善行ポイントってなんぞ?1★ 改

「妖精とか本当に居るのですか?」


 そう訊ねるアルとノールに、義父ロレンツィオとエルヴィンは、そんなものはおらぬと言い放った。

 少しどころかかなり冷たい声の響きがした気がすると思ったものだ。

 そして辛辣な物言いで言うのは子爵だ。


「ああいますよねえ、信じている人。昔話を信じる事は良いのですが、民間伝承である通りではないんですよ。実際の魔法というのはね、妖精もおらず、精霊もおらずです。彼らが何かをするわけもないのですよ。 実際におわすのは大神とそれを支えたる七柱の神になります。神のお力を行使するべく、魔力持ちの貴族がその力を神と契約をし、魔力の行使をするのですよ」


 良いですか、と一拍置いたのち――


「妖精というものが居たとされるのは物語の中だけなんです、だから妖精の事を今後軽々しく人に尋ねない事。平民に多い間違いですので、そこを突かれたくはないでしょう?」


 市井の出であると知られることは今後避けたいだろうと言われると、貴族の子として産まれたことにするべきであろうということなのか、と思う。

 実際はなるべくならばそれを知る者は少ないだけにとどめるべきだという事だったが。

 困った子を諭すように言われてしまえば、ノールと共に恥ずかしくて、顔を真っ赤にして俯いた。



 そんなやりとりを思い返してはふつふつと怒りが湧いてくる。

 居るじゃん、妖精!!

 むすっとして戻れば、先ほどの妖精の園と言っていたのはなんだ、それがユニークスキルの名かと問われる。


「妖精の園というのは、どのようなところなのかね?ん?」


 子爵がどこなのだね、どのようなところに行ったのだねと訊ねる。

 転移したことは目の前に居るのだからばれているだろう、さて、どうやって証明をしたものか、と思う。

 妖精は居たのだから、見せてやりたいと思ったのだ。


『誰かを連れて妖精の園へ行く方法はある?』


『御座いますよ。そのものを自分に触れさせ、転移するだけでいいのです』


『分かった、やってみる』


 良い人ではあるのだ、義父も義母も。

 本来であればノールは年嵩が言っているため、引き取る必要はなかったらしい。

 それこそ、誰かの伝手で貴族の子飼いとなるだけで十分だった。

 だが伯爵は私の弟として引き受けるといって、別れた兄弟の血を持つものよと受け入れてくれた。

 何処かの貴族に縁付ける必要もなく、過ごせるようにと一家そろって引き入れてくれたのである。


 ――エルヴィン子爵と領主の方が実はエリミヤの事を反対していたのだ。

 平民から貴族の仲間入りを果たすなど、と言って。

 けれど義父も義母も受け入れてくれた。

 だから引きこもりたいという希望はあれど、アルは義父と義母ならば構うまいと、その手を掴んでスキルに招いた。

 すうっと入り込む際、待ちなさい――声が聞こえた気がした。

 案の定――


「はあ、置いて行かれるところだったよ」


 置いていくつもりだったんだよ、と思う。

 子爵を置いていけず、結局全員できてしまった。

 ノールと伯爵夫妻、そして子爵だ。

 エリミヤは足が悪いため、危険だろうと置いてきた。

 今度靴をプレゼントするからそうしてからにしようと思う。


「なん……と、ここは、一体……」


「妖精とは、居たのですね、あなた」


 人形サイズの小人たちがふわりふわりと飛んでいるそこは、この世の桃源郷と呼ぶに相応しい光景――世界だった。


「物語に出て来る妖精さんそっくりねえ、あなたのお名前は?」


「おしえなーい、おしえなーい」


「アルには教えてもいいよお?」


「わたし?」


 自身を指さし問えば、そう!あなたにならいいよお!と言われる。

 はしゃいだ声はとても弾んでいて、創造主だからいやいや言っているとは到底思えなくて――だから名前を聞いたのである。

 すると彼らは言うのだ、


「アル、私の名前は×▽§°●±だよー」


 と。

 あの男同様に聞き取れない名前に、アルはどうした者かと考え込む。


「アル、あなたが名前を付けて。名乗ったから後はあなたが付けてくれたらいいよ!聞き取れないのでしょう?」


「う、うん………」


『元から創造主から名前を貰うモノなので、これはこれでいいんですよ』


「そうなんだ………」


「それで、ここは一体どのような空間なんですか?」


「えっと………」


 エルヴィン子爵がワクワクとした感じで話しかけてきたので、私は仕方なしに説明をすることにした。


「どうやら成長型のスキルらしく、私の魔力を奉納することで、こちらは成長していくようです。現状はここに来れるだけ、となっています」


「成程、まあ何かに襲われた時にここに逃げ込むのでもいいでしょうからいいんじゃないですかね?」


 と、つまらなさそうでむっとした。

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