第6話善行ポイントってなんぞ?★ 改

 アルは善行を貯めるために、自分で今、最大限出来ることを考えた。

 男は自分で如何にかすることだと言わんばかりに、これに関しては何も言わない。

 その通りだと思ったからそれはいい。

 ただどうしたらいいのか答えが見つからないでいたのだ。


 何と言うか、無償奉仕することが答えではないのだとしたら、神に祈りを捧げることが善行ポイント化につながる道かと思いやってみるも、ほとんど貯まらなかったのである。

 その数字は、こうだ――10ポイントである。

 10ポイントじゃ何も買えないよ!



 行き詰った私は、まず、待望の村を作ってみた。

 せめて楽しみになることがあればと思ったのである。

 そこには何故か、村人などがおらず、家が数個あるばかり。

 何故だろうか?

 村というのだから、ゲームであるように、同じ言葉だけを喋るような人が要るようなものかなと思っていたのだ。

 けれど現実は違ったのである。


 井戸は一つ、ポンプ式である。

 それが一つあるだけで家が数個。

 それを囲うように石を積み上げた塀が立っている。

 誰も住んでいない村?なんだこれと思っていると、いつものフォンという音がして、画面が出てきた。


≪金鉱山の村≫

:井戸作成  善行50

:家畜・豚  善行70

:家畜・牛  善行90

:家屋作成  善行100

:家畜小屋  善行100


 つまり、これもまた村を整えるのに善行ポイントが必要ということだ。

 別に誰も住んでいないならいいじゃんと思ったが、ヒントになる物が一切ないのだから辛い。

 どうしたらいいのだろうか?




「………あ」


 そうか、これだと思い、私は村から出て、伯爵邸に急ぎ戻った


「お義父様!私分かりました、善行ポイントを貯める方法が!」


「おお、何だ、どうしたね?」


「街へ行ってみたいのです!あと、私のお小遣いを大金貨5枚程持たせていただけますか?」


「すきにしなさい。自分のモノだろう?」


「はい、有難う御座います!」


 金貨を手にした私は、笑み崩れた。


 ふふふ、これで完全勝利!!



*****



 街に下りてみると、そこにはむき出しの地面があった。

 貴族街には石畳があるため、これが大きな違いと言えよう。

 屋根瓦が無い、四角い建物が沢山あり、その建物が二階建ての作りをしているところが、今回、用のある場所である。

 石畳で出来た地面から馬車を下りて、歩きだす。

 二階建て以上の建物は全て、店舗なのだそうだ。

 伯爵が付いてきてくれて良かった。

 ノールもついてきてくれてるけれど、こんなところにくるだなんてと言っていて、私を連れていくのに協力的ではなかったから。

 にしても危うく迷子になるところだよ。

 道が複雑なわけではないけれど、小さいから人波の押し寄せるままに連れて行かれそうだ。



 多少色が付いている、袖が長い服を着ている者が出入り口に居る。

 案内の係の者だろう、服装が富を表しているような存在である。


『この地域では、平民は袖の短い服しか着ることが出来ませんからね。ここの者も貴族に連なる者なのでしょうか』


「分からないけど、そうなのかも?」


 その店舗と思しき建物の外側には、檻に入れられた人が数名見えた。

 そう、ここは奴隷商だ。

 そんな奴隷と貴族という言葉がかみ合わず、首を傾げる。

 それともここの奴隷商の商人は、結構服は良い服を着ることが出来るくらい、金回りがいいと言う事だろうか?

 豪商トラリを思い出すが、彼は袖の長いひらひらとした服を着てはいたけれど、あれを基準で考えていいのだろうか?

 公爵領の一番の商店を営んでいると聞くから、それと比べると伯爵領で同じ規模の商店がやってると思っていいのかという問いになるかもしれない。


「奴隷を買いたいと言っていたけれど、本当にいいのかい?」


「いいんです、奴隷だったら税金はかからないと言っていましたでしょう?」


「ああ、それはそうだが……」


 義父である伯爵は唸るようにして声を絞り出した。

 奴隷を買ってどうする気なのだろうかと、どうやら気が気ではないらしい。

 しかもしばらく悩んでいたかと思えば奴隷を買いたいと言うのだから、アルはきっと善行に関することでこうしたのだろうと思うけれど、これが善行にどうつながるのかが分からないと言った様子であった。


 どういう事だろうか?

 もしかしたら彼らを買って解き放つつもりならやめなさいという伯爵。


「そんなことしません!」


「???」


 ならばなんだと言われたので、こそりと告げてみる。


「奴隷を僕の能力で作った村に住まわせるんです」



*****



 檻の中の奴隷たちを一列に並べて奴隷商人は笑みを浮かべる。

 彼らをお買い上げ下さると言うことで、どうでしょうかと並べていうのだ。

 顔の良いものはこちら、力がある者はこちらといって、並べているのを見て、ノールがずいとアルの前に身を乗り出してきた。


「父さんが決める、良いなアル」


「え………でも、私が自分で決めるよ?」


「いいから、大丈夫だ父さんに任せろ」


 そこまでのやり取りを受けて、伯爵がごほんと大きな咳をした。


「ノール………」


 しまったと言うようにノールは肩を竦める。

 言葉がすっぽ抜けてしまったのである。

 せめて父様が行うから、待っていなさい、だったら良かったと思ったけれど後の祭りである。


「気を付けなさい、ノール」


「は……はっ!閣下!努力します!」


 努力じゃなくてやりますだろうにと思ったけれど、そこはノールの正直な気持ちなのだろう。

 兎も角頑張ると言ってるのだからいいかと、伯爵は嘆息を一つこぼすと気にしないように奴隷商に言い含めるのだった。


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