第3話義父は良い人! 改

『所で、外で皆さんお待ちしているようですが、大丈夫ですか?』


「だから気が重いんだよ。 子爵は仮想敵的な感じだから、なおの事ね。待っていられるのが分かっているから出ていけないでいるんだよ」


『左様ですか。ですが出て行かねばならないかと。彼らあのもらい物に手を付けてますよ。貴重な錬金素材ですのに』


「ええ!?本当ですか!? わ、私のなのにぃ」


『それは良いとして、ちょうどいいです、聖域のスキルの解説をさせていただきます。宜しいですか?』


「ああ、それは嬉しいですね!よろしくお願いします」


 小さな体を折り曲げて礼をすれば、その様を気に入った様子で、男の声の調子が上がったように感じられた。


『ではまず、サンクチュアリと唱えてください』


「サンクチュアリ………おお、何か出た!」


 目の前には大きな画面が現れたが、透明な画面だ。

 人前でやると見えてしまうからなるべく止めた方がいいと言われれば、そうだなと思う。


 だけれどもう、貴族になってしまったし、目立たないというのは土台無理なようにも思う。

 引きこもりという点では最高に貴族というのはいいポジションかもしれないが、そのポジションにいる以上は、重責も担わなければならないという事もあるだろうし、一長一短だと思う。


 とりあえず画面を人前でひけらかすように出すのはごめんだと思いながらどうしたらいいのかと訊ねて見せた。


『文字に何と書いてありますか?』


「えーっと」


≪妖精の園≫

:妖精からの親愛 魔力500

:妖精の友人   魔力500

:妖精の泉    魔力9000

:妖精の洞    魔力7000

:妖精王     魔力50000

:妖精姫     魔力45000



 ずらずらと並ぶそれを見てみれば、魔力でそれらは開くことの出来るものだという。


『妖精からの親愛は、毎日のように今日貰った供物が定期便で届くようになるものですね』


「へえ、何かもう食べられたり使われたりしているようだから、欲しいかも」


 あの蜜は集めたのを誇っていた妖精が言っていたが、貴重な蜜で、回復薬の味を変えるために用いると劇的な効果を得るのだという。

 錬金の為に使えると成れば、なおの事苛立つ。

 全部持って行っていたら承知しないんだぞ。


 ふんすふんすと荒い息を整えていれば、男は歌うように告げる。


『妖精の友人は、妖精を契約により園から連れ出すことが出来るようになるものです。テイムは従属ですが、こちらは信頼関係ですからね。気を付けてくださいね』


「成程」


 妖精を自分だけ連れ歩けるようになるのだったら目立つけれど、実際どうなのだろう?分からないため、これは後日にするよりほかあるまい。


『泉に関しては魔力が足りて居ないので、明日以降ですが、泉は泉の乙女が居る場所です。何かを落としたら乙女が金にするなど地球にもありましたよね?』


「ああ~、ありました。金のオノ銀のオノですね」


『それをやってくれます。妖精らしい飽きっぽさですが、何時までやってくれるか分からないので、一度やってみたらいいと思いますよ』


「分かりましたやってみます」


 他にも何かやってくれるつもりがあるらしいですが、こちらからやるように伝えているモノより良い物は金のオノ銀のオノだけですということで、実際は泉の水を飲むと疲労回復だとか、栄養満点であるだとか、薬効が高くなるだとか、効果が満載なのだそうだ。

 へえ、これも錬金と関わりがありそうだと、楽しみになってきた。


 妖精の洞は、毎日洞を探してみると、素材を発見できるらしいとのこと。

 洞を作ってくれるので早めにこれも得ていた方がいいだろう。


『妖精王と妖精姫は、妖精の王とその娘の姫になります。彼らと親交を持つことで、貴重な品の交易が開始されます』


「じゃあ、これも解禁した方がいいんだね?」


 引きこもりと言えば不労所得を得る方法を考えることが重要。

 即ち、即換金出来るものを作る、これ大事。

 貴重な品物を交易できると言えばそれが近づいたも同じである。

 yes!


 ――と言っても、そもそもが塩砂糖胡椒の三点だけでも不労所得万々歳なほどに稼いでいるけれど、貴族となったからには最低限動かなければならないのだという。

 5歳児に何を期待しているんだろうこの人たちはと思ったけれど、公爵は公爵でアルを逃がす気はなさそうだし、子爵は子爵で逃がす気がなさそうなのだ。

 何とも言いようがないが、いじやけたくなる。


『ご愁傷様ですね、不労所得を得ていたはずなのに全然暇になるように見えなくて、お可哀想に』


「可哀想……うう」






 義父である伯爵の元に戻れば、義母となった女性とも目が合った。

 子爵もこちらをじいっと見つめているが無視だ無視と、アルは伯爵の元へ急ぐ。


 ご婦人の方が話は早そうだが、如何せんこれは信じて貰うにも連れて行くしかない。


「妖精だなどと、何を言っているんだ、ばかばかしい」


「あなた、子供の夢を何ですか」


 夢、夢ときたかと苦笑してしまう。

 事実目の前に山と積まれた妖精の園からの交易品を見てもそんなことを言うのだから驚きである。

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