閑話22アルと天動説地動説

 アルは電気をまず得ようと言うことで、領主の館の屋根に大量に、太陽光パネルを取り付けた。

 人に頼んでもどうやっていいかわからないだろうから、自分で空を浮いてやったのだ。

 今はまだ身体が軽いから何て事の無い作業だが、そのうち身体が重くなると重くて中々動かせない人も出て来るのだそうで。

 そんな話を聞いたけれど、公爵も伯爵も、空を浮くのに困っていないのを見て、眉唾でしょとそう思うのだった。


 パソコンがあった方が便利だと言うことで、一台パソコンを購入した。

 そしてそれを太陽光パネルと接続して、エクセルを起動する。

 現在の収益などを書き記していく。

 収支報告書である。

 ぱっぱと作っていって、アルはこれを伯爵に提出するつもりなのである。

 紙に定規で書くのに、鉛筆では駄目だと言われたからこうなっている。

 アルはちまちまとエクセルと向き合ってこれを作っていくのであった。


 ホームボタンをおして、シャットダウンをクリックする。

 そこで否定的な言葉が飛び込んでくるのだった。


 何だ?と思えば、エッツェンフェルトだった。

 エッツェンフェルトがフローラに否定的に言われていた。

 なぜだろう、ではなく、教師に対してなにを言ってるんだフローラは。


 慌てて二人の間に滑り込むと、エッツェンフェルトが違うのですと言う。


「違わないでしょう!?何してるんですかっ」


「天動説が正しいと言われて……そのう……お互いに熱くなってしまったんだよなあ」


 そう言うエッツェンフェルトは、罰が悪そうだった。


「と、とと、兎に角不動であるのです!大地は動きませんもの!」


「うーんまいったな」


 答えを知っている身としては、いってしまった方がいいだろうが、やはりそこは言わない方がいいのだろう。

 男神の反応を見る限りそう言う事だと思うし――


 とりあえず、言えないけれど、言えないけれど!!


「フローラ………天体望遠鏡、公爵に渡してあるから、使って見てください」


「え?え、それってもしかして、アル様も地動説をおしていますの!?」


「おっ、少年俺と同じかあ?いやあ、嬉しいなあ」


「ですがっ、アル様。よく考えてくださいませ!教会の教えでも天動説が当たり前と言われておりますのよ?大地は不動である、これは神の教えであると言われておりますわ!何でしたら、それこそ神に尋ねてみてもいいのですわ!」


 男神に聞いてくれと言われて困惑するアル。

 だってそんなことしたら――絶対にフローラ傷つくよ?

