第3話善行ポイントってなんぞ?★ 改
男の声が脳裏に轟くように大声で言われたために、頭を押さえてアルは呻いた。
一体なんだと叫んでしまえば周囲には今まで聞こえていなかっただろうに、今度はこの世界に入り込むと分かるようになるらしく、うるさいと皆が唱えた。
『――失礼しました。諸事情により、というよりもマイクの故障です悪しからず』
「そっかあ。痛かったぁ……」
『申し訳ありませんでした。 この妖精の園のショップ機能が使えるようになりましたよ』
「ショップ?」
何です其れってと言うと、他の者達は一人呟いているアルに寄ってくる。
アルがこの声の持ち主と会話をしているから気になったのだろう。
何をしていると言われ、アルはまあこの際だから全員に見せてしまおうと思った。
「ショップを開いてください」
フォンと起動音がして、アルの目の前に透明なガラス板のような画面が現れた。
『どうですか、品ぞろえはいいでしょう?』
≪妖精の園≫
:妖精からの親愛 魔力500
:妖精の友人 魔力500
:妖精の泉 魔力9000
:妖精の洞 魔力7000
:妖精王 魔力50000
:妖精姫 魔力45000
≪妖精のショップ≫
:妖精の反物 善行3000 魅了効果
:妖精の花輪 善行1500 全回復
:妖精の指輪 善行1500 毒無効
:妖精の泉の水 善行300 毒消し
「何この妖精の反物って、魅了効果あり?」
『好きな子の前にそれを付けて行けば一発です』
「凄く聞いて損した気分だ」
アルががっくりと肩を落とせば、その画面を見た公爵と子爵が騒ぎ出した。
「お!俺は毒消しが欲しいぞ」
「え、待ってください、俺も欲しいです」
「何で毒消し何て……」
「王に献上するんだよ。後俺も持っておきたい」
「私もです。持っておきたいです」
そう言われて「あ」と声を上げてしまった。
つまり、毒殺の危険があるってことかと思い、何とも言えない気持ちになった。
だがしかし、そもそもこの善行とはなんだ?
画面をタップしてみても買えないじゃないか。
「それ!えい!……買えないよ。善行って何すればいいの?」
『善行、それこそ良き行いをすることです』
さあ、考えましょうとご満悦と言った様子の声に、アルは頭を抱えてしまった。
貴族で良き行い?
まほう、かな?
「あ!!か、回復魔法を覚えて、無償奉仕はどうでしょうか?」
「愚か者、教会と衝突するぞ」
「ええ?なぜです?」
「教会は金を貰って怪我や病気を治している。それをお前が無償でやったとなれば、皆どこにあつまる?」
「あ・・・・そうだよね、どうしよう?じゃあ、それはなし!なしだけど、どうしましょう?」
『難しいですか?ですがお金で解決するとなると、そちらの金貨が最近足りなくなってきていると言われていまして』
「ああ、外国に全て巻き上げられているような状態だ。それも二年前からきっぱりと断ち切れたからな、アルのお陰で。それは良いんだが……今度は善行とな?」
公爵は唸るように言った。
アルはこの三年の間に、既に公爵、伯爵、子爵、ノールには能力を打ち明けていた。
今回エリミヤにも打ち明けることになったが――流石に異世界転生については言っていないけれど、その他の能力については打ち明けていたのだ。
そして今朝の突拍子もない行動もようやく、形が見えたということで、行儀が悪いとは言われたけれど、おとがめなしとなった。
通常食事の席をあのように乱すのは上品ではないと、咎められて一週間くらい自室で食事をとるように言われかねないのだが、ようやく全員で食べる事が出来るようになったのだから、また一人で昼食を寂しくとるのはごめんだった。
――にしても、善行とは一体なんだろう?
いや、分かるよ分かる。
分かるんだけどそうじゃなくて、この数字が示すのは善行、何をすればいいのだろうか?
「魔力じゃないんですか?」
『ええ、魔力ではないですよ。こちらは善行を積むことで貯まるポイントです』
「貴族で善行ポイントを・・・・・やっぱり寄進する位しか思い浮かびません」
「お前沢山金貨持ってるだろう、それでいいじゃないか」
「うう、不労所得が、貯めておいた財産がああああ」
あ、でも、金鉱山……ぽつりと呟いたアルは、そこで公爵に頭をわしっと掴まれた。
「話を聞かせて貰おうか?」
「あぅ………」
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