第5話-少し変わったカウンセリング室
(全く気配がなかった……!それよりも何でメイド服!?)
ブラウンカラーのミニ丈メイド服に、白のオーバーニーソックス。
栗色の長髪をゆるく巻き、スタイルの良い女性の現れに、ここは秋葉原かと一瞬錯覚してしまった。
だが、ここはカウンセリング所のはずだ。
「あ、あの!14時に予約した
しどろもどろにそう答えると、メイドさんは『ああ!』と嬉しそうに手を合わせた。
「14時にご面接希望の、遠橋祈吏さまですね」
「え。あ、はい!そうです」
「お待ちしておりました。お履き物はそのままで構いませんので、こちらへどうぞ」
(土足でOKだった! けど……今、なんとなく違和感を感じたな)
(……まあいいか。ここはメイドさんに従っておこう)
メイドさんの後に続いて邸の中を歩く。
しばらくしてようやく状況が呑み込めてきた祈吏は、改めてそのメイドさんを物珍し気に凝視した。
その後ろ姿は同性の祈吏が見ても、ほうっとする気品と美しさを兼ね備えている。
(最初は驚いたけど、茶色いメイド服がモダンな邸に合ってるかも……。でも何でメイド服なんだろう?)
とても気になる。聞いたら失礼かな、と思いつつも、祈吏は好奇心が抑えきれなかった。
「あの……とても素敵な制服ですね」
勇気を出して声を掛けると、メイドさんは少し驚いた様子で振り返り、にっこり微笑んだ。
「お褒めの言葉、どうもありがとうございます」
「こちらではそういった制服があるんですか?」
「いえ。ここに務めているのは
「えっ、じゃあその制服って」
「
笑顔を全く崩さずそう言い切ったメイドさんは、一層嬉しそうに顔の横で両手を重ねる。
「なので、制服は日替わりですの!
「日替わり!?そ、そうなんですね。本当によくお似合いだと思います」
(びっくりした。けど、従業員さんのご趣味を
(話を聞いた限り、開業系みたいだから『先生』って人が許可を出されたんだろう)
そんな
「さあ、祈吏さま。こちらのお部屋で先生がお待ちです」
メイドさんに案内され、廊下突き当りのひと際大きな扉の前に案内される。
祈吏は緊張と期待を抱きながら、開かれた扉の向こうを臨んだ。
(――え?)
扉が開き視界に飛び込んできたのは、天井まで届くほど大きな窓を背景にした人物のシルエット。
差し込む陽光を背負ったその頭には、
(……神さま?)
「お待ちしていました。どうぞ、おかけください」
その言葉にハッと我に返った祈吏は、目をこすり改めてその人物を見る。
よく見てみると、後光だと思ったそれは髪の毛で。
癖毛の金髪を後頭部で大きく束ね、うねり広がるその様はまるで太陽のようだ。
そして夜明けを思い出すグラデーションの丸サングラスをかけている。それは目を閉じているのがかろうじて分かる程度の透明度だった。
「し、失礼します!」
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