第5話善行ポイントってなんぞ? 改
アルはそれから金塊を渡すために、せっせと公爵邸に通うことになった。
そこで聖域を開いて金塊を取ってくるのである。
何と言うか、凄い不条理極まりない。
何で私がそんなことをしなければならないんだろう、自分のモノにならないのにと言っていれば、またもアイアンクローされながら言われるのだ。
「外国にもう、金という金を渡し過ぎてこの国には金がないんだよ!今この国の一大事なんだよ、わ、か、れ!」
「すみましぇんん」
毎日決まった時間に公爵領に通い詰める姿はさながら、通い妻と言った所かと揶揄されるほど。
違う、惚れてるとか惚れてないとかじゃない、公爵家の幼妻とされる彼女の元に通っているけれど――つまりそう言うことで言われているのだ。
毎日何て仲睦まじいですね、という事なのだ。
だが、実際にその内情は違う。
むしろ私が妻を貰うのに何でだと思う――きっとそこを今突っ込むところじゃないと思うのだけれど。
公爵の娘とは縁を結ばせていただいているけれど、まさかの婿入り予定だけれど。
でもそれだって政略結婚だとかなわけで、とごちゃごちゃ考えていれば、気に入らないというのかと、アイアンクローを食らった。
「痛いいいいいいいい、何も言っていません!!」
「何か好からぬ事を考えて居たような気がしたんだ、だから躾だ」
「理不尽!」
おお、痛いと頭を撫でさすりながら言っていれば、目の前の彼女――フローラという――は、嘆息を一つこぼして言うのだ。
「なぜお父様に逆らうような真似をなさったのですか?」
何故そうなる、この親にしてこの子ありだなと思ってしまうが行っても詮無き事である。
伯爵の元に養子になる際、言われた事は、将来的に公爵家に婿入りする事、だった。
公爵には現在女公爵になる予定のフローラが居る。
そのフローラを支えて欲しいというのだ。
「何も致しておりません、フローラ酷いです。先ほどからあんまりではありませんか?私は何もしていないと言っているではありませんか?」
酷いよと打ちひしがれるようにしていると、フローラは頭を撫でてくれた。
よしよしされて嬉しくなるが、特に何もしていないのに疑われたのはたぶんしばらく忘れないと思われる。
フローラに善行を積みなさいと公爵から――伯爵と子爵からもだが――言われたことを明かすと、それは教会の教えですねと頷いた。
だが実際にはそうじゃないので、教会の教えを履修するわけじゃないけれど、内容を明かせないため仕方ないと、とりあえずアルは頷いて見せた。
因みに本日分の金塊はアーレンゾ閣下に渡してあるが、毎日運ぶ金塊を彼がちょこっとちょろまかしてもいいかこれとつぶやいたことを忘れない。
俺にも権利ありますよねと言えば、そう言う事ではないと言う。
アーレンゾ公爵はそのまま金塊を持っていって、それを使う事をしない――ちょろまかすは恐らく違うことに使う必要がある際のことであり、今回のそれではないのだろう。
集めて置いてそれを一気に王都へ運ぶのである。
空間魔法を使って一気に運ぶらしい。
空間魔法――亜空間を作ってそこにものを大量に閉じ込めてしまえるらしいのだが、そのお陰で物資を一気に運ぶことが出来るんだとか。
アーレンゾ公爵だけがここらへんの地域一帯で唯一使える人物だという――特殊魔法だと言うことだった。
商人辺りに欲しい魔法だろうけれど、実際には商人はただの平民だ。
だから魔法を持ってるわけもなく使えないという事で、お貴族様は偉いと言われるだけはあるのだと思った。
だが実際には、商人をしている空間魔法を使える下級貴族もいるのだとか。
成程正しい使い方の一つである。
公爵が持っているスキルは、虚偽看破。
虚偽看破で前世を持っていることはばれている。
しかも自由貿易は、過去の自分が買う事の出来る買い物全てであることもばれていた。
子爵と伯爵にばらさずに居てくれるのは有難いが、扱いがそのお陰で大人仕様なのがいただけない。
話しを元に戻そう。
善行は何をすればいいでしょうか?
そう告げると、フローラはまず何が自分にできるかですけれど、寄進でしょうか?という。
そして教会の抱える孤児に食べ物を持っていくのはいかがですか?と言われる。
後は街で浮浪者に食事を配るのですと言うが、成程と言いはしたが、これでどれくらいの善行ポイントが貯まるのか分からないから首をかしげてしまう。
そもそも公爵の浮浪者に対する施策がうまく行っているからか、そこまで浮浪者が街に居ないのである。
その為これでいいかと言われると疑問が湧いてくる。
ただし、それはそれでやるべきだろうとは思うが。
兎も角まとまった善行ポイントが欲しいため、稼ぐ手段が欲しかった。
果物を潰したジュースをあおるとごくり、嚥下する。
生の果実を絞ったジュースだけあって、これがまた酸っぱい。
けれど100%オレンジジュースなため、かなり高価な物なのは分かる。
――にしても、定期的に善行ポイントを稼ぐ手段、これが重要だ。
毒消しと、毒無効を手に入れよと言われているためである。
公爵がフローラと寛いでいると、伴を連れてやってきたかと思えば、自分もワインを頼んで飲みだした。
ワインと言っても葡萄酒というか、むしろブドウジュースくらいのモノだから、別に昼間から飲んでもいいんだろうが――飲むな、と言いたい。
「お前のようなものにフローラをやるんだ」
と言って働けと言われるけれど、別に欲しいとこちらがいってこうなったわけでもないのによくもまあ恩を着せてくるものだと思う。
確かにフローラは可愛いは可愛い。
美人でもある、将来有望だろうと思う。
けれど別にフローラを貰っても嬉しいと思えないのは、舅が公爵だからである。
こちらが幾ら転生者だからと言っても、何をしてもいいわけでもあるまいになどとブツクサ言いたくなってくる程公爵が舅なのが嫌で仕方なかった。
「――ねえ、お父様。善行はどのようにして積みましょう?」
「ほー………」
「うぅ」
フローラにまで聞いて迷惑かけてるのかお前といったところだろうか?
嫌な目を向けられている。
だが、ここで公爵が何を思ったのか、だったら俺のところで働くとかはどうだ?という。
伴についていた子爵が、私の仕事を手伝えば善行にはなりますよとこちらも言うのだ。
無償奉仕で定期的に稼げばいいだろうと言われ、確かにそうかもしれないけれど、たった一人に対しての善行で貯まるのだろうかとも思う。
『たいして数字になりませんね』
「やっぱりかあ……」
男に尋ねてみたところ、大して稼げないと言われる。
だろうなと頷く公爵。
分かっていたのであるが、それでも仕事をさせて見たかったらしい。
何てやつだ。
私はかなりイラついた。
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