貴族編8歳~
閑話16牛乳だいちゅきー
アル8歳。
8歳になったのだから、手足も大分伸びた。
当然だがその年齢であれば130センチ程度の身長はあるだろう。
周囲の大人たちは背はそこそこ高いと思う。
170センチが平均で、一番背が高くて185センチくらいだろうと思われる。
自分もせめて平均は行きたくて、必死になって牛乳をアルは飲むのだった。
「アル様、いつも牛乳を飲むのですけれど、目指せ170センチとは何がですの?」
「身長です!フローラより身長が高くなりたいのです!」
女性の方が早く成長するため、アルは今、身長を抜かれっぱなしである。
その為フローラより早く成長するため、必死にアルは牛乳を飲んでいるのであった。
だが、何故かアルは身長が伸びにくいのか、伸びなかった。
何でだろう?
「フローラ、何で私は身長が伸びないのでしょうか?牛乳飲んでますのに変ですよね」
何気ない会話のつもりだったアル。
けれどそれは途轍もない爆弾を孕んでいた。
「それは魔力過多症ではないかしら?魔力が多いと成長が遅れると言いますわ。ですからそう言う方は、大人になっても背が低いと聞きます。それではないでしょうか」
「まんまそれやんけ。 じゃなくて!!嘘でしょう?!」
本当ですよと言われ、アルは凹む。
フローラの言だから信じたいけれど信じたくなかったアルは、そのまま伯爵の元へトンボ返りしたのだった。
「お義父様!!お話があります!」
「何だい何だい、どうかしたのかね?」
書類仕事をしている最中の伯爵に、アルは訊ねた。
それも捲し立てると言ったくらいに、全力で。
「私、身長伸びなくなるのですか?!あんまりです、私は身長を伸ばしたいのに!!」
「それは……どういうことかね?一応前よりもアルは身長が伸びているよ。ほら、私の前はここだっただろう?」
そう言って自分の座っている豪奢な机に招くと、自分の太腿を指す。
今は骨盤のあたりから上に頭が来るようになったと言って、身長が大きくなってきているというのだ。
だが、そんなもの、先ほどのインパクトのある話で吹き飛んでしまっている。
魔力過多症についてだが、一体どういうことなのだろうか?
アルは話しを聞くことにしたのだった。
「魔力過多症って何ですか?」
「魔力の多い者が大人になっても成長がゆっくりなため成長を続ける、だったか? それのことだな」
何だ、成長は止まるわけじゃないんだなと知って、アルは少しだけほっとした。
だけれども身長が低い事は確かなのだし、それは困るとアルは言う。
「何が困る?身長が伸びるのが遅いくらいだろう?まだこれくらいかお前は」
そう言って、大体1Mを指して笑う伯爵に、アルはしょんぼりとしてしまう。
一応もうちょっとあります、そう言いたかったが、背伸びして120㎝程度なのである。
伸びたいのに、伸びるまで時間がかかるなんて、そんなの無いよ、そう思った。
それからのアルは何をやるにもぼうっとしていた。
伯爵領では紙を作り始める話しになるのは遅くなりそうだった。
なので公爵領で少しだけ金貨銀貨と共に作れるだけの和紙作成キットを渡してやって貰うことに。
原料は自分達で探して貰うことにして、伯爵領に引きこもっていた。
何だかもう、色々とやる気が出ない。
そんな折、フローラがアルを訪ねてやってきた。
「アル様、最近落ち込まれていると聞いたのですが、如何なさったのですか?」
「やる気が無いだけです。大丈夫ですもう少しばかり経ったらまた元に戻りますから」
「とはいう物の、やる気がないのはどういう了見だ?」
ん?と、フローラの父である、公爵がやってきて言うのであった。
「身長が伸びないと聞いて、魔力過多症と聞いて、私は今とてもやる気を失くしています」
「だろうなあ、金貨銀貨と一緒と言ってた紙作りを、御前から投げ出しているんだ、相当だろ?」
「ですがやる気が無さすぎてどうしたらいいかわかりません」
「はあ……、実は俺も魔力過多症だったんだが、毎日魔力を使い切って死んだように寝ていたら大分マシになったんだよって教えに来たんだわ。お前も同じことやってみろよ。 あれは魔力が身体に溜まってる時間身体の成長を遅らせるようだから、どうせだから毎晩使い切って寝ればいい」
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