 いいのか?と焦るアル。


 だがそんな時に限って男神は問いかけに答えないのだった。


「そういう時は、やっぱり聖域の教会ですわ!行きましょう!」


 ――と言うことで、アルはフローラに言われて聖域内の教会にやってきたのだった。


「エッツェンフェルト先生もついてきてくれてありがとうございます。迷惑だったでしょうか?」


「ここは………迷惑と言う事はないのですが、これは一体?」


「これは私のスキルで、聖域と言うスキルです」


「アル様は神の御使いなんですの。神の聖域を賜った使徒さまですわ!」


「何でそう言ってしまうかな……」


 困ったことに妙に敬われたら困るため、変な言い方をしてほしくなかったが、フローラが大きく出てしまったため、仕方なくそう言うことになってますとアルが告げた。


 するとエッツェンフェルトが言うのだ。


「では!知りたいことを答えてくれる神を呼びだせるということなのですね!だからここにやってきたのですね!」


「盛り上がるよねえ。そんな中だから仕方なく呼び出しますけど、大丈夫かなあ」


 アルは祭壇に向かって手を合わせる。

 勿論供物を捧げるために、自由貿易を開いている。


『あ、今日はねえ、ネットスーパーで惣菜が食べてみたいの。揚げ物とか知らない調理法の物がいいのよお』


 誰だか知らない声がするので、アルではなく、エッツェンフェルトが驚いていた。


「だだだだ、誰ですか!?どこから声が!?」


「これが神からの声ですの!……ですが聞いたことの無い声ですわね」


 と言う。

 確かに今まで聞いたことの無い声である。

 その為アルは固まっていた。

 声が実はオネエなのである。

 そのためアルは「誰!?」と固まっていたのである。


 自由貿易で惣菜を用意していく。

 ハムカツ、豚カツ、鳥カツ、芋フライにポテトフライ、串物の詰め合わせを入れてみる。

 中華で蒸し餃子から始まって、小籠包に焼売を買ったら、肉まんを祭壇に乗せて冷める前に一度祈りを捧げる。

 すると捧げられた供物が光と共に消えて行った。


『おおお………これは素晴らしいですね。料理の革命です』


「喜んでいただけて良かったです。それで――聞きたいのが天動説と地動説、どちらが正しいかフローラが聞くのですが……どうしたらいいでしょうか?答えてもいいのですか?」


『それについては以前伝えた通り、自分で色々と考えてどちらであるか考えて欲しいのですよね。ですから答えられるものではないのです』


 けれどこれにフローラが言うのだ、答えてくれないと困ると。


「お願いしますわ!私は天動説を神がもたらしたという言葉を聞いて育ちましたもの。ですからそれは真実なのでしょう?」


『それであれば答えられます。我々神神は、大地が不動であるとは伝えておりません』


「そんな………」


 フローラが膝から崩れ落ちるのを見て、アルは顔を覆った。

 兎も角フローラを抱きとめて何とか落ち着かせるけれど、フローラは神の教えだと信じて天動説をおしていたのだ。

 だから今は自分の信じていた事実が崩れたようなくらいの衝撃を受けているのだろうと思う。


「私はエッツェンフェルトと申します。 神よ、男神よ。私は知りたい!星は何故動くのかと。太陽は何故動くのかと。けれどそれを研究結果発表した途端あらゆる国から追われる身になりました。だからせめて知りたいのです」


『それはあなたが自身で見つけることです。あなたは一石を投じた。それには意味があったのです。考えなさい、知りなさい。あらゆることを』


 それでは意味がないと言うエッツェンフェルトに、アルは悔しいだろうなと思った。

 彼はここについてきて、天動説の証明はないことを知った。

 けれど宇宙に行く手立てがない以上、この世界で地動説を知るすべは酷く難しかった。

 占星術で大地と太陽の関係を証明して見せるのは可能であるかということだが、アルにはとてもじゃないが可能だとは思えなかったのだ。


 たとえ昔の人がそうだったと証明して見せたのだとしても、やっぱり肉眼で確認するまでは………そう思うよ。


 悔しいだろうなとアルは一人ごちるのだった。



*****



「エッツェンフェルト先生、あまり気を落とさないでくださいね」


「何がだ?」


「いや、その………今日は教えて貰えなかったから気落ちしていませんかって思って」


 頬をぽりぽりと書いて罰が悪そうに言えば、エッツェンフェルト教師は言うのだ。


「むしろ助かったって思ってる!だって神の言葉を聞けて、天動説に根拠などないと分かったからだ!だから、これからは地動説を目いっぱい唱えて行くことにする。私がそれを推進していく」


「そうですか………であれば、何か必要な事はありませんか!私がお手伝いします!出来る限り手伝います!!」


 するとエッツェンフェルトは言うのだ。


「私の書物を読んだ者は皆この地にやってくるだろう。だからそれを受け入れて欲しいとは思うが、それだけだよ」


「それくらいなら、伯爵には言っておきます。公爵にも、フローラ、いいだろう?」


「え?ええ………そうですわね。私も神を言い訳にせず、自身で見たものを持って証明して見せようと思います。その為であればそれもいいでしょう。父には言っておきますから」


「ああ、よろしくな!」


 こうしてエッツェンフェルトの元には彼を慕うものが教師の地位につけると合ってやってきた。

 故郷を捨ててやってきた彼らに、貴族の地位を与え、法衣貴族とすることを約束するのであった。



*****


エッツェンフェルトは、カクヨム様のサポーター様限定記事から登場になります。

特に登場してお終いの状態だったのですが、その後復活でこちらに出てきます。

一般公開用と、サポーター様記事どちらもif話しではなく、繋がってます。

サポーター様限定記事ですが、暫くは一般公開しません。

そのうちアップするかと思いますので、お待ちいただければと思います。

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