閑話9錬金スキルを使いましょう★
閑話9
錬金スキルを用いて、回復薬を作っていくことにしたのだが、薬草たちを全て綺麗に洗って泥汚れを落としていく。
それが完了したら、破砕、粉砕を行い、妖精の泉の水で攪拌、そして薬効抽出をして、完成だ。
回復薬と万能薬、毒消しを作った。
秘薬は完成するまでに二日かかるので、そのまま一旦日干ししてあるリーファの薬草のチェックである。
これを今度は薬師の混ぜ棒で混ぜるのだ。
鍋の中でぐるぐるとね。
これを作って商会に下ろしていると、仕事をしているという実感をする。
これまでは同じ錬金スキルを持っているステータス持ちの貴族に、薬草をおろしていたが、それもこちらで錬金して良いと言われるまでのことだった。
トゥエリが居なくなったのと、後は公爵家で大々的に薬草園を開くことになったが故、大々的に作ってもいいと太鼓判を押されたのである。
アルが大量に回復薬を販売したとしても、伯爵家で誰かスキル持ちを抱えているのだろうとしか思われないという事だ。
だからアルは商会で大量に伯爵名義で回復薬その他薬剤を下すことにしている。
ついでだから定期的に毒消しも自分で生成し、妖精の泉の水も購入しては定期的に公爵や伯爵に献上していた。
そんなある日のことだった、ようやく消費ポイントが一定数を越えたようで、人魚の宿屋というところが出来たのだ。
水底で宿泊が出来る宿屋さん。
何とも風雅である。
≪人魚の宿屋≫
:全回復する居室 魔力100,000
:湖のほとりの森の薬草園 魔力100,000
:人魚の街 魔力300,000
:人魚の城 魔力500,000
≪人魚の宿屋のショップ≫
:人魚の涙 善行100,000
:人魚のうろこ 善行500
:人魚の水晶 善行1,500
そしてここで、街を作ることが出来ると知って、アルは興奮を隠しきれなかった。
だがそこで気が付きもしたのだ。
あれ?もしかしてこれって、人魚が居るのでは?
ではなく、人魚の街という事は、亜人もいるという事ではないだろうか、と。
「亜人っているんですか?」
「なんだねアル、どうした」
「あじんとはなんだね?」
公爵と伯爵に聞いてみると、あじんとは何だ?と返ってきた。
「獣人とかです。居るんですか?人ではないけれどなー、っていう人種の方方が」
紙を用意し、描いてみる。
頭に耳を生やす人や、人魚、そして羽を生やした天翼族とかいるのかなと言う事だ。
ゲームで見た事がある程度だから、銅貨と思ったけれど、居るのであればあってみたい。
「ああ、居るには居るが、我らの国にはおらんな。居たとしても奴隷だ。他国から買ってきた奴隷だろうなあ」
「獣人ってのだけはいるね。獣交じりって呼ばれているけれどね」
伯爵が言う。
ええええ、じゃあ迎えに行かないとと言って、人魚の街を作るためにアルは駆けだしたくてうずうずし始めた。
「では、その人間以外の奴隷を買いに行きましょう。新しい街が出来たのです」
「本当かね。そこは街に人は居ないのかね?一応確認はしておくれよ」
「確認をしてまいりました、特に人魚以外居ませんでした」
「に、人魚!?」
人魚も居たかと思えばこれは精霊とか妖精に近い種らしく、人種ではないと言われた。
だから物語上の生物であると言われたのである。
だけれど居るには居るのだからいいじゃないかそれで。
そんなこんなで街に出向いたところ、亜人が26人程居たので買ってくることになった。
以前は伯爵が気をきかせて、人間種を買ってきたらしい。
そのため前回までの奴隷購入では、獣人種はいなかったらしいと知った。
けれど買ったはいいが、彼らは何か勘違いしているようで――主であるアルと伯爵に、国外に逃がしてくれというのである。
一応ここを見てからにして貰えますかと言ってみたが、なぜアルが悪者のように言われないといけないのだろう。
奴隷になっているから買ってきて、そして生活をして貰える場所を提供しようというのに、どうしてそんなことを悲痛そうに言われないといけないのか分からない。
何か彼らは勘違いしていないか?と思う。
だが、他国の人だと言うし、もしかしたらそちらでは奴隷と言うものは居ないから分からないのかもしれないと考えた。
