閑話1自由貿易で買ったものを食べたいぞ 続々 改
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フローラが出迎えるではなく、公爵が下男の真似事をしてアルをおろしてくれた。
そっと抱え下ろされれば、恐怖する。
一体何をされるんだろうかと。
すると公爵はこっちだとついて来させようとするので、そのまま馬車に乗りこもうとするとまたも後頭部を掴まれてずり下ろされたのだ。
「どこへ行く」
「ひいぃいいいいい、笑顔でどこか行こうとかいうからあああああああ」
「笑顔で出迎えてやったと言うのに何だと貴様」
「ひぃいいい」
そのまま頭を掴まれてずりずりと引きずられて行くと、フローラに会う事も無く、またもや二人きりの部屋に通される。
しかも今度はテーブルがずらずらと並ぶよく分からない部屋だった。
なんだって言うんだ本当に。
「首が捥げるかと思いました」
「素直に来ていればこうはなっていない」
「はい、そうですか。でも怖いんですから仕方ないですよね?」
「怖かったらなおの事素直に来い、阿呆」
テーブルの一つに座って言う公爵に、アルは己も腰かけて何だろうかとテーブルを見回す。
すると、ここはどうやら明日の食事会の席だと言う事が分かった。
何ゆえ?と思い見てみれば、金貨をじゃらりと用意して言われた。
「明日の食事会、いつもの食事とは違うものが食べたいと仰せの方が多くてね。用意出来るだろう?」
「作れと言われないのでしたら、用意は出来ますけれど………」
「そのための金だ。使え。豚の丸焼きが必要ないからそれだけ浮いた」
「ああー………」
豚の丸焼きが金貨3枚という事か。
食事を大量に用意したとしても、この間出した分でも小銀貨一枚程度だった。
金貨三枚分も出すのだから相当だぞと思っていると、甘味も欲しいなと言われる。
「甘味ですか?」
「ああ。我が国は砂糖が入ってきて、果物に砂糖をかけて食べるくらいしか使い道を思いつかぬのだ。それは砂糖を作っている国も同様で、他の使い方を数個しか見つけておらぬそうだ。だからこれよと言った物を見せよ。砂糖の使い道で、後でこちらで再現出来る料理に限るぞ」
「ははあ………無理難題をおっしゃいますね」
キロやグラムのはかりはあったから、出来なくはないだろうが少しばかり「結構な難題であろう」と言いたくなった。
だが、そんな事を言い出すようなものなら、明日が迫っているのだぞと雷を落とされかねない。
そしてアルが逃げ出さないように前日にこの部屋に閉じ込めようとしているのだろう。
中々どうしてこれは痛い。
フローラもこの食事会には出るのだから、恥をかかさぬようにと考えれば、出さざるを得ないだろう。
まあ、金を貰ったのだからやらないと言う選択肢はないのだけれども。
「はあ、分かりました。 やりますけれど………でもその前に私は何が皆さんの口に合うか分かりませんから、一旦今日出しますから、一つ一つ食べてください。私の好きなものから嫌いなものまで全部出しますからね。食べてくださいよ」
「ああ、前回食べたものは全て出せ。他の物というなら食ってやろう」
「味見なんですから出しませんよ。美味しいと思ったってことですか?前回の」
アルは問う。
だがあれは、器具機材がないため作れない代物だろうに。
じゃあ機材や器具も出さないといけないなと、アルは色々と買っていく。
どうせ支払いは公爵だし、資金も潤沢だ。
金貨三枚で買える分だけ買ってしまえばいい。
まあ、どうせ余るという物だろうけれども。
「ああ、あれは良かった。明日来る伯爵も絶品だと言っていただろう?」
「そうですね。じゃあ頑張ってやりますから、食べてくださいね」
「フローラを呼ぶ。待っていろ」
「出してから呼んで下さい。今回は調理法を知ってるものだけ、再現出来るかどうか抜きに選んでから出すので、まずフローラを先に呼ばれると困ってしまいます」
「いや、フローラを呼ぶのが先だ。あれでアイツ、御前を気に入ってるからな。勉強の時間を終えたらだらけていたところを呼び出されるよりはましだろう。先に勉強の時間を終えた後の事を教えてやるさ」
「なんだか恥ずかしいですね」
照れながらそう返すと、公爵は父親としては気に食わないのか、鼻を鳴らしてアルを見下ろした。
「ふん。フローラを大切にしなかったら許さんからな」
「大切にしていますよ。今も。だからあまり虐めないでくださいと言ってますのに」
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