港町にて
二艘の船に乗ったアル達一行。
ルーレック島にあるレスーチェ領、エッフェモンテス領、ルンダリア領に用がある。
彼らは今年どころか、ここ十年近く凶作が続いているらしく、領主たちの頑張りでもどうにもならない所に来ているのだとか。
だから何とかしてやりたいと言われて行くところだが、もしも行きたくないと言うものが居るならば無理に連れて行く必要等無いと思っているが、どうだろう?
果たして彼らは決意するのだろうか。
自領を捨てる覚悟を。
出来るのだろうか――?
アース達には流石に言えないが、自領を捨てる覚悟はかなり難しい類の話だと思っている。
アルからすると厳しいと言わざるを得ない。
だが、自分の生まれ育った地を捨ててでも来たいと言う、覚悟があると言うのであれば、連れてきてあげたいのだ。
所でなんでヤマハで船なのだろう?
音楽の楽器の会社だったように思うのだけれどと、自由貿易を開いている間に到着した。
やっぱりピアノの会社だとアルは一人ごちる。
いや、ピアノ以外に船も作ってるって事だろうけれど、凄いなヤマハ。
因みに運転手はノールだった。
王女であるクレアは運転が上手い方だが今回は皆に譲ったらしい。
アースが途中まで運転してきていたらしく、クレアと楽し気に談笑していた。
人目につかない所で下りて、港町には門番の居る門から入る形で良いだろう。
ここで情報収集だと言う事である。
そして馬車を借りて、領地を三か所回るのである。
商業ギルドに言ってみると、そこには食料不足の文字があった。
試しにと言われていたが、ここでも小麦を大量に置いて行った方がよさそうだ。
小麦粉を大量におろして来るために、馬車を欲しいと言っておいた。
空間魔法が使えると言っておいたので、大量に小麦粉を下ろそうが特段の問題は無い様子。
「有難う御座います、有難う御座います!」
格安でしか仕入れられないと言われたので、安く卸してあげたらとてもよろこばれた。
と言っても自由貿易で購入する金額の三倍で売れたので別にこちらは困っても居ないのだが。
「ですけれど、どうしてこんなに小麦を売り歩いているのですか?お客様は異国の方。この国の窮状を憂いているわけではありませんでしょう?」
商業ギルドのギルド員からそう言われたが、アースとケントが言うのだ。
俺達がいるからだよと。
「俺達はこの国の出身でね。それを話したら食料を分けてくれると言うことになったんだ。金額は最低限貰ってくることになっているけれど、ね。だから船を出してここまで来たんだよ。俺達はルーレック島出身で、レスーチェ領とエッフェモンテス領とルンダリア領に用事がある。そこは今どんな様子だろうか?」
「………心して聞いていただきたいのですが、その三か所は、ほとんど今、貧困ではなく、飢饉からの餓死者が出ています。お金があっても物資が無いのです。ですからこの小麦は貴重です。有難う御座います」
「そうですか。では………領主たちはどうされていますか?この状態を良しとしているわけじゃないのでしょう?」
「ええ……領主さまは今、どこも手一杯なので、王に税を下げるように言ったそうですが、王都も今大変な状況でして………」
アースが物言いたげにこちらを見やる。
だがあえて首を横にふり、三か所の領地だけだと言ったのだった。
「では、御三方の出身地に寄りに行かれるのですね。その途中の村などもなるべくでしたら寄って言ってほしいです。小麦にまだ余裕があるならばなのですけれど」
「余裕はありますから寄らせていただきます。途中の村や街にもね」
さ、行きましょうと言ってアルは門を出て行った。
馬車を借りようと思ったが、馬に食わせるエサも無いと言われて、もう潰されてしまったという。
この港町も最終的に寄って言った方がいいかもしれないが、そこまでしてやることが許されるのか分からない。
ノールに聞いて見れば、連絡用の魔法を使おうと言う事だった。
もしくは聖域内で会えばいい。
そこで話をすればいいのだと言う。
兎も角と言って、アルは門から外に出て、歩くことになった。
少し言って門から姿が見えなくなったら、アルは自由貿易を開くから待っているように言う。
「今からちょっと召喚しますから、それに物理防御を高くする魔術を行使してくれませんか?」
「いいが、何を用意するんだい?」
「馬で引かない馬車をちょっと」
護衛の騎士たちが「あのばいくと言う物ですか?」と言うが、もっと大きいものだと言うと皆そわそわしだした。
船も今回アイテムBOXに突っ込んできたけれど、あれと似たようなサイズだよと言えば分かったらしい。
運転が楽しいだろうなあと言う皆に、苦笑してしまう。
運転させるとはまだ行ってないのだが………
バスを用意したアルは、皆に後ろから乗って貰う。
30名乗れるバスなところ、18名できているから、結構ゆったり座れている。
ノールが気になったようで、運転席に乗りたがっているが、運転の仕方を教えるからと言って今回は駄目と言ったら、シュンと項垂れていた。
余程楽しみだったのだろう。
だから運転席の近くの席に座らせて、動かし方を学ばせることにしたのだった。
エンジン音を響かせるために、ガソリンをタンクいっぱいに詰め込んだら、アルは走行を開始した。
「えーと、道案内よろしくお願いしますね」
「ああ、分かってるよアル君」
「では御三方の通った道を行きましょう、どちらに?」
「そのまま真っ直ぐ北に走ってくれ。大きな街が見えてくるまで行こう」
ブロロロロン、ブロロロロン。
バスは一路レスーチェ領を目指すことになったのだった。
*****
実際に馬は居たけれど、貸して戻ってこないんじゃないかと思って貸して貰えなかったんです。
盗賊が出る世の中になってしまったので。
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