閑話8供物 続 改
まずはマンゴー、温かい土地だが、見たことはないので、もしも存在していたとしてもこいつはまだこの世界では食べられると思われていないのかもしれない。
これと、パイナップルとライチを山盛り。
此方も同様でこの世界では見たことがないものだ。
だが、元の世界では楊貴妃が好いていた果物だ、山盛りでも問題なかろう。
冷凍で山盛り届いたので、皮をむいて食べてくださいと紙面に書いて貼り付けた。
パイナップルは食べにくそうだけれど、台湾産だどうだろう。
皮さえ剥けば全て食べられるから芯を取る手間が必要ないだろうからいいだろう。
あとはせとかとオレンジを入れて、日本の果物の甘さと美味さを味わってみて欲しい。
オレンジと比べるとオレンジは酸味が強いので、甘さじゃなくて何か飲み物として飲むと良いかもしれないと紙を張っておく。
だがせとかは蜜柑界の大トロと呼ばれるほどの極上の味なので、本当に美味しいのだ。
皮を剥いたらとても美味しいから食べて欲しいと書いておいた。
ぜひ味わってほしい。
後は桃を山盛り、これは毛を袖で拭っておいて、丸かじりをしても大丈夫なように整えておく。
よし、他には………バナナもいいだろう。
用意し、急きょ作った教会の、作ったばかりの祭壇の上にこれらを乗せて行く。
「おい、俺等も食べてみたことが無いものを乗せるなアホタレ」
「ええええ!羨ましいんですか?」
「当たり前だろ、食べられなくなるんだから、羨ましいに決まってる」
「また出しますから勘弁してくださいよ」
「絶対ですよ、アル」
「絶対だぞ、アル」
「分かりました父様たち」
魔力奉納をしながら、アルは祈った。
今まで申し訳ありませんでした、元奴隷たちのことも有難う御座います、いつも肉を貰えて彼らは非常に助かっていますと告げて奉納すると、ものすごい勢いで光が溢れるのだ。
「うわっ、眩しいですね!……おお!本当に祭壇から供物が無くなりましたよ!」
「そりゃあそうだろうよ、神が居る証拠だ」
この世界では本当に神さまはいるのだと分かった出来事だった。
元の世界では精神的に居たらいいなあと言う心のよりどころ的存在だったから、とても不思議な気持ちになるアル。
「へえー。こりゃあ凄いです。他にも何か無かったかな、今まで供物を渡して来なかったからまだまだ渡し足りないんですよ。何がいいでしょうか?」
「後でどういうことか聞きたいところだが、どうせなら前回見せてた遊べる何かがいいんじゃないか?兎に角遊べるしな」
――と言われ、気が付く。
他の面子にばれないように言ってくれたんだなと。
公爵こういうところ気が利くんだよなあと思いながら、アルは開いていく。
ここは将棋かな?でも、やり方をこちらの文字にしないと行けないんだから、面倒なのだとあれか。
私が面倒だなとアルは唸る。
仕方なしに簡単に分かるボードゲームでリバーシにした。
これを購入し、祭壇に捧げる。
三つ程購入して置いてみた。
すると三つも要らんだろうと、公爵が言うのだ。
一つ手に取りながらなのがおかしくないか?と思ったが。
解せぬ。
何故神への供物を強奪しているんだこの人は。
マジでなんなん?
仕方ないから、公爵の分も購入し、渡してやると、これを手に取って催促したわけじゃないと言うのだ。
だったら何だよ。
「神は全てで9柱居るとされる。大神と8柱だな。だからそれを考えてそんなに必要なかろうと思ったのだ」
「はあ。 じゃあ下に仕える神っていないんですか?」
『居りますよ、沢山。ですからいくつあっても足りないかもしれませんが………兎も角戦い方は書いておいてくださるのは嬉しいですね』
「え………………もしかして、あなたも、神ですか?」
男が神だったのか尋ねるアル。
すると男は当然でしょうと言いながら、はいと返事を返してくれるのだった。
『はい。そうですよ。私は神の席の末端に座すものです。ですからもう少し労ってくださってもいいですよ』
今まで失礼な態度取ってなかったかなと思い青ざめるアルに、ノールは言う。
では何が供物として欲しいか聞いたらいいじゃないか、とこういうのだ。
「直接聞けるなんてめったにない事じゃないか!すばらしい!」
「あ、うん。分かったよお父様。――では、何が欲しいか皆さん言ってませんか?」
『そういうのは言ってはならないことになってるけれど、先ほどのせとか、大トロって言うのは分からないけれど美味しいね。あれをもう少しくれるかなっていってますねぇ。皆で分かつと直ぐに無くなってしまうと皆さまいっていらしてね』
「せとかですね。他にはじゃあ不知火もいいですね。デコポンも」
ポンカンも美味しいよなあと思いながら出すと祭壇に設置していく。
「どれも剥いただけで美味しく食べられますよ」
『皆さまとても喜ばれています有難う御座います』
他に何がいいかなと考えていれば、桃も美味しかったですと言われる。
あれ?
今食べてる?
「じゃあ桃を二箱分と、台湾産マンゴーと、台湾産パイナップルと、日本のおたかあい一つ5万するマンゴーとおたかあい苺はスカイベリーとミルキーベリーは栃木産だったな。これをケースで何パック送ればいいんだろう?足りるかな?」
ついでに作った苺飴を付けておく。
こちらはあまおうだ、美味しいよと一言付け加える。
すると男は嬉しいですねえと言うのだ。
『こんなこと言ってはいけないんですけれど、もう5パックは必要です』
「分かりました。5パックですね」
じゃあ7パック入れよう。
モリモリと大量に祭壇を埋めていく果物に、公爵たちは唖然としていた。
誰もがこんなに供物を積むと思ってもいなかった様子。
『ミルキーベリー美味しいですね』
「苺にしては洋ナシのような甘みと酸味がないのが特徴、だったはずです。患者さんが持ってきたの思い出したんです」
美味しいでしょうと胸を張っていると、周囲からじゅるっと何かをすする音がする。
『このポンカンもいいですね』
「熊本の果物なんですけれど、酸味よりも甘味が強いのが特徴でして、美味しいんですよ、一つ食べると病みつきになるのはせとかだけじゃないでしょう?」
『はい。とても美味しいです。口の中に広がる果汁がたっぷりで、この世界にない甘みが最高ですよ。控えめに言ってこれなので、皆喜んでおりますよ』
「それは良かったです」
大神様たちは喜んでくれている、――だと思われるが、それでも気になるから訊いてみた。
「ライゼンリッヒ様たち喜んでくださるのでしょうか?」
「喜んでくださってると良いな」
「そうだな」
『大変な喜ばれようですよ。大神様方は殊の外せとかをお気に召された様子です。スカイベリー?も気に入られたようですよ』
「本当ですか?良かったあ」
果物を大盤振る舞いし終えると、公爵が言った。
なら、俺等にも振る舞ってくれるんだよな、と。
「ええっとー………」
「出すよな?」
わあ、殺されそうだあ、凄い青筋が額にいーっぱいあるぅう。
「はいぃいいい」
地味にせとかと台湾マンゴーとパイナップルが高いので、待ってほしいと言いたくなったが、流石にこうまで美味しいと実況中継されては皆我慢などできようはずもなく、アルは粛々と用意させて貰うのだった。
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