第3話

陽が沈んだ道を私は古市さんと歩いていた。

街灯と家の光が目立ち始め、静かな明かりを形成している。

古市さんはナツちゃんに「ご飯食べたらお風呂入っておきな」と言っていた。


「ナツ、しっかりしているだろ?まだ小学二年生なんだよ」

「はい、そうですね」


何故古市さんが隣を歩いているのかというと、駅まで送ってくれるらしい。


「自分のせいなんだ。自分が情けないから……」

「……一体、どういう事なんですか?」


私が聞くと、彼は少し黙った後答えてくれた。


「あの会社はナツの母、僕の妻のものなんだ」

「……奥さんは今は?」

「もう亡くなってるよ。彼女が残した場所を僕は守りたくてあそこにいるんだ。と言っても、ナツに迷惑をかけているのは本当に申し訳ないと思っているけどね」


そう言って、自嘲気味に笑った。


「でもナツもあそこが好きみたいだし、ナツとあの場所を守るのが今の俺があの会社を続けてる理由かな……。まあ、人も全然来ないから、コンビニでバイトしてるんだけどね」

「そうだったんですね……」


駅にたどり着く。


「それじゃあ、明日また来てください。どうやるか調べて精一杯お仕事させていただきますので」

「わかりました。お願いします」


そこに断るという選択肢はなかった。

さっきの話を聞いて、依頼せざるを得ない気持ちになったかもしれないというのもあると思うが、私はお願いしようと思う。


「では、また」


そして、古市さんは来た道を引き返して行った。

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