貴族編

貴族編5歳~

義父は良い人!1 改

 貴族年鑑で分かるのは、容姿だけ、それで本当に親子関係を立証するって本気かと思ってしまうのは、アルが元日本生まれの現代育ちで、更にいうなれば医者だったからだろう。

 嘘だろうと思うけれど、貴族復帰するのに、ノールに後ろ盾はフェルディオ子爵がなってくれるという。

 そして伯爵家と繋ぎを作ってくれるというのだ。

 有難い?申し出である。

 フェルディオ子爵――最初に後ろ盾と養子にしてくれると言っていたあの貴族の名である。


 その貴族曰く、ユニークスキルは水晶玉でも調べられないものなのだけれど、こちらは神に善行を認められた貴族だけが持つものらしく、平民の中で見つかることはないと言ってもいいほどのものなのだそうだ。

 とても珍しいということである。

 ――と言っても、貴族の中にあってもユニークスキルが珍しいのだから、その希少性は相当なものだろう。


 誰だよ、俺に二個もユニークスキルくれたのは!!!

 一つで目立つんだったら、二つあったらどうなのよってものだろうが!と頭を抱えていれば、よくよく考えると、あの男は善処していたのだと思い出す。


『ユニークスキルが三つにならないようにするだけでも大変なんだ』


 そのような事を言っていたような気がするのだ。

 確か似たような文言を唱えていた………


 じゃあ頑張ってくれているのだから文句も言えないと、アルは口を噤んだ。

 有難うというべきであるかもしれないが、言いたくはないので口チャックである。







 それから三年後のことだ、ようやく5歳になった折、貴族になって三年が過ぎた。

 あれからエリミヤもノールの妻として、貴族の養子になったアルとノールを支えるべく、第二夫人として良くやってくれている。

 一番目の子であるトゥエリは、スキルはないが、魔法適性が高く、魔法使いになれると言われ、今は猛勉強をしているのだそうだ。

 そのような魔法使い見習いのトゥエリの事もあり、エリミヤは家族と引き離されることなく第二夫人としていることが許されたということであるらしく――アルはそれが何だか気に食わなかった。

 何故家族で一緒に居ることを許すだとか許さないだとか他人に言われねばならないのだ。

 腹が立つ。



 カトラリーを手に、必死になって考える、何もかも気に食わない気に食わないと、苛立ち紛れに皿の上の肉を切り刻む。

 ――と言っても、習いたてのマナー通りに丁寧に切っているところが、アルが小心者らしいところであったが。


 エリミヤは、「もう少しで皆と引き離されちゃうところだったけど、トゥエリもアルも生んだのは私だってことで、その功績を持って、第二夫人にしてくれるというのだから優しい」と喜んでいたのだ。

 実際にトゥエリに魔力がなかったとしたら、恐らくはノールとアルだけ貴族入りをして、彼女たち二人は、そのまま平民の中で暮らすことになっていただろう。


 だがしかし、今まで平民暮らしをしていたところ、無理に引き取ってきてさらには感謝せよとされているようで、憎たらしいったらないのだ。

 母に何と言っていいか分からず、それが更に苛立ちに拍車をかけるのだった。






 そう言えば、聖域が使えるようになるために、寄進しに行きたいですね――などとふと思い立った。


「おとうさま、おかあさま、私のお小遣いをくださいませんか?教会に寄進したく思います」


「あらあら、素晴らしい心根ね。ですが外に出るのはお披露目までは待ってくれと言われているわ、ここで寄進をしましょうね?」


「それだと駄目だとおもうのです・・・・」


 5歳になって舌足らずも大分治った私は、寄進したさに、外出許可を得ようと四苦八苦しましたが、駄目でした。


 強固な――義母だけど――ママブロックに驚きを隠せませんとアルは一人ごちる。

 恐らく寄進するならば自身が出向くしかないであろうと思うだけに、どうしようもなかった。

仕方ないためステータスを開き、聖域をタップする。

 どうしたら寄進できるのであろうか、善行を積めるのであろうかと内心頭を抱えた。


 すると、こんなときばかりとつい思ってしまったが、男の声がしてきたのである。


『寄進は、教会じゃなくても出来ますよ、魔力を奉納するんです』


「ま、魔力!?」


 だったらもっと小さなころから出来たじゃんかとがっくりときてしまったが、男の発言通りであれば、今からでも遅くはない。

 どのようにやるのかと、タップを続け、奉納の仕方を問いかけた。


「どうすればいいでしゅか?」


『そのまま、聖域の画面を開いたままに、大神様に魔力を奉納されると良いですよ、祈りを捧げてください』


「はい!」


 大神さま、大地と空を司る大神よ。

 我、魔力を奉納し、寄進するものである。


『それでいいですよ』


 食事の席で唐突に椅子から飛び降りて、祈りを捧げだしたアルに、周囲は何を行儀の悪いと思ったらしいが、スキルの使い方の神託を得ましたと告げたところ、目の色を変えた。

 やれ新しい物が買えるようになったのか、や、工作のスキルか、錬金か、はたまた農業かと矢継ぎ早に問われるも、そうではないというしかない。


「もう一つのユニークスキルである、聖域と言われるものです」


 開かれた聖域の画面を見れば、こんな表示がずらずらと並んでいるのである。

 そりゃもう驚いた、魔力の奉納だけでこんなにも話が進むのが早いのであればもっと早くにやれば良かったと思ったものである。



薬草園  魔力5000

妖精の園 魔力5000


金鉱山  魔力10000

銀鉱山  魔力10000

鉱山 魔力10000



 今できるものはこれだけなのだろうか?タップしてみると10000程奉納した魔力があるからこれが出来ると書かれている。

 鉱山が手に入るのは魅力的だが、錬金のためには薬草園が欲しい、こちらにすべきかとも思う。


「お義父様、妖精の園とは一体なんでしょうか?」


 魔法があるというこの世界、妖精は本当におるのか?まさかなあと思い問いかけてみれば、妖精の園というのは知らぬと言われてしまった。

 ふむ、では気になるからこれをタップしてみようかとタップしてみれば、次の瞬間、アルは妖精の園に紛れ込んでいた。


「えと、ここは・・・・ええええ」


 妖精の園というのは、文字通り妖精の育てる薬草園のこと――かと思う。

 ――と思ったのもつかの間、妖精たちはアルに向けて、創造主というのである。

 創造神ではなく、創造主なのだから、アルの能力に依存する存在であるということであろう。

 彼らは一様に、羽か尾を持ち、アルに好意的な存在だった。


「ここはどんな世界?薬草園でいいんだよね?」


 と聞けば、彼らはノーというのだ。


「私たち妖精の世界で過ごせるのよー! 後は私たちの集めてきた素材を渡せるよ」


 開かれたばかりだからと言って、はいと渡されたのは水の妖精のうろこだった。


「その素材は交易品なのー」


「ドワーフなんかも住み始めるのー」


「交易品を交換出来たら、もっといいものが貰えるかもー」



 とりあえず思った、妖精もドワーフも、居るじゃん、と――

 あのおっさん嘘つきだなと。

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