第6話 改

 まずは衣装を購入するために、大体の身体のサイズを測ると、ノールに銀貨3枚で衣装を購入して見せた。

 まるごと一式セットになったそれは、コートからインナーまで全て揃っているセットでこの価格である。

 大変お安い。

 その余った金額で砂糖を本当に買って見せてくれと言われ、砂糖を一袋買ってみると、麻袋に入ったままの砂糖が目の前に現れた。


 袋の口を開けて、スプーンを慌てて用意するトラリに、アルは怯えていた。

 皆がアルを責め立てるようにして、じっと食い入るように見ているからである。


 私は何も悪くないのに、何でこんなことに。

 目立たないスキルと言われて選べば良かったのかと気が付いたのは、転生後である。

 それも約二年もたってから気がついたのでは、もはや遅いというより無いだろう。


「これは、幾らで手に入る?」


 スプーンで一匙掬って見せた砂糖を見て、言う。

 アルはなんで怒りをたたえているかのように言うんだようと、怯えっぱなしである。


 だが、ここで悪魔が囁いたのだ。

 せめて購入代金と周囲へ売った時の差額分の半額は貰えませんか?というものだ。

 自分のスキルで買ったものの、それはこちらの世界にしてみれば、破格であるという。

 だからこそ言いたい、その価値は自分にあるだろうか?――いや、確実にあるだろうと。

 ならばくれ、少しでも多くくれと願い出た。

 善行を積まねば確か成長型スキルである、聖域は使えなかった。

 善行と言ってアルが思い浮かぶのは、寄進することだった。

 寄付することで何とか善行を貯めてスキルを使ってみたいと思っていたのである。


 その為には金が必要だった。


 どうだ、どうだろうか?と貴族の顔を必死の形相で見つめていれば、その提案はふむと、考え込んだ様子で一拍呼吸を整えた後、貴族によって叶えられた。


「では相当に安いのだね?いいだろう、差額の半分を君に与えると誓おう。――ああ、決して領主様からいただいた金貨だからどうでもいいと思ったんじゃないぞ?」


 違うからねと言うけれど、内心はそんなことはどうでもいい、むしろ無礼打ちされないで居ただけでも御の字である。

 無駄にドギマギしてしまった。

 ほっとして可愛らしい丸みを帯びた両ひざから、かくりと力が抜けるアル。

 呼吸を整えると、私は先ほどの画面を見乍ら伝える。


「その麻袋のサイズが大きいんでしょうけれど、銅貨5枚で手に入ります」


「銅貨、五枚?だって?」


 麻袋のサイズを見乍ら行ってみれば、驚愕の面持ちで返答を返された。

 胡椒は流石にそんな金額では出せないが、そもそもあれは小分けで売るものだから、塩胡椒などの合わせ調味料を用意して見せて、これ一つで銅貨2枚だと告げる。

 胡椒のみの袋を用意してみせて、これで大銅貨一枚ですとも言うと、ノールとエリミヤはぽかんとしていたけれど、よく分かっていない様子で。

 豪商トラリとその傍仕え、そして貴族はというと、顔色を失くしていたのだ。


 貴族は喉奥がカラカラなのか、笑い声がかすれていたが、上機嫌に笑っていた。

 上機嫌なのが何故だか怖くも感じたほどだった。


「はは、・・・はははは、・・はは、これはまた凄い」


「いや、はや、そんな・・・・ですな」


「ああ、素晴らしい拾い物だ」





「一つ聞きたい、ならばこれを――砂糖は全て植物から取れると聞く、その植物を手に入れることはできるかな?この、これを自分達で作っていくことは出来る?」


「できます」


 農園のカテゴライズで探せば出てきた。

 サトウキビやビーツが手に入るとなれば、一大産業を興すことも出来ようもの。


「成程、君は今から僕だけじゃなく、領主さまにとってもこの国にとっても、重要人物成り得たよ」

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