第4話 改
貴族の子飼いになるってどういうことだと思っていたら、ノールに連れられとある豪商の屋敷に出向くことになった。
どういうことなのかとノールに問いかけるも、言いよどむ彼から話を引き出してやっとのことで分かったことは以下である。
:スキルは貴族だけのモノであるというのがこの国の教えであるらしい
:平民階級や奴隷階級は持っていていいものではないとも言っていた(選民思想か・・・・)
:平民でスキル持ちが生まれたらもれなく貴族の血が混ざっている、改易された者達または、何代か遡れば貴族の子がその血脈に入っているはずだという決めつけ(それ以外ないはずだと言い張っているのが逆にどうなのかとも思うが)
:魔法を使えるものも一緒くただが、貴族入りするらしい
纏めると――魔法もスキルも貴族が独占しているという事だった。
だからこそ、平民はスキル持ちを見つけたら、即座に貴族へ報告をしなければならないという。
馬鹿げたシステムだと思うのは、私が以前日本で生活をしていたことがあったからであろう。
貴族何ていうものはいなかったからか、それに傅くことが奇妙にすら感じる。
とは言え、議員などは貴族階級であるとされるらしいと聞いたこともある。
だったら慣れていてもいいものだけれど、それでも私は嫌なのだと言いたい。
何故だか妙に反発してしまうのだ。
それはなぜか――前世、医者として生活していて、少なくとも権力にたてつくことができるだけの環境に居たことがあるからだろう、そう思った。
たぶん、いやきっと、私は相当有名な医者だったんだろう。
だから、権力者におもねる事もせずに要られたんだろうと思う。
けれど今の世界では、私は無力だ――
豪商は、この地域の商人の中でも断トツで、かなり手広くやっている商会の会頭らしい。
そんな豪商に挨拶をされたが、私は面白くも無いので、笑みを浮かべることすら出来ないでいた。
これはあまり良くないかもしれないけれど、どうしたらいいのか分からないのだ。
ここで媚びを売るのはどうしてもできない――という事も無いだろうが、問題は私が子供だという事だ。
子供は正直に表情を作ってしまうものだ。
嘘に慣れた子供でないという事が困ったもので、豪商に笑みをむけることが出来ないで居た。
豪商が笑みを浮かべてアルを見つめて言う。
「ほっほー・・・・スキル持ちですか、いやはや、素晴らしいお子さんでありますなあ」
「ええ、私どもには勿体無い子です」
これがこの子が作った彫像ですと言って差し出したのは私の作品達だった。
馬、兎、獅子、考える人の像など様々ある。
「では、私の付き合いのある貴族の方に繋ぎをつけましょう。なあに、怖い事はありません。お優しい方ですからね」
顎を撫でさすりながら豪商は言うのであった。
ノールの腕に抱かれて私は思う、貴族とは、一体何なのだろう。
このセカイは一体何なのだろう、と。
あの日言っていた、上位世界ですという言葉は本当なのだろうか?
上位世界は良き魂が集まるところ、では、貴族は良い人だけなのだろうか?
いや、そうは思えないんだ、何故だか。
*****
豪商の付き合いのある貴族と対面させられたのは、豪商に繋ぎをお願いしに行った日から、わずか三日後のことだった。
ノールとそれからあまり口を聞かなかった私は、流石に悪いなと思うようになっていたけれど、でも貴族のところに連れて行ってほしくないのに連れて行こうとするノールに、聞き分けの無いと言われても、ヤダと言い続けて――彼が正しいんだろうに、それを認めることが出来ずにいた。
豪商と付き合いのある貴族は、トーガを巻き付けるようにしているわけではなかった。
むしろ中世の頃の衣装と言っても過言ではなかった。
私にはよく分からないが、燕尾服のように、尻を隠すほどの長い裾のついた上着。
そしてインナーはベストとシャツを着こんでおり、染粉もふんだんに使い、染めたであろうことが分かる衣装であった。
因みにノールや私の来ている衣装はというと、生成りの布をエリミヤが手で縫ったものである。
つまりは平民は真っ白(汚れたベージュ色)をしていて、貴族は色のついた服を着ているという事かと、この時色分けされた世界の縮図を見た気がしたものだった。
「この子がスキルを持っているという子かい?」
貴族が言うと、豪商はそうですと面を上げることなく訴える。
それは凄い工作スキルを持つ子であり、その加護は大神ライゼンリッヒのモノでありましょう――だそうだ。
ようわからん。
跪いた両親と、豪商とその傍仕えに囲まれた私は、抱きしめられた腕の中でもがくこともせず、ただ成り行きを見守る事しか出来なくなっていた。
ああ、どうしたらいいんだろうか?
「――よくぞご子息を生んでくれましたな。この領地に工作スキルがあるだけでも目出度きこと」
さてさてと言いながら、彼は一つの水晶玉を取り出した。
それは湾曲して水晶玉の先を見せるだけでなく、きっと私に関係するのだろうと思うと、悲しくなってくる。
私はノールともエリミヤとも離れるつもりがないのに――
「――これにその子の手を触れさせて見て欲しい、それと、君たち両親も触れてみて欲しい。もしかしたらスキルがあるかもしれないからね」
「は、はい!有難うございます!」
後で知ったことだけれど、あのスキルを調べる球を使って調べて貰えることは、相当に名誉なこと、なのだそうだ。
だから私達三人は名誉を受け取ることにした。
実際には私だけがいやいやをして、水晶玉に触れるのを拒もうとしたのだけれど。
そんなことはノールが許さなかった。
ぺたりと小さな紅葉が水晶玉に触れたところで、それは開かれた。
ステータス
体力 :50
魔力 :15000
素早さ:22
攻撃力:25
防御力:51
器用さ:175
属性 光 闇
称号:転生者
*****
ユニークスキル ▽● 〈§Γ
スキル 工作 錬金 農業
うううう、見られてしまった。
「うぅあーん!」
私はそこで感情が荒ぶるのを押さえつけることも出来ず、泣いてしまった。
そこで貴族は何を思ったのか――きっと私が泣いたのを見ていやがったのかもしれないが――最低限の教育を受けさせ、養子縁組をと言ってきたのだ。
どういうことだと私は驚きに泣くのも忘れて目を見張った。
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