男――死者を扱う神がいつも通り「神の御使いです」と案内していれると、神の使徒が自分達を救いに来てくれたと泣いて喜ぶものと、全く信じられないと言ったものと、そして嘘を吐くなという者の三者三様の様相を披露してくれた。
何と言うか、ノールがこれでもまだマシな方の奴を連れてきたというが、これはもうすぐにでも放逐してしまった方がいいように思う。
「解放してもいいですが、ここで神に祈りを捧げて行ってください」
「なぜそんなことをせねばならぬ!我々を助けてくれぬ神など知らぬ!もう解放してくれ!」
「あのですね、一つ言いますと、私はあなた方を買いました。分かりますか?あなた方は奴隷です。これも分かりますか?なぜあなた方が私に威張り散らすのでしょうか?」
おかしいですよね?と怒りをこらえて言えば、皆黙るわけでもなくぎゃいぎゃいと吠えるばかりで話を聞こうともしなかった。
こんなの奴隷としては必要ないと思ったが、折角金をかけて買ったのだからと、言うことで、彼らにはここで数年暮らして貰えればいいと伝えたが、それも大ブーイングだった。
もういい、要らない。
――我慢の限界だった。
だから奴隷解放にはこれだけのお金がかかると伝えて、借金をさせて彼らを奴隷から解放した。
直ぐに奴隷に戻っても知ったこっちゃない。
3人程まともな人が残ったが、それは彼らが手足を欠損しているからの様子が見て取れる。
「手足がないんですね。因みに何があってそうなりましたか?」
「人を助けようとして」
「魔獣に食われました」
「私は………戦争で」
ノール曰く、それらの述べた理由は往々にして正解らしいので、全て秘薬を使って、手足を生やしていった。
秘薬――それは今現在公爵領でも量産が勧められている薬草でしか作れない回復薬の凄い版だ。
つまり、体調を戻すのが回復薬で、手足の欠損などを回復するのが秘薬である。
綺麗に治った手足を抱え、三人は泣いていた。
所で「ここで働いてくれるか、それとも伯爵家で働いてくれるか?」と言えば、彼らは解放を矢張り願ったので、金貨を借金して返すか、それともここでその年数分働くかどちらかです。
不自由はさせないと誓いますと言ってアルは三人にゆだねることにした。
「ここで1金貨だったら1年分に相当します。それでもいいですか?」
実際に彼らの給与で計算したところ、年給で考えればいいかと思ったのだが、1金貨は1年間に相当したのだ。
だから一人3金貨から10金貨前後だったため、10年くらい働く人も居たが解放されるためにそれくらいならするという。
こうして奴隷が3人増えたのだった。
公爵の元に言って、秘薬の効能を伝えると、1本1白金貨でいいだろうとのことだった。
つまりは1億以上の値を付けていると言う事だろうが、国家でやり取りするような品だろうと言う。
とんでもない額になるけれどそれじゃあ売れませんよと言うと、ちょっと考えがあると言う。
因みに薬師というスキルもあるが、それだと秘薬は作れない様子。
そのためスキル錬金とスキル薬師を公爵は雇っているという。
伯爵は錬金が跡取りだからいいよなと言われて苦笑してしまった。
相当高額で雇っているらしいのだ。
その割に公爵閣下のところから回復薬が出回らないので何故か聞いてみたところ、王宮に直に下ろしているため無いのだそうだ。
成程。
「アルは商会で貴族向けに売ってるだろう?それを止めれば王宮取引にってなるだろうから止めておけよ」
「何でです?きっと高いんでしょう?」
王城だけに。
と思ったら違うらしい。
「逆だ。阿呆。買いたたかれるし、その上数を揃えろと文句を言われる面倒なことこの上ないぞ?」
「ならなぜそちらだけおろして居るのですか?」
「国王と俺は親戚だからだな。だからきちんとやることをやっておかないといけない。面倒な間柄だという事だ」
分かるかと言われ眉根を寄せる。
親戚づきあいって、面倒だなと思った。
しかもあんな親戚だもんなあ。
「おいお前。不敬な事考えなかっただろうな」
「公爵閣下こそでしょうに」
「………………………たまに文句を付けたくなるだけだ」
「ですよね」
ご愁傷さまですとポツリとこぼすと何て言ったんだと言われる。
何でもありません、何でも。
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