交代交代で車を走らせる。
その間皆アルの出した家で休むのだ。
何と贅沢な旅であろうか?
全員で休むこともできるが、バスを少しでも領地に近づけておきたい一心である。
ブロロロ、ブロロロ、エンジンをふかして進む。
一晩走った運転手は、途中で仮眠を取るためにノールに代わり、次にアルに代わった。
アースが次を運転し、ケントがその次、護衛兵も運転して見たいと言って運転することになった時は、三日目だった。
中々たどり着かないが、頑張るしかない。
ようやく辿りついた時には、エッフェモンテス領の人らしき人が道端で倒れているのを発見し、水を持って近づくことになった。
バスを降りて一人二人、警戒しながら近づいていく。
「大丈夫ですか?」
「うっ、う………」
「喉が張り付いて喋れないんじゃないかな?」
「そりゃ拙い。水を飲ませろ」
と言ってクロアが水を飲ませた。
アルが買っておいた六甲のおいしい天然水である。
アース達にも好評なので飲ませることにした。
水は合わない水だと大変だからと言ったら、だったらこれは良いけどこっちは駄目と言っていて――それが軟水だったのだ。
だから軟水は合ってると言うことで飲ませたところ、水を少しずつやっていたら、そのうち奪い取るようになり飲んでいく。
結果飲み水を貰ったものは女性だったのだが、有難いこんなに美味い水を飲んだのは久しぶりだと涙していた。
「水がここも出ないのですか?」
「ええ、井戸も干上がって、川も干上がって今ではちょろちょろよ」
それを奪い合っているのよと言われると、皆渋い顔をする。
何とも言えぬ居心地の悪さがあった。
抱き起こして水を飲ませている女性は、2リットルの水を飲み終えると、もうないと言わんばかりだ。
相当喉が渇いていたのだろうが、まさかあれを一気に飲み干してしまうだなんてと皆驚きに目を見張っている。
「あの、この空の入れ物、何ですか?頑丈で軽くて……貰っていいですか?」
「ええと、良いですけれど、どうされると?」
「これで今から水を汲んでくるんです。水くみをしている最中だったんですよ」
そう言われて近くに木のバケツが転がっているのが見えた。
あれか。
「クロア、そろそろエッフェモンテス領か?」
「そろそろだよ。だからこのまま物資搬入しちゃおう。それから彼女も連れて行ってしまおうよ」
「そうだな」
「済みません、今から食料を届けに来たのですが、水も届けますから、そちらに行きたいのですが道案内をして貰ってもよろしいですか?」
「え?ええ。 あ、それより私、有難うって言ってなかった。有難う御座いました。水美味しかったです。道案内をすればいいんですか?水だけ汲みたいんですが」
「いえ、ですから水もこちらに有るので届けます。見せればいいですか?先ほどの物がこれだけ山盛りあるんですよ」
「え………こんなに?」
クロアは大量にあるように見せるため、アルに物資を出して貰い、見せてみることに。
するとそれを驚いているが喜ばしい事だと思ってないのか、訝しんでいる様子。
「ええと、俺等は食料を届けに来た、領主の息子なんだ。だから領民を保護したいと思ってる。これでもおかしい?」
「いえ、そう言う事なら案内します」
アース達を先導にして、バスがゆっくりついていく。
あの鉄の箱は何ですかと問われたので、馬の要らない馬車のような物だと伝えると何だそれはと言った。
アルがバスを運転し、女性の後をゆっくりと付いていくと、段々と農村部が見えてきた。
家屋が点々とあり、そこに農地らしきものがある。
ただ、いずれも草木は生えておらず、枯れ草のような物が点々と生えているだけ。
「相当、拙い状況ですね」
「そうですね」
クレアに返された言葉に、アルは頷いて返す。
兎も角領主の館に案内して貰った。
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