第6話-盲目の男の娘先生
ソファに腰をおろし、ローテーブルを挟んで『先生』と呼ばれた人物と向き合う。
対面してみると先生の背は小さく……祈吏の目には小学校高学年程度に映った。
その上、
凛々しい顔立ちからは男の子と言われればそうな気もするし、サングラス越しに透ける長いまつ毛や丸い
服装はまず、真っ白な白衣が一番目立つ。
その
重ね合わせたチャコールカラーのスーツベストは男性らしさがあるが、下はハーフパンツだ。
(どう見ても、子供にしか見えない。……けど、何か事情があるのかもしれないし、気にしないでおこう)
ひとまず年齢・性別について考えるのはやめ、口調と態度からどちらかというと男の子らしい印象なので、間をとり
従業員さんにメイド服をOKする
「
「とんでもないです。
「それで、本題だけど。君を採用することにしたよ」
「えっ」
想定していなかった言葉に祈吏は声をあげる。
脳裏を駆け巡ったのは『バイト募集の張り紙』と『受付での違和感』だった。
「すみません、自分はバイトの応募者じゃないです。今日はカウンセリングをしていただきたくて来ました」
「なんと!?それは大変失礼した。受付の時に手違いがあったのかもしれない」
コンコン、とノックの音が響き、先ほどのメイドさんが室内に入って来た。
「失礼します。お茶をお持ちしました」
「ティパル、この方はカウンセリングご希望の方だったよ」
「あら!それは大変失礼しました。てっきりアルバイト応募の方かと」
「カウンセリングの方には、事前にお茶の好みをお伺いする決まりだったのですが……すぐに取り替えてまいります!」
「とんでもないです!こちらで全然大丈夫です、むしろお気遣いありがとうございます」
「そうですか?……申し訳ございません。それでは、私の方で決めたものになりますが。よろしければお召し上がりください」
出されたのはダージリンの紅茶と、焼き菓子が数種類、それはクッキーやバウムクーヘンと焼き菓子の盛り合わせだった。
「先生、今日のお茶菓子はシュクレ・アムールのものですよ」
「おお!頼んでいたものかね!それはうれしい」
ヨゼと名乗った先生は、目の前に茶菓子が置かれた途端『わーい』と歓声を上げ、手探りでクッキーを1枚摘まむ。
その見た目相応な振る舞いに祈吏は一瞬呆気にとられた。
「ここの店の焼き菓子はどれも最高でね。 君も遠慮なく食べたまえ』
「えっ!あ、はい。ありがとうございます。いただきます」
(目が見えていないはずなのに、気配で察せられたのかな……)
そんなことを考えながら、祈吏はジャムがのったクッキーを口へ運んでみる。
さっくりとした生地は香ばしく、中心の赤いジャムは苺の自然な甘みを感じる。
「わあ。すっごく美味しいですね……!」
「だろう。
ふふん、と誇らしげにする様子が可愛らしい。
そんなヨゼの姿を見て、祈吏の緊張はいつの間にかほどけ始めていたが。
「それで、君のご相談内容だけど……不眠症、もしくはおかしな夢遊病に悩まされている、といったところかな?」
「えっ」
何故分かったのか、とドキリとする。この前広告をくれた人から聞いたのだろうか、と思ったが、夢遊病までは話していなかった。
「あの、はい。就寝中に勝手に起きて、絵を描いているようで……その時の記憶は一切ないんです。眠った気もしないので、日常生活に支障が出て」
「心療内科にも行って睡眠薬をもらったのですが、全く効いた感じがしませんでした」
「なるほど……」
ヨゼがもう1枚クッキーを口に運び、
そして充分な時間をかけてから、にっこり微笑んだ。
「祈吏くん、と言ったね。君は前世の存在を信じるかい」
「……はい?」
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