人魚の海で

 伯爵とノールに連れられ、エッツェンフェルトの部下となった三人が付いてきている。

 アルは三人――アース、クロア、ケントと共に、これから伯爵領の騎士と共に船に乗っていく。

 勿論、船はアルが用意することになっている。


『あ、船は私が白金と金で購入するので、ガソリンで移動します』


 と言うと、公爵は船も買えるのか、あの自由貿易はと馬鹿みたいに大口を開けてぽかんとしていた。

 伯爵はガソリンと言うものが、キックスクーターを動かすのに必要なものであると知っているので、何も言わない。

 公爵は自分だけが驚いているようで何だか気に食わないらしく、アルと伯爵に何で驚かないんだと言う。

 船の事は言ってないけれど、ガソリンは知っているから早く動けるマシンですよと言えば、幾分かむっとした様子だった。

 自分だけ知らなかったのが嫌だったのだろうが、何故むっとするのか分からないアルは、兎も角一度騎士団10名と、アース達とノールとで人魚の街に行くことになった。

 そこで船を買い、海に浮かべてみるのだ。

 そこで一度全員が乗れるかどうかを検証してみると言う事である。

 船に乗って吐かなければいいのだが――アルは自分が大丈夫かそもそも論そこが問題だと考えていたのだった。




 白金と、ミスリル鉱山から採れた鉱石をまず自由貿易に突っ込むと、とんでもない金額が飛び出した。

 120億、たったの一塊ずつでこれである。

 追加で金塊を三つ四つ突っ込むと、船を購入できる画面を呼び出した。

 中古ショップでいいかな、それとも新品がいいかなと思っていると、中古ショップが一番最初に飛び込んできた。

 そこには商談中の文字と共に、漁船が掲載されている。

 成程こんな感じかあと思いながら画面をめくっていく。

 すると目に飛び込んできたのは、大きなクルーザー。

 20人乗りと書かれているモノを探すが、人数までは書かれていなかった。


 中古の船だからかな?


 中には宿泊用のベッドルームもある豪華仕様だ。

 だが――ベッドの数、足りないなとアルはムウと考え込む。

 ここまでで5000万円だ。

 もっと高いと思っていたのでチャージした金額分は調べてみようと、調べることにした。


「………もうこれあれだ、20人くらい乗れる船で検索しても出てこないから、クルーズ船を買った方がいいや」


 そう言ってアルは地球一周旅行などで使うクルーズ船を調べることに。

 そこから船の会社を調べるのだ。

 ぺチぺチと探してみて、15人乗りでヤマハのオープンタイプの船を見つけたアルは、これでいいと二艘購入することにするのだった。


「――これでも1億しか使ってないな。チャージするのやり過ぎたかも」


 現状200億近くチャージされているため、何に使うのだと言う事なのだが――まあ、やってしまったものは仕方ない。

 アルは開き直ることにしたのだった。


「どうせ後でチャージするだろうし、気にしないで使おう。 後はこの船にお金を入れておいて。皆であちらに船旅が出来るようにここの人魚の海で練習になりますよ!頑張りましょう!」


 さあ、船に乗りましょうと、人魚の海の上に浮かべた船に、ロープを投げて手繰り寄せ乍らアルが言うと、アースがこれは何なのだと聞いてきた。

 何って、ただの船ですが、

 ちょっとロイヤル的に豪華仕様な船で、座るところが15人分あるものだけども。

 何か気に食わなかったのかなと思い首を傾げるような真似をすれば、アースだけではなくケントまで言ってくるのだ。


「あの、アル様?これ、本当に船なのですか?」


「船だけど。何で?変かな?」


「変と言うか、おかしいというか、帆がありません」


「ああ、そういうことかあ」


 言っていることの意味がようやく通じたらしいアルは、ロープを騎士に持たせて船に階段を取り付ける。

 そして上に乗ると、ガソリンを給油していくのだった。


「これはガソリンと言う油を大量に使うことで、帆が無くても自ら水をかき分け、走行することが出来るようになる船なんです。ですから大丈夫ですよ」


 そう言いながら、アルは走行するためにノールとアース達三人を乗せ、出発する。

 何となくだが運転マニュアルを読めば運転出来た。

 勿論免許何て持ってません。

 異世界だもの文句は出ないでしょう。

 とりあえず、転覆しそうになった時ようにと、全員にライフジャケットを着せておく。

 最初から膨らんでいるものを用意したので、もしも転覆して落っこちても大丈夫だろう。


「海には魔獣っていますか?」


「いませんよ。潮風が嫌いとか、水が嫌いとか言われてますね」


「へえ、それなら安心ですね。今度釣りも行きましょう。これなら沖合まで出れるはずですから」


 皆怖がってその言葉には頷いてくれなかった。

 何でや、私の運転の何が気に食わないと言うんや。


 ノールに運転を覚えさせ、アースに覚えさせ、クロアに覚えさせ、ケントに覚えさせとやったら、今度は騎士たちを乗せて沖合に出てみることにした。

 ライフジャケットをこちらにも着せて、重い甲冑を脱がせることにした。

 勿論預かっておくから脱いで、水に沈むからねと言ったら速攻で脱いでくれた。

 潮風に当たってさび付いてしまうのも嫌だったらしい。

 分かる。



 全員が乗り方を学んだら、今度は泳ぐ練習もすることになった。

 ライフジャケットを着ていて転覆した場合は、もう一艘に皆乗るようにとのこと。

 とりあえず、ノールとアル、そして騎士団を5人で一艘に。

 もう一艘にはアース、クロア、ケントと騎士団を5人乗せて行くことになった。

 兎に角一艘で行けなくはないが、窮屈なため二艘に別れることになったのだった。


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